2月22日:闇に紛れる術を探究する日
「忍びの道とは、影となり、風のように消えることだ……!」
リビングで、レオンが目を輝かせながら、黒い布を頭からすっぽりかぶっている。
「何それ? 新しい遊び?」
フィオナが呆れた顔で聞くと、レオンは得意げに胸を張る。
「今日は『闇に紛れる術を探究する日』だからな! オレ、究極の忍びになるんだ!」
「はいはい。どうせまた、お母さんの回復魔法の世話になるんだから、ほどほどにしておきなさいよ」
フィオナはため息をついて椅子に座る。
「そんなことないって! ちゃんと忍びの技を研究してるんだから!」
レオンはキッチンへ走り、こそこそと物陰に隠れる。
「……ちょっと待って、まさかまた妙な魔法を試そうとしてるんじゃないでしょうね?」
ルミナが鋭い目を向ける。
「ふっふっふ、これが最新の秘技――『漆黒のベール(ダーク・カモフラージュ)』!」
レオンが手のひらを広げると、もやもやとした黒い霧が立ち上がり、彼の姿が少しずつ消えていく。
「わわっ、本当に消えた!?」
フィオナが驚きの声を上げた。
「ふははは! これがオレの新技だ!」
レオンの声だけが響くが、どこにいるのか全くわからない。
「すごいじゃない、レオン!」
クリスがぱちぱちと手を叩く。
「でも、完全に消えたわけじゃないみたいね……」
フィオナがキッチンの床をじっと見つめる。
「え?」
次の瞬間――
「うわっ!?」
レオンの足がキッチンの椅子にぶつかり、大きな音を立てて転んだ。
「……忍び失格ね」
フィオナが冷たい目で見下ろす。
「ち、ちがう! ちょっと慣れてないだけ!」
レオンは慌てて立ち上がるが、その瞬間、もやもやとした霧が薄れ、彼の姿が元に戻ってしまう。
「ははは! 影に紛れるどころか、ただのドジじゃない!」
ルミナが大笑いする。
「いや、今のは不慮の事故だ! もっかい試すから!」
レオンは気を取り直して再び呪文を唱えようとする。
「ダーク・カモフ――」
「やめなさい!」
ルミナが素早く回復魔法をかけ、レオンの魔力を中和する。
「うわっ、お母さんずるい!」
レオンが抗議するが、ルミナは涼しい顔で微笑む。
「ずるくないわよ。これ以上、家の中で姿を消す遊びをされたら、今度は食器棚が犠牲になるわ」
「むぅ……」
レオンは口をとがらせる。
「それに、影に紛れる技なら、おじいちゃんに聞いたほうがいいんじゃない?」
フィオナがふと地下室を指差す。
「おお、じいちゃんの秘密研究室なら、何かすごい技があるかも!」
レオンは目を輝かせて地下室に駆けていく。
「ふむ……影に紛れる術か。よし、これを試してみるかのう」
グレゴールは古い巻物を取り出し、渦巻く闇の魔力を放つ。
「おお、すげえ!」
レオンが興奮する。
「だが、これはな……発動すると、一時的に影と一体化するが、解除の方法を間違えるとしばらく姿が戻らんのじゃ」
グレゴールがニヤリと笑う。
「え、まさか――」
「まぁ、試してみればわかるじゃろ。ほれ、影よ、形を消せ!」
グレゴールが呪文を唱えると、レオンの姿がスッと消えた。
「おお、本当に消えた! すごいすごい!」
レオンの声だけが響く。
「で、解除はどうするんだ?」
レオンが尋ねる。
「ふむ……さっきの巻物、どこにしまったかのう?」
グレゴールがゆっくりと机を漁る。
「ええええ!? 早く探してよ、じいちゃん!!」
「……で、結局どうやって戻ったの?」
フィオナがリビングで尋ねる。
「じいちゃんがくしゃみしたら、なぜか元に戻った」
レオンがため息混じりに答える。
「……本当に忍びの道を極められるのかしらね」
ルミナが苦笑する。
「まあまあ、今日はいい経験になったわ」
フィオナが肩をすくめる。
すると、スノーがゆっくりと飛んできて、レオンの肩にとまる。
「影に…消えた…? どこでも目立つ…」




