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de anima~死人倣いの異世界奇譚~  作者: 各務クギヒト
一章 ウルフェムラ編 後編
59/60

終幕 そして、旅立ち

 キズナたちが試練から帰って三日、帝国軍との戦闘における戦没者の国葬は、速やかに執り行われた。

 キズナがこちらの世界に来てから三ヶ月余り、季節は夏のピークに入っていたが、雨が降りしきる天気で、濡れた衣服が体温を奪うのを彼は感じていた。

 戦没者の数は百五十二名、リィナの手腕によって被害が少ないと言えど、千人単位で争う戦が起きたのだ、決して軽んじていい数の死者ではない。

 秘水の洞窟内で命を落とした候補生たちも、彼らと一緒に共同墓地へと埋葬されることとなった。

 試練に参加した勇者候補生、四十名のうち、生き残ったのは十六名。

 最深部にいなかった五名に関しても、運悪くダンジョン内部に侵入していた魔術師たちと遭遇していたらしく、命を落としている。

 キズナたち候補生も喪服を与えられ参列し、一人ひとり、棺に納められ土をかけられる様を彼も眺めていた。

 慰霊碑として立てられた分厚い木の板に、こちらの世界の言葉によって書かれた名前が連なっている。

 彼はその中の、ある名前の部分をそっと指でなぞり、瞑目して祈りを捧げていた。

「キズナ、あの子の埋葬も始まる」

「……ああ、今行く」

 リィナに呼ばれ、彼は慰霊碑から離れる。

 彼女についていくと、そこには何故か、ユウカたちに加えてゲオルクの姿も見かける。

 召喚直後の一連の出来事以降はあまり接点がなかった老人が何故ここにいるのか、彼は怪訝な顔をする。

「……おお、お主か。久方ぶりじゃの、その後どうじゃ」

「いや、まあお陰さまで生き長らえてるけど……じいさん、何でいるんだあんた」

 キズナの疑問には、彼の隣にいたリィナが代わりに返答をする。

「先生は遺体に保護の魔術を施しに来たの。この子は生前、最後に願阿魔法(メモリアファクト)を発現していたから、研究素体として利用するためよ」

「んな、マジで言ってんのか……? そういや前にそんな話を聞いたような気がするが……」

「試練の前に契約も交わしていた筈よ、あなたきちんと読んでなかったのね」

 痛いところを突かれたキズナは喉を詰まらせるが、しかしやはりこの奇人に大事な友人を好き勝手にされるのは気が進まなかった。

「……じいさん、こいつを雑に扱ったら今度こそ全力でぶん殴るからな」

「ふん、安心せい、わしは死者を軽んずことはせんよ」

「生者は軽んじますけどね」

「……仕方ないじゃろー、六百年も生きてりゃのお、生きてる知人より死んだ友人の方が余程多いからのお」

 リィナの諫言にも言い訳がましいゲオルクに、キズナはげんなりする思いでため息をつく。

「ともかく、絶対に丁重に扱えよ。なんかあったら許さないからな」

「繰り返すが、安心せいという。お主なんぞへの義理からではなく、この者の死に対してこそ、わしは誠実であろう」

「……ならいい、あんたの場合そっちの方が余程信頼できる」

 キズナがゲオルクを睨み付けていると、不意に彼の隣に巨大な影が立ち上がっていた。

「こ、国王さまだ……」

 ユウカたちが驚きのあまり思わず硬直しているが、キズナはその人物を、不躾にも横目に見上げる。

 彼の隣に立つガンズは、ゆっくりと跪き、マナカの亡骸に献花を添えた。

 キズナはそれを見て、今度こそユウカたちと同様驚きに硬直してしまう。

 ガンズは厳かに立ち上がると、胸に手を当てて祈りを捧げ、キズナへと静かに語りかけた。

「此度の試練、こちらに手落ちがあった事を詫びよう。落とさずともよい命を数多く失ってしまった」

 キズナは、その言葉を黙って聞いている。

「ダフの愚かものは地下深くの牢獄へと幽閉している、スラッシュに関しても守護者からの降格と、当面の謹慎を言い渡した。我とフィリップの不在に、リィナ一人に負担を負わせたアクセルに関しても処分を言い渡している。なんの詫びにもならんとは思うが、気休め程度に思ってほしい」

「そうか……そりゃあなんとも、痛み入るよ」

 キズナのそれは一国の主に対して見せる態度では到底ないが、ガンズは以前とは違い、その表情に不快を示さず、緩やかに笑う。

 その様がどことなく、自分のよく知る彼女に似ていて、キズナは不思議な感覚に陥る。

「貴様とこの娘が功労者だと聞いている。泥の王(グーラ・レクス)は我が国の戦士たちでも、単独で倒せるのは守護者たちと、数人の戦士長のみであろう」

 不意に、ガンズの手のひらがキズナの頭に乗せられる。

「よくやってのけた、貴様を我が国の勇者として認めよう」

「……だったら、子供扱いみたいなのはやめて欲しいんだけどな、もうそんな年じゃねえよ」

「ふ、すまないな。数百年も生きていれば貴様程度の年頃だと、どうにもまだまだ幼く見えてしまう。それに、我が国の一員と認めたのだ、最早我が子も同然であろう」

 年長者からこうした扱いを受けることなど、キズナの人生ではほとんど記憶にない事である。

 彼は動揺しながらも、不思議と嫌な気分にはならなかった、さりとて恥ずかしい心持ちではいたが。

「だが貴様も、そしてリィナも、既に戦士として扱うべき人間だとも理解しているとも。だからこれは……少しばかりのわがままと思ってくれていい」

「そうかい、なら好きにしてくれ」

 キズナのぶっきらぼうな言い種に、ガンズは余った右手を使って、その顔を抑えていた。

「改めて、すまない……子供が命を落とすのは、何度見ても慣れるものではないのだ」

 キズナは自分のことを子供だとは全く思ってなどいなかったが、それを口に出すつもりは起きない。

 大きすぎる手のひらが自分を雨粒から守るのを、少しの間受け入れていた。

 その後ガンズは他の候補生たちのもとへ行き、ゲオルクも魔術の施工が済みその場をあとにする。

 ようやく場が落ち着いたのを見計らい、キズナは片手に持っていた献花を、マナカの亡骸に捧げる。

 棺の中の彼女の表情はまるで眠っているかのようで、今にでも、以前のように穏やかに笑いかけてくれるのではないかと錯覚する。

 だが、彼女の魂は既に肉体を離れ、自らの裡に同化していることを彼は認識しているのだ。

 それは彼女が再び動き出すことはない事実を、誰よりもキズナに強く思い知らせていた。

 キズナは彼女の顔を無言で目に焼き付け、そして祈るように瞑目する。

 ユウカたちは、思い思いに彼女に最後の言葉を語りかけていた。

 雨粒ですら紛れることはなく、彼女たちの目尻は涙で赤く腫れ上がっているのが分かる。

 リィナも静かに献花を済ませ、二人はその場をあとにする。

 後ろ髪を引かれるのを、振り払うように。


            ◇


「お前のじいさん、思ってたより優しいんだな」

「あら、今さらそれを言う? 初めて会ったときだって貴方、無礼打ちされてもおかしくなかったのを許されてるのに」

「いや……あの時は普通に殺されかけた気がするんだが……」

「何言ってるのよ、お祖父様が本気で殺すつもりだった筈がないでしょう」

 キズナとリィナは、一通りの葬儀を終えて帰路に着いていた。

 雨は既に上がっており、夕暮れ時の黄昏が彼らの影を伸ばしている。

「それじゃ、私はまだ諸々仕事があるから。一人になったからって泣くんじゃないわよ」

「お前な……祖父と孫で揃って子供扱いすんなよ。俺はもう十九だぞ……?」

「何言ってんのよ、泣き虫キズナが」

 子供のような捨て台詞を吐いて、リィナはひらひらと手を振り去っていく。

 キズナは小さくため息をつき、一人の帰り道を歩いていった。

 すると、少し先の用水路の土手に、見慣れた影を見つける。

 その影は、傍らに杖を転がして、どこをともなく遠くを見つめ茫然としていた。

 しかし、キズナがやってくるのに気がついたのか、杖を頼りに片足で立ち上がる。

「やあ、キズナ。葬儀は無事に済んだかい?」

「……済んだかいって、お前はなんで来なかったんだよ、ラク」

「僕は……だって、参列する資格なんてないから」

 らしくもない言い回しに、キズナはまるで鏡でも見ているような感覚になってしまう。

 あのラクが、そんな風に自分を卑下するなんて。

「お前だって、あの戦いでは功労者の一人だろ」

「そんなことないさ、僕はなにも出来なかった」

 ラクがふと自分の足元に目をやる、その一瞬、彼がその顔をしかめたのをキズナは見てしまった。

「お前は、お前だって……一生懸命────」

「────僕は、元の世界に帰るよ、キズナ」

 ラクの言葉に、キズナは愕然とする。

 だってそれは、元の世界の彼の身体は、そう思うと「何故」という言葉しか脳内には浮かばれなかった。

「いや、急に何を言い出して」

「急じゃないさ、この三日考え続けたんだ。僕は、元の世界に戻るよ、だってさ」

 彼はそう言うと、杖でバランスを取りながら、無くなった方の足をぶらぶらと揺らして見せた。

「こんなになっちゃったんだもん。もう、この世界にいる意味がない」

 キズナは、不意にまるで、金づちで頭を打たれたかのような気分になる。

 あのラクが、コウダイたちにあれほど痛め付けられても笑い飛ばしてしまうほどの彼が、何故そんな風に、自分を嘲笑うかのような顔をするのか。

「前に話したでしょ? 人より動ける身体を手にしたから、人を助けていくんだなんて。まったく、思い上がりもいいところだった。僕はあの場で、ほとんど大した役には立ってない……本当に強くなったのも、君を救ったのも、僕じゃなく彼女だった」

 ラクの言うところの彼女というのが誰を指しているのか、それは考えるまでもない。

 それが、キズナの頭をもう一度後ろから殴り付ける。

「この世界で生きていく理由だった、自分で歩ける足だって、この通りさ……なら、元の安全な世界に戻ったって変わらないだろう、ここにはいるだけ、惨めになってしまう」

 そこまで話して、彼は無言になる。

 地面を、あるいはそこに、ある筈だった何かを見つめて、俯いたまま動かず、何も言わない。

 キズナは、不意に頭に血が上る感覚に駆られる。

「お前……ふざけんなよ」

 キズナは、彼は急にずんずんとラクに近づくと、その身体を突き飛ばす。

 ラクは突き飛ばされよろめきながらも、杖で器用にバランスを取って倒れないよう踏みとどまる。

「なんだ、その言い種は。なんだ、その表情は。馬鹿にしてんのか、てめえ」

「な、なにを……キズナ────」

「────馬鹿にしてんのかって、そう聞いてんだよ!!」

 ラクは、まるで信じられないかのような表情で、瞠目してキズナを見つめ返す。

 だが、キズナはそれを、まるで友人に向けるとは思えないような表情で、息を切らして睨み返した。

「何も出来なかっただ? 惨めになるだ? そんなんでお前がここでやってきた事が、全部無意味だって思うのか!? 何のためにあいつは犠牲になったんだよ、なんで生き残ったお前が不貞腐れてんだよ! 俺は……俺はお前があの時かばわなけりゃ、生きてここにはいねえってのに!!」

「そ、そんなのは……君の方こそ、君がいなけりゃあの場の全員が」

「だったら尚更だろうが! その俺を助けたお前が何もしてないなんて、他の誰が言っても俺が認めねえよ!!」

 怒髪天をついたキズナに、ラクは思わず狼狽する。

 彼が、自責の念以外で感情を爆発させるところを、ラクは初めて目にしたからだ。

「今だってそうだ、ここに来たばかりのお前だったら、俺にこんな風に突き飛ばされりゃ、両足があったって簡単に転がって倒れただろうが。俺やダインを付き合わせて散々訓練したのが、まるで無駄だったって言いたいのか……!?」

「そ、そんな風には誰も────」

「お前は前にこうも言ってたよな、自分は生きるために何もかも諦めなきゃで、俺の事は生きるために何もかも模索しなきゃいけなかったって……お前は今、考えうる限りの可能性を全部考えたのかよ!?」

 キズナの言葉が芯を捉え、ラクは言葉を詰まらせる。

 だが、そんなことは顧みもせず、キズナは溢れ出てくる言葉を止められない。

「こんな世界だぞ、魔法も科学もなんでもありのこんな世界だ、片足がなくなったくらいでなんだ、そんなんで全部終わりになってたまるか、いくらだって、手段なんていくらだって……!!」

 片足がなくなったくらい、なんて言葉は、失くした本人以外が、簡単に口にしていいものではない、キズナはそれを分かっていた、分かった上で、止められなかった。

 彼は、大きく呼吸をして、一番の大きな声で、泣き叫ぶように叫ぶ。

「諦めんなよ────お前はまだ、こっからだろうが!!」

 夕焼けの赤が、彼の顔を染め上げる。

 眩しいくらいに差す夕日すら、彼の真っ直ぐな目を綴じることはなかった。

「……なんで、キズナが泣いてんだよ」

 ラクの言葉通り、キズナの目には涙が浮かんでいる。

 彼はラクに言われて、初めてそれを自覚して、隠すように腕で拭う。

 ラクはそんな彼の様子を見て、不意に吹き出して笑ってしまった。

「ふ、くく……そうだね、そうかもしれない」

「おま、笑うな!! ボケが!!」

 キズナのそんな返答に、ラクは今度こそ堰を切って大笑いしてしまう。

「なんだよ……笑うなよお」

「いや、ごめん……ごめんよキズナ」

 一通り笑い終わって、ラクはまるで、憑き物の落ちたかのような顔で、穏やかに笑ってキズナに向き直る。

「……君の言う通りだ。僕はまだ、試せる可能性を何も試していなかった。この世界に来て得られたあらゆる可能性を……君と出会ったような、奇跡だってあるかもしれないのに」

「うっせえ、バカが」

 吐き捨てるように言うキズナの言葉に、ラクはやはり笑いを溢してしまう。

 キズナの方もようやく落ち着いたのか、呼吸を整えて今一度涙を拭い、ラクに拳を突き出す。

「先に行って、待ってる。さっさと追い付いてこい、バカやろう」

「ああ、待っててくれ……すぐに追い付くとも、バカやろうめ」

 二人は拳を合わせて、誓いを立てた。

 いつか共に、旅を行く約束を。


            ◇


「これって、触っても平気なのか? ダインのやつは天罰みたいなのを食らったって」

「あの馬鹿は攻撃しようとしたんでしょ、この儀式はあくまで、世界樹に認められるための対話なのよ。起きうるのは神託を授かるか、或いは何も起きないかのどちらかよ」

 キズナはリィナと共に、自分がこの世界で目を覚ました場所、世界樹の分かれ木のある教会へとやってきていた。

 御神体として祀られている巨大な樹木を前に、彼は首の痛める思いでそれを見上げている。

「なんつーか、なんだ、こんなので勇者として認められるんなら、試練とか必要なかったんじゃね?」

「勇者として神託を授かるかどうかと、戦えるかどうかにはあまり関係がないの。だから、試練によって戦力としても、資質としても相応しいかを先んじて測る必要がある。勇者は分かれ木のひとつに対して一人、つまりは、一国につき一人までだから、戦えない者を勇者にするわけにはいかない」

「つまり……お前やあの王様に認められようが、この大木に認められなきゃ勇者にはなれないってことなのか……?」

「ええ、そうなるわね。勇者は世界を周って世界樹から力を受けとり、魔王と戦うものの事を指すから……不安?」

 挑発的に笑うリィナに、キズナは「ふん」と鼻を鳴らして世界樹の前に歩み出る。

「触るだけでいいのか、なんかこう、呪文みたいなのとか」

 リィナは無言で首をやって返答する、ごちゃごちゃ言わずにやれ、とでも言わんばかりだ。

 キズナは苦い顔を返しつつ、しかし、世界樹に向き直り瞑目して、意識を集中する。

 魔力と言うものを明確に理解した今なら分かる、この大木に、一体どれほどの膨大な魔力が秘められているのかを。

 キズナが、世界樹に触れる。

 すると突然、まるで巨大な鐘がクラッパーを打つかのような、荘厳な音が響き渡った。

 鐘の音は国中に響かせられる、涼しく穏やかな午後に、この国にいるものすべてがその音を聞いた。

 誰もが手を止め、その音に聞き入る。

 戦いの傷も未だ癒えぬ彼らに、まるで鎮魂の願いを捧げんがごとく。

『────って』

 キズナは、不意に誰かの声を聞いた。

 弱々しくも優しい、女性の声だ。

 聞いたこともない声だが、その声は不思議と脳内に浸透する。

『────を、──って』

「……なに?」

『────あの人を、救って』

「……ズナ、キズナ!」

 唐突に彼は意識を引き戻され、隣を見ると、リィナが自分の肩を揺さぶっているのが見えた。

「どうしたの、ぼうっとして、急に動かなくなるから何かと思ったわよ」

「え……いや、何か声がして……あれが神託ってやつか?」

「声……? 神託とは今の鐘の音のことよ、声がするなんて話は聞いたことがない」

 キズナはその言葉にどう返答するべきか迷った、しかし、今の声が悪意を持ったものだとも思えず、ひとまずは飲み込んでおくことに決める。

「……ともあれ、これであなたは勇者として認められた。我が国の、ウルフェムラの勇者として、あなたは旅立つこととなる」

「……そうか、まあ、今後ともよろしく」

「はぁ……覇気のない返事ね、まあ、貴方らしいけど」

 がっかりしたような調子でため息をつかれ、キズナは苦笑してしまう。

 リィナも仕方なげに笑い、二人はその場をあとにした。


            ◇


「荷物、全部持った? 忘れ物がないかちゃんと確認しなさいよ、ハンカチ、水筒、剣と槍もね」

「お母さんかって言おうとしたら最後が物騒だな、忘れてないから安心しろ」

 試練から十日、二人は今日旅立ちの日を迎える。

 ウルフェムラの国の西側には、岸壁に挟まれた小さな街道があり、二人はまずそこから、隣国の領土である、ブランの町へと向かうこととなっている。

 おそらく今頃、そこには二人を見送るために皆が集まっている筈だ、キズナにとってはそのような見送りはこそばゆいばかりだったが、勇者なんてものになるならそれも仕方がない。

 キズナは、最後にこの数ヵ月を過ごした家を振り返る。

 彼はこれまで住み処を点々とすることが多かったものの、安心して夜を眠ることなど無縁の人生を送ってきた彼にとって、この家は特別だった。

 万感の思いでもって、その扉を閉める。

「何やってるの、置いていくわよ」

「はいはい、今行くよ」

 かくして彼らは、長い旅路へと出立する。

 世界を救うなんて、大それたことは実感などなく、ただ、誰かに報いるために、それだけのために旅立つのだ。

 今は笑って、旅立つのだ。

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