2月18日:魔力充填器研究の日
「お父さん、これ、壊れてるよね?」
フィオナがアストルの工房のテーブルに、丸っこい金属製の筒を置いた。
「魔力充填器の試作品だって言ってたけど、全然動かないよ」
アストルはコーヒー片手に目をこすりながら、それを手に取る。
「うーん……いや、壊れてはいない。ちょっと、調整が甘いだけ……のはず」
「またそれ?」
フィオナが呆れた声を出した。
「パパ、前も同じこと言ってたけど、結局最後は爆発したじゃない?」
「いやいや、あれは……たまたま、な?」
アストルは苦笑しながら、充填器の側面をコンコンと叩く。
「じゃあ、試しに動かしてみよう!」
レオンが目を輝かせながら手を伸ばす。
「待ってレオン! パパの実験道具に手を出すとロクなことが……」
フィオナが制止する間もなく、レオンはスイッチを押した。
次の瞬間――
「ブォォォン!!」
魔力充填器が青白い光を放ち、ガタガタと震え始めた。
「ちょっと! 絶対これ危ないやつでしょ!」
フィオナが後ずさる。
「お父さん、どうにかして!」
ルミナが工房のドアから顔を出し、慌てて声をかける。
「だ、大丈夫! 多分、大丈夫……かも!」
アストルは慌ててスパナを掴み、充填器のフタをこじ開けようとする。
しかし、
「パパ、光が強くなってるよ!」
クリスが不安そうにスノーを抱きしめながら叫ぶ。
「このままだと……」
「爆発するぞおおお!!」
家族全員がパニックに陥る中、グレゴールがひょっこり現れた。
「おやおや、またドタバタしてるのかね」
「じいちゃん! 助けて!」
グレゴールは充填器をじっと見つめ、のんびりと頷いた。
「うむ、これは“エネルギー過充填”の状態だな。簡単に言うと、魔力を詰め込みすぎたのじゃ」
「じゃ、じゃあ、どうすれば!?」
グレゴールはフッと笑い、「ちょっと待っておれ」と懐から小さな魔法陣の描かれた紙を取り出した。
「これは“魔力分散の札”じゃ。こいつをぺたりと貼れば――」
ペタッ。
充填器がピタリと静まり、光がすっと消えた。
「おぉ……止まった!」
レオンが感動したように充填器を覗き込む。
「ふう、なんとかなったわね……」
ルミナが胸を撫で下ろした。
「だから、あれほど“急にスイッチを入れるな”って言ったのに!」
フィオナがレオンをジト目で睨む。
「えへへ……ごめん。でも、これでちゃんと動くようになったんだよな?」
アストルが充填器を持ち上げ、スイッチを軽く押す。
「お、今度は……ちゃんと動いてる!」
充填器の側面にある小さなゲージが、ゆっくりと魔力を蓄え始めた。
「おお、やったじゃない!」
「いやぁ……これが完成すれば、魔法がない時でもエネルギーを蓄えておけるわけだし、大発明だな!」
「でも、お父さん。今のままじゃ“過充填”しやすいんじゃない?」
「まぁ、そこはこれから調整だな……」
フィオナがため息をつきながら頷く。
「また爆発しないように、ちゃんと設計見直してね?」
「はは……もちろん!」
家族がホッとした表情を浮かべる中、スノーがバサバサと羽を広げて、アストルの肩にとまった。
「……もう少し慎重に……」




