カリキュラムのご紹介
僕が契約書にサインをすると
白衣だった男は契約書にもあった名前を
教えてくれた。
「田中太郎さん改めて青井春人です
よろしくお願いします」
いつの間にか脇に置いてあった白衣に袖を通した青井
状況によってコスチュームを切り替えるのか?
なんて疑問に思っていると
「では次回のミーティングを決めたいのですが
ご都合はいかがでしょうか」
パラパラとスケジュール表をめくる青井
「来週のこの時間この場所はどうですか?」
僕が聞くと青井はちょうどいいですと
頷きスケジュール表にメモをした。
「では全体的な流れを説明して今日は終わりにしようか」
僕が頷くと紙を出しすらすらと
青井は論理恋愛の流れを書き始めた。
1.内面改善
2.外見改善
3.SNS攻略
4.電話攻略
5.デート攻略
「なぜこの順番なのかも説明しておく」
僕が頷くのを確認して青井は説明を続けた。
「まずは内面を変えていく。
内面と言うのはこれまでの経験により培われえてきたものだ。
だから簡単に変えることはできない。
早めに意識を改革する必要がある」
「例えば僕の場合何が問題なんですか?」
「具体的には来週話そうと思っているけど
太郎は自分のことを「自分なんて」とか
自分に自信を持っていないよな?」
自分に自信なんてそういえば持ったことはない
持ったことはないというのは言い過ぎだけど
自分ですごいと思っても周囲を見渡すと
すごい人がいて自信を無くしたきた
「はい」
これまで思い返して青井に答えた。
「そうだよな。
さっきも言ったけど女は自分を守ってくれる存在を求めている。
つまり自信がない奴はモテない」
それはそうだけどとうつむいてしまうと
青井は次の説明を始めた。
「つぎに外見だ。
当たり前だけど汚い男はモテない。
内面同様にスキンケアなど一日でどうにかなるものではない」
「でも僕そんなに肌汚くないと思うんだけどな」
厳密にいえば毛穴がないとは言えないけど
ニキビもないしひげは剃っている。
「プリクラがなんであんなに加工するか知っているか?」
そういえば僕から見たらかわいい女の子が
プリクラではよりかわいくなるようになっている
むしろ加工しすぎと感じるくらいだと笑ってしまうこともある
「あれってやりすぎですよね」
「その感覚が女とずれてるんだよな
俺の肌と君の肌くらべてどう感じる?」
意識していなかったが青井の肌はまるで
女の子のように透き通るような質感だった。
「そういえばきれいですね
スキンケアしてるんですか?」
「してる。それだけじゃない。
化粧もしている
だからここまできれいな肌を表現できるんだ」
男も化粧をする時代とは聞いたけど
目の前の男がその化粧をしていたと聞いて
驚いてしまった。
でもイメージしていた化粧とは違って
言われなければ分からないし
言われても正直僕にはよくわからなかった。
「意外と分からないものなんですね」
「分からないくらいにしているんだよ
女もそうだけど厚化粧は評価が分かれるからな」
ナチュラルメイクってやつなのかなと
青井の顔を見つめていると
別に何もないように次の話を始めた。
「そしてSNSだ。
今の時代SNSを活用できるかどうかで大きな差が分かれる。
戦闘力は関係ないなんて話をしたが
SNS力は現代では出会いを作るうえでも
権威性を作る意味でもかなり重要な武器だ」
「インフルエンサーにでもなるんですか?」
「インフルエンサーを偽装する。
詳しくはその時に説明するが
なんか凄そう感を演出する。」
具体的に何をするのかはよく分からなかったが
ひとまず話を最後まで聞いてみることにした。
「出会いができたら電話だ。
女は男に比べて視覚以外の五感が発達している。
だから電話で関係を構築できていれば
デートの時に優位性を作っておける」
「僕顔が見えない相手と話をするのって
なんだか苦手意識があるんですよね」
「だから優位性があるんだ。
他にも男は会って話せばいいなどと言って
電話でのやり取りを嫌う傾向がある」
ほかの男がやらないことをやることで
優位性を作っていくということなのだろうか
「仕上げはデートだ。
ここまでに内面、見た目、権威性、信頼関係を作った。
あとはデートでその女にとって唯一無二の男になれば
理想の女を攻略完了となる」
たしかにこの流れで全部やれば
理想の彼女に惚れてもらうことは
出来るような気がしてきた。
「太郎、
今何か一つ身体にいいと思う活動を決めろ。
普段はやってないことがいい」
青井は急に問題を投げかけてきた。
「そうですね
早寝早起きとかはどうでしょうか?」
「いつもは何時に寝て起きてるんだ?」
「仕事が終わって帰ってきたら割とすぐ寝て
起きるのは8時くらいです」
「眠る時間はコントロールが難しそうだな」
「そうですね仕事の残業次第なので」
「じゃあどうする?」
「起きる時間を7時にするのはどうでしょうか?」
「どうでしょうかじゃなくて
自分でいいと思うことをやると決めろ」
青井はすこしだけきつい口調で決断を求めた。
「7時に起きるようにします」
「じゃあ来週までの課題は毎朝7時に起きる
もちろん二度寝は禁止だ」
「わかりました」
これが論理恋愛になるのかはよく分からなかったが
お金は払ったんだし後には引けない
やってみるしかない。