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2月23日:霊峰への崇敬を捧げる日

「みんな、今日は“霊峰への崇敬を捧げる日”よ!」

朝食の席でルミナが元気よく宣言する。


「へぇ、また特別な日なの?」

レオンがパンをかじりながら首をかしげる。


「今日は霊峰に祈りを捧げて、自然の力に感謝する日なのよ。お父さん、冒険者時代には霊峰に登ったことがあったんでしょ?」

フィオナが興味津々にアストルを見やる。


「まあな。若いころは、あの山の神殿で一晩過ごしたこともあるぞ。夜になると霊峰が淡い光を放って、なんとも神秘的だったなぁ……」

アストルはコーヒーをすすりながら、どこか懐かしげに語る。


「うわー、かっこいい! おれも登りたい!」

レオンが目を輝かせる。


「いやいや、霊峰は簡単には登れないぞ。突然吹き荒れる魔風や、道を迷わせる霊霧があるからな」

アストルが苦笑いすると、クリスがきょとんとした顔で尋ねた。


「れいきり?」


「そう、霊霧はね……そこを通る人の心を試すように、幻影を見せるんだ。気を抜くと、帰ってこられなくなるんだぞ」

アストルが冗談めかして言うと、レオンとフィオナが少し背筋を伸ばした。


「うう……ちょっと怖いかも」

レオンがつぶやくと、スノーが肩に飛び乗り、クチバシを鳴らした。


「霊峰、登らない。ボク、面倒くさい。」


「スノーは登らなくてもいいわよ。今日は山の方を向いて、家でお祈りをするだけだから」

ルミナが笑いながらフォローする。


「でもせっかくだし、ちょっとした霊峰の儀式を再現してみない? うちの裏庭なら、安全にできると思うの」

フィオナが提案すると、アストルはニヤリと笑った。


「よし、それならオレの工房に『霊峰の祭壇』のミニチュアがあったはずだ。あれを使えば、もっと雰囲気が出るぞ」


裏庭に設置されたアストルの「霊峰の祭壇」。

白い石で組まれた小さな祭壇の中央には、青白く光る魔石がはめ込まれている。


「わぁ、綺麗! 本物みたいね!」

ルミナが感嘆の声を上げる。


「この魔石は“霊光の石”って言って、霊峰の力を模倣するためのものなんだ。まあ、多少は霊峰の霧みたいな現象も起こるかもしれないが……」

アストルが説明を終えると、フィオナがワクワクしながら呪文を唱えた。


「霊なる峰よ、その神秘を示し給え!」


すると、魔石がふわりと輝き、白い霧がふわっと広がった。


「わぁ……これが霊霧?」

クリスが手を伸ばしてみると、霧の中に小さな蝶のような光が舞っている。


「ふむ、なかなかいい雰囲気だな……ん?」

アストルが霧を見つめると、中に何か影が浮かび上がってきた。


「ちょ、ちょっと待って! なんか変なのが出てきた!」

レオンが叫ぶと、霧の中から巨大な影が浮かび上がった。


「うおぉ!? で、でかい!!」

レオンが腰を抜かしそうになる。


「はははっ、これが霊峰の試練か? 面白いじゃないか!」

フィオナが杖を構えようとするが、アストルが手を振って止める。


「落ち着け。これはただの“霊峰幻影魔法”だ。恐れる必要はない」


よく見ると、影の正体は霧の中に映し出された巨大な“スノー”の姿だった。


「……ボク?」

スノーが目を丸くすると、クリスがくすくす笑った。


「スノー、霊峰の神様になっちゃった!」


「ふん……ちょっとかっこいい……けど、バカバカしい。」

スノーはそっぽを向いたが、しっかり祭壇の上にとまっていた。


「ふふ、今日はいい日になったわね」

ルミナが笑うと、アストルもうなずく。


「たまにはこうして、自然に感謝するのも悪くないな」


最後にスノーが、祭壇の上でクチバシを整えながらぽつりとつぶやく。


「……ボク、霊峰の神様なら、静かに過ごしたい……でも、この家じゃ無理だな。」

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