2月14日:恋愛魔術が花開く日
「お父さん、今日って“恋愛魔術が花開く日”なんでしょ?なんか特別なことあるの?」
フィオナが工房の奥で作業をしているアストルに声をかける。
「そうだなあ。昔は冒険仲間がこぞって甘い魔法チョコを作ってたな。失敗すると甘いどころか苦~い呪文を浴びせられたりして、大騒ぎだったよ」
アストルは懐かしそうに思い出を語る。
「へえ、そんなに危険なチョコになるの?」
レオンが目を輝かせる。
「やってみたい!『恋愛奮起』魔法をかけてすっごく燃えるようなやつ作りたい!」
「燃えるのはやめてね、家が焦げるから」
ルミナが苦笑いしながら止めに入る。
「わたし、こないだ調合した甘々ポーションがあるの。あれと組み合わせたらどうかな?」
フィオナが怪しげな小瓶を取り出し、煌めくピンク色の液体を振ってみせる。
「なんかキラキラして怖いんだが…ま、面白そうだな」
夕方、台所に集まったフレイメル家。フィオナが秘蔵のポーションを湯煎で溶かし、レオンが掛け声に合わせて魔法を唱える。
「恋する気持ちを、もっともっと熱く!『恋愛奮起』、発動!」
しかし、ポーションが突然泡立ち、チョコレートが踊り出す。
「わあっ、き、急に動き出したぞ!」
レオンが慌ててフライパンを押さえる。フィオナは「あれ?こんな呪文だったかな?」と首をかしげる。
するとチョコが次々に飛び跳ね、壁や天井にペタペタくっつき始める。まるで部屋中がハートだらけの模様に覆われていく。
「こ、これは『逆撫で恋情』っていう魔法が混ざってるわね。ポーションの材料にあった妖精の粉が原因かも…」
ルミナがチョコでハートだらけになったキッチンを見渡しながら、顔を引きつらせる。
「ちょっと待て、今直す!」
アストルが自作の魔具「恋路整頓の杖」を取り出し、軽く振る。すると壁や天井に張り付いたチョコがスルスルと集まり、小さなハート型のチョコレートにまとまっていく。
「おお…さすが!」
フィオナとレオンは拍手喝采。
「これで一応は片付いたわね。ありがとう、アストル」
ルミナが笑顔で感謝する。
「お互いさ。今日は俺たち、改めて想いを伝え合う日なんだからな」
アストルが微笑み、さりげなくルミナに手渡したのは、小さなハート型のチョコ。そこには「いつもありがとう」の文字が彫られていた。
「わあ、素敵!」
フィオナとレオンが同時に声を上げる。その横でクリスが楽しそうにチョコをぱくりと口にし、満面の笑みで「うふふ、おいしー!」と喜んでいる。
すると背後から羽ばたきの音。白い鷹のスノーが台所の棚の上にとまり、片言でポツリとつぶやく。
「…みんな、なかよし。こっちが恥ずかしい…」




