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グレーゾーン

月一で放映されるコント番組を見ていたら丸メガネを掛けたしがないサラリーマンに扮した芸人さんが田舎の駅の休憩室で『悪の軍団の長』に遭遇するという場面になった。全身黒づくめで頭には二本の角を生やした長が部下と通話しているらしく、


「ほんと長期出張って疲れるよなぁ」


と愚痴っている姿を呆然と見つめていたサラリーマンの心の声がよくある手法で表現される。



<『コスプレ』姿で電車に乗ろうとするのは『強者』だなぁ>



<一体なんの出張だったんだろう?>



素朴に感じてしまう内容ではあるものの、うっすらと撮影されたスタジオの内の笑い声も響くお馴染みの展開。


「とはいえ順調に『支配』が進んでるからな、ここは攻めの姿勢が大事だよな」



突如として『支配』という困惑させられる単語が長の口から飛び出し、往年の『コント』らしくそこでサラリーマンの思考は次第に妄想気味になってゆく。



<え?いまあの人『支配』って言わなかった!?>


よくよく観察するとコスプレだと思っていた長の角が妙に実物感のある素材で出来ているということにサラリーマンは気付く。必死に首を振りながら、



<いやでも、企業買収とかでも『支配』ってあるから!>


と自分に言い聞かせる。だがそこでまた不穏なワードが飛び出す。



「この間『怪人』を○○県に送ったところだから。一ヶ月もあれば『殲滅』できるだろう」



<え?え?ちょっと待って、あの人「殲滅」って言ったよね!?『怪人』ってまさか!?>



その辺りでもう冷静ではいられないサラリーマン。驚きでずれ落ちたメガネを必死に直しながら、とりあえず場を立ち去ろうと席を立つ。


「あ、お兄さん?」


なんとしたことか長に呼び止められてしまった。恐る恐る振り返ると、


「椅子にハンカチ落ちてるよ。お兄さんのでしょ?」


と親切にも教えてくれた事で<あれ?いい人なのかも…>と思い直したのも束の間、再び電話を再開した長は最後にこう告げる。


「うん。近くに仲間になってくれそうな人もいるようだから、とりあえず『改造』しとくか」


不敵に笑う長はどこからどう見ても『悪役』そのもの。恐怖でハンカチも取らずに「助けてぇ!!」と逃げ出してしまったサラリーマン。呆気に取られながらもハンカチと一緒に落ちていたサラリーマンの名刺を見て長はひとこと。


「あの人もうちの系列の会社の人だったのか」


最後まで『グレーゾーン』の設定で終わったコントを存分に楽しんだ夜に見た夢は鳥の頭をした怪人に身体を『改造』されるおかしな展開だったが、翌朝何故か身体が妙に軽かった。

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