1月23日:123の呪式開始の日
「さーて、今日は“123の呪式”の日よ!」朝からルミナの陽気な声が家中に響いた。フィオナが机にかじりついている傍らで、クリスがスノーに小声で何か囁いている。レオンはというと、朝食のパンをくわえたまま、「おれも呪式に参加していい?」と目を輝かせている。
「参加って…お前、123の呪式がどんなものか知ってるのか?」アストルがコーヒーを片手に微笑む。
「うーん、なんか、呪文を唱えて『どっかーん!』ってなるやつだろ?」とレオン。
「違うわよ!」フィオナが苦笑いしながら言った。「123の呪式は、簡単な呪文をリズムに合わせて唱えて魔法を発動させる練習よ。まあ、子どもでも楽しめるお祭りみたいなものね。」
「わーい! クリスもやりたい!」クリスが手を挙げて飛び跳ねる。そんな彼女を横目に、スノーが肩をすくめた。
「おい、面倒ごとはやめてくれ。平和が一番だ。」スノーの片言。
お昼になると、家族は裏庭に集まった。ルミナが用意した魔法の小道具やアストルが手作りした「呪式ステージ」が並ぶ。カラフルな魔法陣が描かれた布の上で、フィオナが指導役を買って出た。
「いい? 魔法のリズムを刻むことが大事なの。まずは簡単なリズムを試してみましょう!」フィオナが手本を見せる。「いっちにっさん♪」と声を出しながら、杖を振る。杖からふわっと金色の光が溢れ出し、小さな蝶々のような幻影が飛び出した。
「わぁー、綺麗!」クリスが拍手する。
レオンがそれを真似しようとするが、リズムを間違えて杖をぶん回す。「いっ…にっ…ドカーン!」次の瞬間、杖の先から泡が噴き出して、彼の顔を覆った。
「お、おい! 何だこれ!」慌てるレオンに、家族は爆笑。
「それは“ミスリズム・バブル魔法”よ。呪文を間違えると泡が出る仕組みなの。」フィオナが説明するが、笑いが止まらない。
その後も何度か練習を重ね、ついに呪式の本番が始まった。クリスが意気揚々と呪文を唱える。「いっちにっさん♪ いっちにっさん♪」杖から虹色の光が舞い上がり、空中に大きな花火のような魔法陣が広がった。
「すごいじゃないか、クリス!」アストルが感心する。
「次はおれだ!」とレオンが意気込んで再挑戦。しかしまたしてもリズムを外し、今度は周囲が泡だらけになった。スノーが羽をパタパタさせながら飛び上がる。
「やめてくれ! 羽が濡れるじゃないか!」その怒った声に、また家族が笑い転げる。
夕方、呪式が無事に終わった後、家族全員がリビングでくつろいでいた。ルミナがホットココアを配りながら言う。
「今日はいい日だったわね。でもレオン、もう少しリズム感を磨かないと。」
「おれだって練習してるんだ! 次こそ成功してみせる!」とレオン。
スノーが棚の上から冷ややかに一言。「まあ、次の泡祭りを楽しみにしておくか。」