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帝国英雄戦記  作者: 神無月レイ
第一章 誕生編・学園編
8/25

第八話 パートナー

5月4日

 ステラは男子寮から外に出て空を見上げだ。

(5月か…… 早いな〜)

 ステラは走りだした。

 入学から一ヶ月が過ぎ、少しずつ今の暮らしに慣れたステラ。

 毎日5時半に起き、ランニングや筋トレを1時間ぐらいした後、自室のシャワー室でシャワーを浴び、学園に行く準備をして、7時に寮を出る。普通で平和な生活を送っていた。



第一教室棟 4組の教室


「おはよう、ステラ!」


 アメリアは大きく手を振って挨拶した。

(最近、雰囲気変わったな…… 特に今日は……)

 ステラは迷わずアメリアの方に向かって歩く。


「おはよう。今日はいつも以上に元気だな」

「そんなことはないと思うけど。ただ、挨拶を変えてみただけよ」

「そうか……」


 ステラは疑問に思いながら席に着く。


「ステラ、おはようございます」

「おはよう、クロウ」


 ステラの後ろに座っていたのはクロウだった。

 ステラとクロウは放課後の出来事以来、とても仲の良い親友になっていた。


「クロウ…… 最近のアメリア、なんか変じゃないか」

「そうでしょうか? いつもと同じだと思いますが……」

「でも……」


 ステラは椅子にもたれ、クロウと話す。


「いつもと同じか…… ん?」


 一瞬、視線を感じたステラは辺りを見渡す。

(気のせいか……)

 周りを見渡したが、特に変わらないクラスの風景だった。


「そういえば……」


 辺りを見渡しているステラの横から、クロウが思いついた顔で話しかける。


「どうしたんだ?」

「ステラは最近アメリアとよくお話ししているようですが、実際はどんな関係なんですか?」


(???)

 まず初めに、ステラの頭は疑問でいっぱいになる。どうしてそんなことを聞くのかと……

 目を輝かせるクロウを見て、ステラは答えに困ってしまう。

 とりあえず、ステラは思いついたことを言ってみる。


「友達関係だ」


 するとクロウは暗い顔をして「本当にそうなんでしょうか……」と、呟き始めた。


「はぁ〜 特別な感情とかはないよ」

「そうでしょうか……」


 クロウはより一層暗い顔をして、ステラを睨みつけた。

(クロウは一体どんな思い込みをしてるんだ?)

 ステラは頭を抱えた。


「コホン…… 冗談はここまでにして……」

「冗談だったのか」


 クロウは暗い顔から真剣な顔に切り替わる。


「ステラに伝えてないといけないことがあります」

「なんだ?」


 周りのざわつきを一瞬で消すかのように、ステラとクロウの雰囲気は変わる。


「実はこの学園に、第三王女殿下が入学してきたらしいですよ」

「第三王女殿下が? あの、神聖王国最高ランクの聖剣使いがこの学園に……」


 ステラとクロウが言葉にする〝第三王女殿下〟とは、ネフェリル神聖王国の聖剣使いであり、最強の称号を持つ存在なのだ。


「そうみたいですよ。目撃した生徒によりますと、王族の証《帝王の小紋章》を持つ生徒が、魔法測定を受けていたと証言しています」

「……」

「また、第三王女殿下によく似た生徒が旧図書室に入っていくのを見たと、証言していました」


 クロウの情報収集力は、ステラの思う何十倍も凄かった。

(どこで手に入れたんだ、その情報……)

 不思議に思うステラは、なぜ第三王女殿下がこの学園に入学してきたのかについて考える。


「ステラ、どうかしましたか?」

「その話が本当なら、第三王女殿下が入学してきた理由は、僕の紋章について探るためだと思う」

「なるほど。ステラの紋章について探るためなら、第三王女殿下が入学してきたのも話がつきます」


 今言った通り、王国政府はステラの持つ〈古の紋章〉を無視するはずがない。

 だが、エレファン侯爵家はステラを()()わけがない。

 結果何もできない王国政府は、ステラが入学する時を狙い、ステラと同じ歳ぐらいの第三王女を入学させ、《古の紋章》について探ろうとしていた。

(理由が分かった以上、そうはさせないが……)

 では、なぜそんなめんどくさいことをするのか、ステラは全く理解できなかった。

(普通に会えばいいのに……)

 深くため息をした。


「何か手を打たないと……」

「だったら一度、第三王女殿下と話がしたい。クロウ、頼めるか?」

「大丈夫ですか?」

「あぁ……」

「分かりました。やってみましょう」

「ありがとう」


 ステラは体を前に向け、窓の方に目を向けた。

(直接本人に聞いてみないとな)

 


 時は少し経って、ホームルームのチャイムが鳴り響く。


「お前ら、席につけ! 朝のホームルームを始まるぞ」


 いつものように、メリシア先生は手を叩いて生徒を座らせた。

 

「今日の連絡は、来月から始まる学年対抗剣舞試合についてだ」


 学年対抗剣舞試合は毎年6月に開催される大会で、2対2のペア戦が競技としておこなわれる。

 

「この大会は、パートナーが必要になっていく。一人で戦うのもいいが…… 死ぬぞ」


 普通はそうだと思う。だが、この学園には一人で戦い準優勝まで上り詰めた生徒がいたらしい。

(名前は確か……)

 ステラは思い出そうとしたが、名前がなかなか出てこなかった。

 

「ともかく、その話はおいといて……」


 メリシア先生は〈ペア契約書〉と、記載されたプリントを配った。


「今からパートナーを決めてもらう。制限時間は放課後までだ。決め方は自由だが、制限時間までに決められなかったら、こちら側で決める。また、他のクラスのパートナー契約は禁止だ」


 メリシア先生は、その他の注意事項が書かれたプリントを貼る。そして……


「解散」


 まだ授業中だが、メリシア先生は職員室へ戻っていった。

(先生…… 自由な人だな〜)

 ステラは気持ちを切り替え、誰をパートナーにするかクロウに相談した。


「そうですね…… 彼女と組んでみたらどうでしょうか?」

「誰だ?」


 ステラはクロウに言われて後ろを向いた。向いた方の先にいたのはアメリアだった。

 

「アメリアと……」

「はい。ステラと相性がいいと思ったので」


 ステラとアメリアは魔法の相性がいいため、すぐにでも〈パートナー契約書〉に書いてほしいところだが、アメリアと組たがっているクラスメイトが数多いるため、ステラはなかなか声がかけられないのである。


「まぁ…… 勇気を振り絞って言ってみてはどうでしょうか?」

「そうだな…… 言ってみるよ」

「頑張ってください!!」


 その後、クロウは用事があると言って教室を出ていった。

(一体、何の用事だ?)

 ステラは疑問に思ったが、これ以上の詮索はクロウに失礼だと思い……


「アメリア!」


 ステラはアメリアに、パートナーになってほしいと言いにいった。

 その後、アメリアはステラの申し出を受け入れ、無事にパートナーになった。

 一方、その頃クロウは旧特別棟に来ていた。


「本当にいるのでしょうか?」


 クロウは何かが記されたメモ用紙を見ながら、長い廊下を歩いていた。

 すると、古びた大きな扉がクロウの目の前に聳え立っていた。


「ここでしょうか?」


 クロウは古びた扉を開き、その中へと入っていった。


「図書室ですか……」


 目の前には沢山の本が散らばっていた。クロウはその本を避けながら、奥へと進んでいく。

 奥に進んでいくと、壁に人影が映っているのがわかる。

 クロウは迷わず進んでいく。そして……


「貴方が…… 第三王女殿下でしょうか?」


 クロウは目の前にいた生徒に声をかける。


「そうよ…… 私がこの国の第三王女、ローズ・イリネス・ネフェリルよ」


 カーテンから光が差し込み、はっきりと見えたローズの姿は、赤い瞳に紅色に染まったロングヘア、並外れて整った容姿の持ち主だっだ。


「久しぶりね、クロウ・ラージュ」

「お久しぶりです」


 クロウとローズは幼馴染でもあって、会話は意外と砕けていた。


「内戦以来ですね」

「そうね…… 10年ぶりかな?」

「えぇ……」


 内戦の詳細は、第四話〈生徒会長と一人の少年〉で詳しく説明している。

 〈ラフェスタ内戦〉終戦後、内戦に巻き込まれた王室は誰とも会わなくなったため、クロウとローズが再開したのは10年ぶりとなった。


「ところで……」


 ローズは椅子から立ち上がり、棚にあった本を手に取った。


「なぜここに来たの?」

「実は、一緒に組んでほしくて……」

「パートナーのこと?」

「はい」

「でも、クロウは2年生のはず…… むりな話よ」


 普通はそうなのだが……


「ある事情で1年生に転属しまして。今は4組です」


 驚いたローズは、思わず読んでいた本を手から滑らせる。


「4組…… 偶然ってあるものだね」

「えっ?」


 ローズは落とした本を拾ってクロウに渡し、〈パートナー契約書〉にサインした。


「いいよ。パートナー組んでも」

「本当ですか」

「えぇ」


 再び、ローズは椅子に座った。


「彼にもう少しで……」

「何か言いましたか?」


 ローズの言葉に不思議を感じたクロウだっだ。


「何でもないわ…… それより、これからよろしくね。私と組むんだから、必ず勝つよ」

「はい!!」


 こうして、クロウとローズはパートナーになった。


「では、教室に戻ります」

「えぇ、また明日ね」

「はい」


 クロウは教室へ戻っていったが、ローズはクロウとは逆の方向に歩いていった。

 そして、クロウが教室に戻ってきて数分後、チャイムが鳴り休み時間は終わった。チャイムが鳴り終わるのと同時に、メリシア先生が教室に入ってきた。


「今からこの冊子を配る」


 〈学年対抗剣舞試合 注意事項〉と記載された冊子が、ステラの手元にくる。


「全員渡ったな。注意事項はこの冊子に書かれてある通りだ。相手が瀕死状態や降参宣言、もしくは武器破損の確認があった場合試合は終了となる。制限時間は45分。そうまでに勝敗が決まらなかった、ポイントが入っている方が勝利となる」


 過去の試合で、45分以上の延長戦がおこなわれたのは、2回しかないらしい。

 

「最後に、パートナーのどちらかが15分以内に試合会場に来なかった場合、その時点で勝敗が決まってしまうから、その辺は気をつけとけよ」


(マジか…… 時間には要注意だな……)

 ステラは〈学年対抗剣舞試合 注意事項〉を読みながら、もしもの事を考えてみた。

(いや…… やめておこう )

 危険だと思ったステラは考えるのをやめた。


「以上で注意事項についての説明は終わるが、質問のある奴はいるか?」

「先生、開催期間は?」

「あぁ…… そうだったな」


 メリシア先生は黒板に、開催日程と開催期間について書いた。


「開催日は、来月の6月14日から7月8日までの約一ヶ月までおこなわれる」


 書き終えたメリシア先生は、チョークを黒板にあてながら日程を知らせる。


「それと、今日から学年対抗剣舞試合が終わるまでは、授業もないから、注意しろよ」


 言い切ったメリシア先生は……


「じゃあ…… 学年対抗剣舞試合で会おう」


 その言葉だけを残して、教室の扉を閉めた。

 一瞬、クラス全員が固まった気がした。


「まぁ…… 明日以降のことはパートナーと話し合って、決まったら解散しよう」

「そうね」

「賛成」


 学年対抗剣舞試合までの期間、何するかについての話し合いがおこなわれた。


「ねえ、みんな。これからどうする?」


 アメリアは椅子に座っている四人に聞いてみる。

 椅子に座っているのは、ステラ、クロウ、レイン、そしてレインのパートナーであるサナが座っていた。



「そうだな〜 この学園には模擬戦があるらしいから、それに参加するのはどうだろう?」


 ステラはあっさりと答えた。


「良いと思います。その方が効率的です」

「私も同意見だ」


 クロウ、レイン、アメリアはこの提案に賛成してくれたが、サナだけは何も言わなかった。ステラは嫌われているのかなと思った。

(何したかな……)

 覚えのないステラは疑問に思ってしまう。


「じゃ〜 これで決まりでいいね。クロウはパートナーにも伝えておいてね」

「分かりました」

「じぁ…… 解散しよう」


 席に座っていた四人は先に寮へと戻っていった。

 ステラは窓から夕方の空を見上げた。

(明日から大変だな)

 ステラは何となくそんな感じがしていた。






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