プロローグ:こんなプロローグはまだ普通だ
ここは、不思議な力が日常に溶け込む世界――その名は「アース」。
地球とよく似た姿を持ちながら、魔法や魔族、ドラゴン、妖精などが当たり前に存在する、ちょっとだけ“違う”ルールで動く世界です。
ふと空を見上げると、雲から降ってくるのは雨だけではありません。
“マグナ”と呼ばれる、乳白色に淡く光る蛍のような粒子が、風に乗って大気へと循環し続けているのです。
川に落ちたマグナは、小さな魚たちのエサになり、
大地に降り注いだマグナは、草木や花々を色鮮やかに育みます。
人々はこのマグナを利用して、料理の火や洗濯の水、食料を保存するための氷など、身近な生活を豊かにしています。
一見すると、自然の風景は“地球”を思わせますが、大きなキノコが群生していたり、山より高い巨木がそびえていたり、メルヘンのように愛らしい花々が咲き誇っていたり……。
この世界“アース”は、そんな風に不思議と現実が融合した独特の文明を築き、人々の営みを育んできました。
幾度も隆盛と衰退を繰り返し、今では二つの大国が存在感を放つ時代となっています。
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【二大勢力】
王国:王都アルトリア
華やかな都が中心で、人々は華麗な文化と豊かな暮らしを送っているようです。
しかし郊外の田舎町ラットでは、ゆるやかな時間が流れつつ、最近“魔人ドドーメン”の噂が絶えず、少しだけ不安が広がりはじめています。
魔界:魔王都デスト
魔族や魔物が暮らす都市。空にはどこか不穏な雲がかかり、巨大な城が街を見下ろしています。
物騒なイメージがあるものの、住民は案外ふつうに生活しているらしく、ダークなお土産がちょっと人気らしい…という話も。
王都アルトリアとの交流も、わずかながら存在するようです。
こうした広い世界の片隅で、一人の“バカ”が転生しました。
その名は――大場カイト。
彼は自分がどこにいるかもわからないまま「ここ、西荻窪駅…だったっけ?」とつぶやき、記憶のあいまいさを気にする様子もありません。
異世界に来たというのに驚かないなんて……普通なら大騒ぎしそうなものですが、それもそのはず――彼はとびきりの“大バカ”なのです。
世が世なら周りを困惑させるだけの男ですが、なぜか憎まれない不思議なムードを纏っていて、トコトコ歩いていく先は田舎町ラットの宿屋。
どうやら、“自分のアパートへ帰る”くらいの気持ちらしく、まるで状況を理解できていません。
一方、田舎町ラットには奇妙な噂も。
例えば――ウサギのTシャツを愛する筋肉の塊がいるとか。
身長3メートル、体重208kg、魔人ドドーメンをも上回る怪力とも言われ、かわいいキャラクター“ディッフィーちゃん”を命がけで推しているらしいのです。
さらに王都アルトリアでは騎士団長が何やら大会を企画し、港町には怪しいおばあさんが民衆を賑わす商売を始めているとの噂。
そんなとき、夜な夜なツッコミの練習をする人々もいるのだとか……。
「バカとバカは引き寄せられる」
誰も知らないうちに、歴史を塗り替えるほどの“事件”が起きつつあります。
――そう、バカが7人集まれば、下手をすれば革命くらい起こせるのかもしれません。
大場カイト自身も、そんな大それた展開になるなんて想像しちゃいないでしょう。
何せ本人は「バカ」ですからね。
それでも、このアースに吹く面白い風が、王国と魔界とを巻き込んでいく気配だけは、少しずつ濃厚になっています。
常識を超えた“バカ”たちが、いったいこの世界をどう変えていくのか――。
これはそんな“バカ”たちの始まりの物語。
「計画的な行動・緻密な改善こそ未来を作る」――そんな通説をぶっ壊すような希望(?)にあふれたストーリー。
さあ、大場カイトはいま何をしているのか?
彼の突拍子もない行動は、誰と出会い、何を巻き起こすのか?
――想像を絶する“バカ”の物語を、どうか存分にご堪能ください。
第一話へ続く
【煽り】
「プロローグはまだおとなしめ! 第一話からが本番(バカ全開)です!」