2月26日:おとぎ話を紡ぐ日
### 2月26日:おとぎ話を紡ぐ日
「よーし、みんな集まれー!」
レオンの元気な声がリビングに響き渡った。
「何よ、そんなに騒いで」
フィオナが魔法書を手に、ソファに腰掛けながら呆れた声を出す。
「今日は『おとぎ話を紡ぐ日』なんだぞ! みんなで昔話を語る日なんだって!」
レオンは胸を張りながら力説する。
「へぇ、そんな日があったのね」
ルミナが微笑みながらキッチンから顔を出す。「確かに、昔からの物語を語り継ぐのは大事なことね」
「だったら、誰かおもしろい話をして!」
クリスがぴょんぴょん跳ねながら、目を輝かせる。
「じゃあ……今日は特別に、お父さんの“冒険譚”でも聞かせてやろうか?」
アストルが工房からひょこっと顔を出し、いたずらっぽく笑った。
「え、ほんと!? お父さんの冒険話って、わくわくする。」
フィオナが興味津々で顔を上げる。
「ふっふっふ、では――むかしむかし、あるところに、とても腕の立つ冒険者がおった。その名も――」
「お父さんでしょ?」
レオンが即ツッコミを入れる。
「ちょっと、最後まで聞け!」
アストルは咳払いをし、再び話し始めた。
「その冒険者は、ある日『おとぎの森』に迷い込んだのだ。そこには、普通の森とは違い、語られることで形を変える不思議な魔法がかかっていた」
「え? 話すことで森が変わるの?」
フィオナが眉をひそめる。
「そうさ。例えば、“この森には巨大なドラゴンがいる”と言えば――」
「うわあ! ドラゴン!」
クリスが嬉しそうに叫ぶ。
「――本当にドラゴンが現れるって仕組みだったのさ」
「ええ!? それ、めっちゃ危なくない!?」
レオンが驚きながら飛び上がる。
「まあ、確かにな。だから森の中では、嘘でも本当でも、話すことに気をつけなきゃならないんだ」
「じゃあ、お父さんはどうやって切り抜けたの?」
フィオナが身を乗り出す。
「それがな――」
アストルが話を続けようとした瞬間、突然部屋の中に“ボワンッ”と白い煙が立ち込めた。
「ええっ!? なにこれ!?」
「ちょっと! 誰か魔法使った!?」
ルミナが慌てて辺りを見回す。
すると、煙の中からぼんやりと大きな影が浮かび上がる。
「……こ、これって……ドラゴン!?」
レオンが指をさしながら叫んだ。
「ちょっと待って! お父さんの話が現実になってない!?」
フィオナが慌てて魔法杖を構える。
「いや、違う……クリス、また『幻影魔法』で遊んだな?」
アストルが冷静にクリスを見つめる。
「えへへ……だって、面白そうだったんだもん!」
クリスはぺろっと舌を出しながら、申し訳なさそうに笑う。
「まったく、話すだけで現れるなんて、本当に『おとぎの森』みたいじゃない!」
ルミナが苦笑しながら、回復魔法で煙を晴らす。
「でも、いいじゃん! お話に出てきたことを、こうやって再現できるのって楽しいよ!」
レオンはワクワクしながら幻影のドラゴンを見上げる。
「まあね。でも次からは、事前に言ってくれないと、心臓に悪いわよ!」
フィオナがため息をつく。
「でも、これって結構いいかもな。お話を語りながら、それを魔法で再現するっていう新しい遊びになりそうじゃないか?」
アストルが腕を組みながら、にやりと笑う。
「“おとぎ話の魔法劇”みたいな感じ?」
ルミナが目を輝かせる。
「いいね、それ! 次はもっと派手なお話を作って、みんなで演じようよ!」
レオンが張り切る。
「じゃあ次は、お姫様が活躍する話がいい!」
クリスがぴょんぴょん飛び跳ねる。
「うーん、それならお姫様がドラゴンを炎魔法で倒す物語がいいわね」
フィオナが得意げに腕を組む。
「お姫様は剣を使うべきだろ!」
レオンが反論する。
「お前たち、もうすでに“語られることで形を変える森”に飲み込まれてるぞ……」
アストルが苦笑いしながら、子どもたちの喧嘩を見守る。
「まあ、楽しい日になったわね」
ルミナがほっと息をつきながら、微笑む。
その時、スノーがひょいっと飛んできて、一言つぶやく。
「おとぎ話、いい……でも、お前たちの毎日が、一番おとぎ話みたいダ。」




