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2月16日:不機嫌な巨人を笑顔にする日

「お父さん、どうしたの? 工房のドアがきしんでるよ」

フィオナが工房を覗くと、アストルが床にべったり座りこんでいた。隣には、巨大な斧を抱えた大柄な男――近所の巨人、ガルカスがむすっとした顔で立っている。


「実はな、ガルカスさんの魔力灯が壊れちゃってな。修理を頼まれたんだけど、どうやら機嫌が悪くて……」

アストルは困ったように小声でつぶやく。


「今日は『不機嫌な巨人を笑顔にする日』なんだから、何かジョークを使って場を和ませなきゃ!」

フィオナは腕まくりをして意気込んだ。


すると、奥からルミナが顔を出す。

「ジョークといえば私の出番! ちょっとした回復魔法に笑わせ魔法を混ぜた『ニヤリ回復(ヒーリング・スマイル)』ってのをやってみない?」


ガルカスが低い声でうなる。

「オレは笑う気分じゃないぞ。早く修理してくれたらそれでいい」


「とはいえ、ただ修理しても不機嫌は直らないわよね」

ルミナは小さくウィンクして、両手をかざした。

「回復と同時にくすぐったくなる魔法……『ニヤニヤソフトヒール』!」


「うおっ、な、なんだ!?」

ガルカスは突然こみあげるくすぐったさに、口元が引きつりはじめる。


「やった! あと一押しだ!」

フィオナも笑顔になって魔法の触媒を取り出す。

「炎魔法を応用した『パチパチびっくり花火(スパーク・ハッピー)』! これで派手に笑顔を引き出すわ!」


ドンドンッと小さな花火が上がり、色とりどりの炎が工房を彩る。ガルカスは最初こわばった表情だったが、口元の引きつりがいつのまにか笑みに変わっていた。


「ふっ……面白い魔法使いだな、お前たち」

ガルカスはぐいっと斧を肩に担ぎなおして、アストルの前にどんと魔力灯を置く。

「修理は頼む。ついでに……また今度、笑い話を聞かせてくれ」


アストルが魔力灯を引き寄せる。

「任せといてくれ! こいつはすぐ直すから、また元気な笑顔を見せてくれよ」


そこへレオンとクリスが飛び込んでくる。

「おれたちも『にやにやゴム風船』っていうおもしろ魔法の試作品を用意したんだ! ほら膨らませて――」

バンッ! 大きな音とともに風船が弾け、全員が思わず目を丸くする。


「わはは! いいぞ! もっとやってみせろ!」

ガルカスは豪快に笑い、まわりもつられて大笑いになった。


そんな様子を、工房の棚から見ていた白い鷹のスノーが、ふいっとそっぽを向きながら一言。

「フン……みんなドタバタして。ま、悪くない景色だけどね」

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