1月22日:魔導書の落書き禁止強化の日
「おい、レオン!その魔導書に何してるの!」フィオナが鋭い声で叫ぶ。
「えっ、別に何もしてないよ!ただのイタズラ魔法だってば!」レオンは焦った表情を浮かべつつ、手元の魔導書を後ろに隠す。
フィオナが怪訝そうに眉をひそめた。「ちょっと見せなさいよ!」
「やだ!これはオレの秘密の研究だもん!」
「秘密の研究って……あんた、さっき『うまく飛ぶ呪文』を探してるって言ってたじゃない!」
ルミナが笑いをこらえながら二人のやり取りを見守る。「まぁまぁ、フィオナ。魔導書にちょっと書き込みするくらい、大したことじゃないでしょ?」
「大したことあるわよ、母さん!」フィオナはため息をつきながら呟く。「この魔導書、貸出用なのよ?学校の図書室から借りたやつ!」
ルミナの顔が一瞬固まり、「……そ、それはまずいわね」と冷や汗を流した。
「ほら、これ、なんかちょっとだけ楽しくなる魔法を書き込んだんだ。」レオンが渋々魔導書を差し出した。
フィオナがパラパラとめくると、そこには「笑い文字魔法」と書かれたページが追加されていた。ページ全体が奇妙な落書き風の記号で埋め尽くされている。
「……ねぇ、これ何?」フィオナが冷たい目を向ける。
「えっと、読んだ人が楽しくなる魔法!ほら、ちょっとでもつまんない授業の時に使えたらいいでしょ?」
「そんなの先生にバレたら怒られるに決まってるじゃない!」
「いや、ちゃんと試したんだよ!成功するって確信してるんだから!」
その瞬間、魔導書の文字が突然光り始めた。
「うわっ、なにこれ!?勝手に反応した!」フィオナが慌てて本を放り投げると、部屋の中に突如として小さな笑い声の幻影が現れ始めた。
「うふふ!あはは!えーっと、これは何て言うのかな……『落書き防衛モード』発動ってこと?」レオンが驚きながらつぶやく。
「ちょっと!これ、どうやって止めるのよ!?」フィオナはパニック気味に叫ぶ。
アストルが工房から顔を出した。「何の騒ぎだ?新しい魔法の実験か?」
「違うわよ!この馬鹿レオンが魔導書に変な落書きしたの!」
「おお、それは……賑やかだな!」アストルはなぜか笑い声の幻影を楽しんでいる。
「ちょっと、父さんまでのんきに見てないで、どうにかして!」フィオナが本気で頭を抱えた。
その時、クリスがひょっこり現れた。「うふふ、面白い音!スノー、これ見てごらん!」
スノーが肩から飛び立ち、笑い声の幻影を睨む。「ウルサイ。バカ魔法、直せ。」
結局、グレゴールが地下室からのそのそと出てきて解決に乗り出すことに。「まぁまぁ、落書きは創造性の一つだが、貸出用の本ではまずいね。」
「そういう話じゃないわ、じいちゃん!」フィオナがツッコミを入れる。
「さて、この場合、魔法の中和法則『笑い止め術』を使うのが一番簡単だろう。準備に少々時間がかかるが……」
グレゴールが呪文を唱えると、笑い声の幻影は次第に静かになり、部屋の中はようやく平穏を取り戻した。
「ほら、レオン、反省してこの魔導書をきちんと元に戻しなさい。」フィオナが釘を刺す。
「わ、わかったよ……次はちゃんと自分のノートでやるってば。」
スノーが一言。「バカに魔導書、貸すべからず。」