2月11日:建国魔術の偉業を称える日
「ねえ、今日は建国魔術の偉業を称える日でしょう? いつもより盛大にお祝いしない?」
朝食のテーブルで、ルミナが楽しそうに言い出す。
「そうだなあ、昔はこの日になると、街中で再現儀式の見世物があったんだよ」
アストルが懐かしそうにうなずく。
「建国魔術って、どうやったのかな。国全体をバリアみたいに覆ったとか、空に巨大な魔法陣を描いたとか……気になる!」
フィオナは目を輝かせる。炎魔法が得意な彼女にとって、壮大な儀式はロマンそのものだ。
「お、おれもいつか世界を股にかける冒険者になって、その巨大儀式を超えるような魔法を見つけてみせるんだ!」
レオンが声を上げると、テーブルにあったコップが揺れる勢い。
「いいわねえ、じゃあ今日は家族でちょっとした『お祝い術式』でも試してみる?」
ルミナが楽しげに提案する。
「お祝い術式ね……よし、こんなこともあろうかと引っ張り出してきたぞ」
アストルが宝物庫から怪しげな巻物を取り出す。それには「ミニチュア再現魔法:グランド・リトル・セレモニー」と書いてある。
「うわ、父さん、それ大丈夫? 昔の封印札じゃないの?」
フィオナが警戒気味に立ち上がる。
「いやいや、大丈夫だ。もともとこれは小規模な式典を華やかに見せるための儀式らしいんだ」
アストルは得意げだが、すでに危うい空気が漂いはじめている。
「じゃあ、いくわよ! 私がエネルギーを補助するね。『炎の触媒』!」
フィオナが両手をかざすと、巻物から魔法陣が浮き上がる。
「なにやらワクワクしてきたなあ」
レオンは腰に手を当てて見守る。
すると、魔法陣が光を増して、家の中に突然ミニチュアの王城や兵士がぞろぞろと出現。小さいながらも本物さながらに動き回り、まるで歴史絵巻を見ているようだ。
「すごい! めちゃくちゃリアルだね!」
ルミナが拍手をしようとしたその瞬間、兵士の一団がフィオナの炎魔法を浴びて暴走し始める。
「や、やばい! フィオナ、出力が強すぎたんじゃない?」
アストルが慌てて巻物をつかむが、兵士たちはさらに大きくなり、王城が天井まで伸び上がっていく。
「ええっ、これって建国の再現というより侵略に近いような……! お父さん、どう止めればいいの?」
フィオナが焦った声を上げる。
「その巻物、解除呪文が書いてあるはずだ! 早く探してくれ!」
アストルも巻物を必死でめくる。
「お母さん、こいつら足元に火をつけたら動き止まる?」
レオンが妙な提案をするが、ルミナは苦笑いしながら首を振る。
「そういう無茶はダメ! 私が癒やしの魔力で巻物を落ち着かせるわ。『やすらぎの泉』!」
ルミナが小声で詠唱を始めると、淡い水色の光が部屋を満たし、膨れ上がっていた兵士の姿はスーッと消えていった。
「はぁ、なんとか元に戻った……」
アストルが大きく息をつく。
「やれやれ、建国魔術は偉大だったけど、うちはもっと安全な祝福の方法を考えようよ」
フィオナが肩を落とすと、スノーが風を巻き起こしながら肩に舞い降りる。
「フッ……もう少し静かにしてほしい……ボクは眠いんだよ」




