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流星の天使

作者: 瑞目叶夢

ある忘れられた者たちのアワイという国があります。


今日はその国の流星群の日です。


アワイ国の流星群は人間の国に新しいオモチャや生き物に植物になる旅立ちの日です。


アワイ国でめいっぱい楽しんで愛されることを思い出した。捨てられたオモチャや様々な理由で切り捨てられた植物などが胸いっぱいに希望をもって星になって魂を人間の国に運ぶのです。


そのなんと美しい事か、様々な色の流星が空に流れて旅立って行く様を見るのはこの国の一番の楽しみなのです。




アワイ国には人間の国で住みづらくなった妖怪や迷い込んだ動物などもいます。


アワイ国に迷い込んだ狐のカリンは一番見晴らしのいい丘を登って流星群を見ようと思っていましたが、どうやら先に陣取っているモノが居ます化け狸のゴンイチです。




「おやゴンイチ、君もここで見るのかい?」




声をかけるために近づいてカリンは気が付きます、ゴンイチがながー-----い棒の付いたアミを持っています。




「やぁカリンここが一番いい場所だからね」




そう言ってゴンイチはぽんぽんとアミを叩きます。




「ところでゴンイチ、そのアミは何だい?」




カリンの言葉にゴンイチはごほんと大きな咳を一つして目を泳がせます。




「そんな事よりカリン、もう流星群が始まるぞ、さっさと座った方が良い」




ゴンイチの言葉に空を見ればきらきら光る星の隙間にぽつぽつとカラフルな光が浮き出てきます。




「確かにもう始まろそうだね、ありがとうゴンイチ、遠慮なく座らせてもらうよ」




そう言ってカリンはその場に座り込みました。


ほどなくすると一つの光がゆらゆら揺れてぴゅーんと光の尾を引きながら遠くの方に落ちていきます、一つ落ちればどんどん流れて行く流星群はとても綺麗です。




美しさに感動しているとゴンイチが立ち上がりました。気になって見ていれば、ながー---い棒のアミを空に突き出して少し紫がかった流れ星を捕まえてしまいました!






「ゴンイチ!!何をしてるんだい!」




ゴンイチはカリンの言葉など無視してアミを引き寄せると網の中には天使のような見た目のヌイグルミが居ます。




「まぁゴンイチ何するの!ひどいわ!私はもうすぐかわいい女の子の人形になるはずだったのよ!」




天使のヌイグルミがそう言うとゴンイチは泣きそうな顔で言います。




「いやだよミミ―、僕は君が居ないこの国で一人で生きろと言うのかい?ひどいじゃないか、置いてかないでおくれよ」




その言葉に天使のヌイグルミのミミ―も泣きそうです。




「どうして今更そんな事を言うの?昨日はわかってくれたじゃない!私の夢を応援してくれるんじゃなかったの?」




それにゴンイチはウっと言葉を詰まらせ震えます。




「昨日はよかったんだ、でもやっぱり君が居なくなるのは我慢できなくてこんなことしてしまった。ごめんよ、でも君と離れたくなかったんだ。僕はどうすればよかったんだい?」




ゴンイチの悲痛な言葉にミミ―はしくしく泣きます。




「じゃぁ私はもうずううーと消えるまで可愛い女の子の人形になっちゃダメなの?私はずっと捨てられたヌイグルミのままなの?」




その言葉にゴンイチは焦ります。




「そんな事ない!君には可愛がられる人形になって欲しい!あぁ!ミミ―!僕はなんてことをしてしまったんだろう!君を失う寂しさからとてもひどい事をしてしまった!ごめんよミミ―!」




ゴンイチはミミ―を抱きしめて泣きます、そこにカリンが話しかけます。




「ゴンイチ!反省したなら流星の丘に行こう!あそこからなら今夜中に飛びたてるよ!急ごう!朝になる前に!」




カリンの言葉を聞いてゴンイチは強くうなづきます。




「そうだね、ありがとうカリン、手伝ってくれるかい!」




「当り前だろ!さぁミミ―を連れて流星の丘に行こう!」




そう言って走り出すカリンにゴンイチはミミ―を抱きしめて走ります。


でもカリン達が居た丘から流星の丘まで山を一つ越えなければいけません、


3匹は急いで丘を駆け下り山に入ろうとした時です山の前に大きなクマのヌイグルミが座っていて道が通れません。




「おや、カリンじゃないか、化け狸に・・・おやまぁなんてかわいい天使の人形ちゃん、そんなに急いでどうするの?流星群を見ないのかい?」




カリンは大きな熊のヌイグルミに慌てて言います。




「実はこの天使のヌイグルミさんが間違えてこっちに落ちちゃったんだ、だから朝までに流星の丘に行かなきゃいけないんだ!」




それを聞いてクマのヌイグルミはホホホと笑います。




「それは災難だねぇ、でもいいじゃないか、人間の世界で新しいオモチャになっても結局ボロボロにされて捨てられるだけ、これ幸いとこっちに残ればいいよ、そうだろう?」




クマの言葉にまたゴンイチが泣き出す。




「ミミ―がボロボロにされるなんて僕は耐えられないよ、ミミ―やっぱり残ろうよ」




その言葉にミミ―が困ります。




「ゴンイチの気持ちは嬉しいんだけど、やっぱり私はこの姿のままは嫌なの、可愛い女の子の人形になって大事にされるのが夢なの、きっと大切にしてくれる女の子のところに行けるわ、私を信じてゴンイチ」




そう言ってミミ―はうるうると泣くゴンイチの頭をなでる。




そこにクマのヌイグルミが不服そうに笑う




「夢の通り行くといいけどね、私は忠告したよ、行きたいなら勝手におし」




そう言ってクマのヌイグルミは道を開けてくれました。




「クマさんありがとう」




カリン達はクマにお礼を言って道を通りますカリンはチラッとクマの背中を見れば雑に縫われた大きな縫い目からチラチラとワタが見えます、無理矢理ワタを抜かれて詰めなおしたらいらないからと捨てられたのだとクマは言っていた。




クマが人間の国に夢を見る日は来るのだろうかと思いながらカリンは走るのだった。


ぐんぐん走って行けば山の上でブリキの人形とロボットに出会います。




「あれ?ミミ―、君は流星になったんじゃなかったのかい?どうしてここに?」




そのブリキの人形は見事な赤い服の体と肌色が綺麗にピカピカと輝いて見えるほど立派な人形だ




「あぁレイン、それが流れるのに失敗してしまって急いで流れなおそうと流星の丘に走っているのよ」




ミミ―がそう言うとレインとロボットはびっくりします。




「それは大変だ!君の夢の人形になれなくなっちゃうじゃないか!」




そこでミミ―がレインに聞きます。




「レイン?あなたはとても大事にされたのよね」




レインはそう言われて胸を張ります。




「あぁそうさ!おじいさんは小さなころは僕で遊んでくれて、大人になっても磨いたり飾ったり生涯大切にしてくれたよ!おじいさんが亡くなった時に押入れの奥にしまわれたけど、僕もおじいさんほど大切な人に出会える気がしないからこの国に残っているけど君はきっと次の世界では大事にされて愛されるはずさ!だから急いで丘を目指すんだよ!」




レインにそう言われ、カリン達はまたお礼を言って走って行きますレインから離れたところでミミ―がゴンイチに言います。




「ね?素敵な人もいるのよゴンイチ」




「そうだね、君を愛して大事に使ってくれる人も居るんだね、君が愛されるなら喜んで送り出すよ」






そう言いながらカリン達は走って山を下り、丘の前に来た時だ、知らない人が立って居る、その人は妖怪の様ではなく、まるで魔女のような人が道の真ん中に立って居る。




「すみません!そこを通らせてください!」




カリンがそう言うと魔女のような人はにっこりと笑います。




「やっと来たね、ミミ―」




ミミ―はその人を見て頭を下げました。




「この国を作ったお母様じゃないですか!私を待っていてくれたのですか?」




ミミ―の言葉を聞いて2人も頭を下げます。そんなカリン達にお母様はにっこりと笑ってゴンイチに言います。




「ゴンイチや、人間の世界は酷い人も居る」




「はい」




お母様はゴンイチに語り掛けます。




「でも、一生涯、それどころか何代にもわたってミミ―のような人形を大事にする人も居る」




「はいお母様」




「でも年がたてばすたれボロボロになることもあるだろうけど愛してくれる子も居よう、でもすぐに飽きて捨てる人も居よう、どんな一生を送るかなんてわからないそれでも見送れるかい?」




カリンはお母様は何が言いたいのだろうと思った。ミミ―の夢は応援したいけど、その先のわからない夢を応援しようか迷っているゴンイチにそんなこと言うなんて酷いじゃないかと思った。




ゴンイチは目を泳がせ下唇を噛んで必死に悩んでいる、必死に考えて顔色をころころ変えながら汗を流し出した。夜はその間にも朝に向かって時間を進める。




「ゴンイチ?」




ミミ―の声にゴンイチがミミ―を見る、ミミ―は願うような顔でゴンイチを見る。




その顔を見てゴンイチはふぅと息を吐いてお母様を見た。




「彼女の夢を応援すると決めました。一度裏切ったのに2度も裏切りたくありません、彼女が愛され大事にされた後でこっちに戻って来てくれるって信じていつまでも待つと決めました。だから見送れます」




それを聞いてミミ―は目をうるませて喜び、お母様は微笑ましそうに見ている、カリンはゴンイチの決意に誇らしい思いです、なんて立派な決意をしたのでしょう、これからもゴンイチの友人で居ようと強く思いました。




「では行こうか」




お母様に言われてカリン達は丘を登って行きました。


まだまだ星は輝いていますが山の向こうが少し明るさを見せています。




「さぁ今度は人の国に落ちるんだよ」




そう言ってお母様が杖を振るとミミ―はふわふわと浮かんでいきます。






「ありがとうゴンイチ、私いっぱい愛されてくるから待っててね、変わった姿でも帰ってきても見つけてね、大好きよゴンイチ」




そう言ってミミ―はどんどん空に昇りますのでゴンイチも大きな声で言いました。




「必ず待っているよ僕も長生きして君が帰ってくるまで何年も何十年も何百年も待つから!」




その声が聞こえたかはわかりません、白っぽい淡い紫の光になり、ミミ―は光の尾を引きながら空を流れて行くのでした。




そしてゴンイチは約束通り何年も持ちました。カリンがおじいさんになるころもゴンイチは待ち続けました。カリンがお化けになっても、化け狸の妖怪の命は長いのか何年も何十年も待っていたある日、ゴンイチの家に金髪のそれはそれは美しい可愛らしく、たくさん愛されたであろう人形が訪れたのでした。




おしまい

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