2月13日:家名創設の記念日
「おはよう、みんな。今日は特別な日だぞ」
アストルがいつもより早起きして、リビングのテーブルに家族を呼び寄せる。
「わあ、朝から珍しいね、父さんが集合かけるなんて」
フィオナが笑いながら椅子に座る。
「ふふ、今日は家名創設の記念日だものね。久しぶりにその儀式を思い出そうかと思って」
ルミナが微笑んで、少し誇らしげに続ける。
「へえ、そんな日があったんだ。オレ、すっかり忘れてた!」
レオンがテーブルに身を乗り出して興味津々。
「昔ね、フレイメルという名に誓って、みんなで決意を新たにしたのよ。実際の儀式は祖父様が主導したんだけど」
ルミナはグレゴールをちらりと見る。
「そうそう、わしが王国の魔術研究員だったころ、家を守る結界魔法をこしらえたのじゃ。」
グレゴールは椅子にもたれかかりながら、鼻歌まじりに言う。
すると、フィオナが目をきらきらさせて口を挟む。
「ねえ、ちょっと面白そうな魔法を見つけたんだけど、『家紋浮かび上がり魔法』ってやつ、試してみない?」
「待て待て、フィオナが『面白そう』って言い出すと、だいたいロクなことが――」
アストルが慌てて制止しようとした瞬間、フィオナはもう魔法詠唱を始めていた。
「大丈夫だってば。こんな面白そうな呪文、試さないわけにはいかないでしょ!」
ゴォッと赤い火花が散ったかと思うと、天井に大きな紋章が浮かび上がる……はずが、なぜか子どもサイズの古代兵士の幻影がずらりとリビングに出現。しかも隊列を組んで行進しだした。
「ひゃあ! なんだこれ! すごい数だな!」
レオンが唖然としたまま後ずさる。
「わ、私、家紋を出すつもりだったのに。なんでこんなのが…?」
フィオナも額に汗を浮かべて混乱する。
「これは『幻影大行進魔法』とでもいうべきか…? どうやら詠唱の一部を間違えたようじゃな」
グレゴールが苦笑いしながら杖を振る。すると、次々に兵士の幻影が消えていく。
「ふう、騒がしい兵士さんたちだったわね。でも、なんだか見ていて笑っちゃった」
ルミナがホッと息をつく。
「まったくもう、フィオナの実験好きには困ったもんだ。でも、まあこういうトラブルも、家名創設の記念日らしくていいのかもしれないな」
アストルが苦笑しながら、子どもたちの頭をぽんぽん撫でる。
「何はともあれ、こうしてみんな元気に集まってるのを見ると、フレイメル家の絆を再確認できるよね」
ルミナは家族を見渡して、にこりと笑う。
「ごめんね、ちょっと騒がしくしちゃった。でも、こうやって笑って過ごすのがフレイメル家らしい気がするんだ」
フィオナも照れたように肩をすくめる。
「おれ、いつか世界を股にかける冒険者になったときも、『フレイメル』の名を背負うんだよな。なんか、かっこいい!」
レオンは目を輝かせて拳を握りしめる。
その時、白い鷹のスノーがひらりとアストルの肩にとまった。
「…家名創設…立派。けど、いつもドタバタ…」




