表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/69

2月10日:布団の結界に包まれる日

「お父さん、朝だよ! 起きてー!」

フィオナの声が響く。いつもはのんびり屋のアストルだが、今朝はさらに布団に深く潜り込んでいる。


「おかしいわね……」

ルミナが不思議そうに布団を軽く引っ張る。すると布団がピクリとも動かない。まるで強力な結界に包まれているかのようだ。


「あらら、これは“ふとんバリア魔法”だね」

グレゴールが目を細める。アストルが昔の冒険時代に手に入れた珍しい巻物の魔力が眠っていたらしい。寝る前に何気なく枕元に置いたせいで、安眠結界が発動してしまったようだ。


「起きる気がないってことはないよね? そんなに疲れてる?」

フィオナが布団の上からぽんぽん叩く。中から聞こえるのは「もごもご……もうちょっと……」という、半分寝ぼけた声。


「もう、困るわね。回復術でどうにかなるかしら?」

ルミナが布団の端にそっと手をかざし、薄く光を放つ。だが結界は緩まない。どうやら“ふとんバリア魔法”は魔力を吸収してさらに強化される仕組みらしい。


「よーし、ここは私にまかせて!」

フィオナが力強く魔法の杖を構える。

「決戦呪文! ファイア・フラッフィ」

—布団を温めるだけで燃やさない安全な炎魔法—

が、ふわっと布団が赤く光っても、アストルはますます心地よさそうに丸まるだけ。


「まいったわね」

ルミナは苦笑い。リビングではレオンとクリスがわいわい騒いでいる。


「ねえ、クリスが“幻影魔法”でモフモフの羊をいっぱい呼び出したの。もう部屋じゅう羊だらけだよ!」

レオンが笑い転げながら報告。廊下には白いモコモコの幻影羊が列をなしている。


「まったく、なんでこんな日に限って大騒ぎになるんだ」

グレゴールは鼻を鳴らしつつも、どこか楽しそう。


そのとき、ぴゅんと飛来したのはスノー。いつも偉そうな口調の白い鷹だ。


「アストル、甘えてる……布団離れられない……」

スノーが片言で茶化すと、布団の中からアストルの声がくぐもって聞こえる。

「ちょっと、スノーまで冷やかさないで……」


「仕方ないわね。スノー、あなたの風魔法で布団をめくってくれない?」

ルミナが頼むと、スノーは短く「仕方ない」と呟いてから、かぎ爪から風を巻き起こした。


バサッ!

布団が一瞬でめくれ、アストルはようやく結界から解放された。


「あー、もう。何だか夢見心地で気持ちよかったんだけどな」

アストルが名残惜しそうに大きく伸びをする。すると、幻影羊の群れが“めぇ〜”と鳴きながら部屋を横切っていく。


「ふふっ、やっと起きられたのね。あんまり疲れを溜めないでね」

ルミナが優しく微笑むと、アストルは苦笑いしつつ頭をかいた。


「それにしても朝から賑やかな一日になっちゃった」

フィオナは笑いながら杖をしまい、幻影羊を消そうとするクリスを手伝いにいく。


「あー、今日はもう寝落ち厳禁だよ、お父さん!」

レオンがちゃかすと、みんなで思わず大笑い。


そんな中、スノーはアストルの肩にとまって一言。


「ほんとに……世話のやける家族だな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ