第三話
凰麟と牙獲は旅の準備をしてから、廃砦に一番近いコオク城の城下町ツァンガルを目指した。
町に着き、見つけた酒場で今国はどんな状況なのか噂話に耳を傾けた。
「麟国の土地になってから戦が起きなくていいな」
麟国の土地? ここは奴らが既に落としていたのか?
「麟国に喧嘩売るバカはいねえよ。雀国以外な」
「なんで雀国は許されるんだ? 武国も龍国も滅ぼされたってのに」
「何だと!?」
「――うお、ビビった」
牙獲は視線を集めたため、凰麟の手を引いてその場から去り、凰麟と二人きりになれる路地裏へとやって来た。
「まさか龍国が滅ぼされていたとは……」
「わたしたちが隠れていた間に何があったんでしょうか」
「聞いて回ろう」
身分を隠しながら、人里離れた村から来た旅人だと称して、話を聞いていく。
どうやら2年と半月の間に色々と変わってしまったらしい。どこに行ったって龍国は残っておらず、敵国麟国の中なのである。青璐のいる青獅子も麟国に取り込まれたらしい。無事で良かったと二人とも安心した。
麟国の皇子・鸞瑩凰の死体が見つかっていないため、閻魔帝はまだ彼を探していると言う内容の話も聞いた。
宿屋を見つけ、凰麟と牙獲は今後について話す。
「一緒に田舎の村で暮らさないか?」
「捜索隊と接触しないのですか?」
「麟国はお前の身分をもう知っている。俺はお前をずっと隠していた者だ。どう言う扱いになるかは分からない。登用されるとしても……お前と二人で城へ戻ることはできない。お前はどうしたい?」
「……わたしは牙獲さまといられるならそれで良いです。わたしの父が閻魔帝なら、わたしがあなたの安全を約束してくれるよう願ってみます、そうすれば、追われる身にはならないでしょう……?」
「だが、お前は麟国の皇子となる。誰かと結婚して、跡継ぎである子供を産むように迫られるだろう。俺はお前を誰にも渡したくないんだ」
「が、牙獲さま……」
牙獲の真剣な目に見つめられ、凰麟は頬を染める。
「それに、俺は登用されたとしてもただの将軍だ。お前と会う機会も減ってしまう」
「…………逃げるんですか?」
「ああ、身分を隠して、俺たちのことを知らない場所で共に暮らそう」
「……はい! どこまでもついていきます!」
牙獲は微笑みを浮かべ、凰麟を己の胸に導く。
「凰麟……」
凰麟の髪に口元を埋め、短く口付ける。凰麟が顔を上げれば、牙獲はその目元や頬に接吻した。凰麟は真っ赤になってそれを受け入れる。
牙獲からの愛情表現が終われば、次は凰麟から牙獲の頬や首筋に唇を落とした。牙獲はその様を眺めながら、興奮の色を目に浮かべた。腰を抱く手が、凰麟の臀部へ移動する。
執拗にお尻を撫でられて、凰麟はぎゅっと目を瞑って拳を震わせた。
「牙獲……さま」
セクハラです。
身体に触れられるのは嬉しいが、まだ恋人ではないし。恥ずかしいし。
しかし牙獲に暴力を振るうわけにはいかない、青璐相手なら距離を取っているが、青璐もこんなことはしなかった。せいぜい髪を触って来るくらいだった。
お尻から下へ移動した手に太ももと太ももの間を撫でられる。お尻の割れ目まで流れるように触られ、凰麟は怒りと羞恥で真っ赤になりつつそれに耐えた。
「凰麟……」
興奮気味の声が耳元に落とされる。瞬間、凰麟は全身を真っ赤っかに染め上げた。
はくはくと口を開いて、何かを伝えようとする。
牙獲の手は前に回り、内腿を撫で、凰麟のそれがあるポジションに触れた。何度も何度も撫でつけられ、凰麟は流石に体を離そうとした。しかし反対の手に腰を押さえられて逃げられない。
「が、牙獲、さま……」
「凰麟……だめか?」
熱っぽい瞳に見つめられ、凰麟は震える声で答えた。
「だ、だめです。まだ、口吸いもしてないのに……」
涙目になり、真っ赤になって小動物のように震える凰麟を見つめ、牙獲ははぁ、とため息をこぼす。
ため息に凰麟がびくりと体を跳ねさせると、目を合わせて来た凰麟の顔に、牙獲はおもむろに顔を寄せた。
「が、牙獲さま……!?」
「凰麟、愛している」
「へ……!?」
完全に瞼が降りきり、唇に吐息が掛かった時だった。
頭がぐわんぐわんと回りだし、凰麟がぐらりと体を逸らす。どうやら気を失ったらしかった。
牙獲はため息をこぼし、凰麟をベッドに寝かせた。
凰麟の上にのしかかるような体勢をそのままに凰麟の寝顔を眺めた後、顔を寄せて、唇近くの頬にそっとキスを落とす。凰の身体を撫で付けながら、何度も、何度も。
満足した頃には、凰麟の上から退き、隣に寝転んだ。熱に浮かされたような凰麟の寝顔をじっと眺め、愛おしいと言わんばかりに微笑む。
「凰麟……お前と一緒にいたい」
凰麟を腕の中に抱き、額に口付けた。
凰麟は麟、牙獲は獲と名前を変え、牙獲は髪を三つ編みに結い、凰麟は長い髪を切って、麟国の辺境の村に家を買って暮らした。町で身に付けていたものを売り、お金は何とか暮らしていける分を手に入れていた。
「麗可に貰った腕輪まで売るなんて……麗可に悪いことしたな」
「麗可は話によると業百鵺と言う麟国のスパイだった。裏切られていたのだし、気にするな」
「でも……」
凰麟は物を売る時、腕輪を最後まで手放そうとしなかった。それに牙獲は腹を立てる。
「俺以外の男からの贈り物を大事にとっておくのはやめてくれ」
「……は、はい」
牙獲が不機嫌になっている理由を知り、凰麟は高揚感を抱く。
「青璐さまは元気にしているでしょうか」
「青璐には会いたいが、あいつも捜索隊だと聞いた。もしかしたら一生会えないかもしれないな」
「…………寂しいですが、覚悟は決まっています」
「俺もだ」
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青璐は青獅子と共に、クウロ砦の近く――城下町ツァンガルへとやって来ていた。そこに、同じく麟国の皇子の捜索隊である業百鵺率いる百峰と鉢合わせて、共に行動した。
一人の男が、青璐とぶつかった。男の懐から、何かが落ちる。百鵺はそれを見て目を見張った。
「これは……!」
「どうした?」
黄水晶の宝石が嵌め込まれた、鳳凰の腕輪。
「これをどこで手に入れた!?」
「おととい、売りに来た者がいまして……!」
「それはどんな者たちだ!」
青璐は百鵺の様子から、それの持ち主が凰麟か牙獲の物だと推測する。百鵺の必死さを見るに、凰麟の物な気もするが。
「一人は灰色の髪の……背の高い三つ編みの男で、もう一人は背の小さい、乳白色の髪と黄金の瞳の……美しい顔立ちの……」
女か、男か、迷って口を止めるが。
百鵺と青璐は顔を見合わせ、頷き合う。
「ツァンガルの周辺を調べろ!!」
「何でもいい、手がかりを探すんだ!!」
出てきた手がかりは、最近背の高い三つ編みの、灰色の髪の美男と乳白色の髪の美少年が麟国の辺境の村に向かうため馬を買ったと言う話と、その道中の森の茂みから乳白色の切られた髪が見つかったとか、村へ着くと最近家を買った男二人がいると言う話の3つだった。
その家へ着き、百鵺が家の周辺を囲み、青璐が玄関から入ろうとする。そして、馬小屋らしき場所を見て、馬がいないことに気がついた。
「牙獲、凰麟!」
ハッとして、玄関扉を開け、中へ入るが、中は生活感があるものの人っ子一人いやしなかった。
「百鵺、中には誰もいない! 馬もいない!」
「瑩凰様の耳だ!」
「どうする!?」
「まだそう遠くへは行っていない筈だ!」
馬に乗り走り出そうとする百鵺の前に、青璐が立ちはだかる。
「……何を考えている!」
「二人は俺たちから逃げた、つまり逃げる理由がある」
「關牙獲のことなら見つけたら登用することを伝えろと言われている!」
凰麟の逃げる理由が牙獲にあったらの話だが、そうなのだろう。
「俺は一緒に暮らしてきたからわかる、牙獲は凰麟が皇子だと知ったんだろう。きっと俺と牙獲と凰麟は離れ離れになる。それが嫌で二人で暮らそうとしたんだ」
「身の程知らずが!!」
「百鵺、このまま逃がすという選択肢は――」
「――そんなものはない!!」
青璐は百鵺が凰麟に執着していることに気が付いていた。同じ気持ちを持つ者だ、気が付かない方がおかしい。
「青璐、關牙獲は瑩凰様を好いている。瑩凰様も關牙獲を愛している。二人をこのまま逃してもいいのか!」
2人が想い合っている?
「二人がそうしたいなら、俺は――……」
「……っ!! 王様の命令に背く気か!」
「……!」
2人を逃すということは、閻魔帝に背くということだ。
青璐はいつか3人で暮らせる日を願って、2人を追った。
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牙獲と凰麟は追っ手が近づいていることに気がついていた。
「二手に分かれるぞ」
笠を深く被り、牙獲がそう言う。
「牙獲さま!」
不安顔の凰麟に、牙獲は微笑みかける。
「大丈夫だ、また会える。山を一つ越えた先にある村で落ち合おう」
「…………はい! 絶対に逃げ切って見せます」
牙獲と二手に分かれ、凰麟は山を越えた。
凰麟が村に着き、牙獲を探していた時だった。村の建物から物音が聞こえ、凰麟は、しまった――と考え、逃げ出そうとする。
――バンッとそれぞれの建物の扉が開き、中からぞろぞろと兵士が現れ、周囲を囲まれた。
その兵士達数人の顔見て、凰麟は血の気が引いていく。
「青……獅子……」
長い間共に過ごしてきたあの人に、思考を読まれていたのか。
「凰麟」
「青璐さま……っ」
どうして、そう言いたげに、涙目で見つめられ、青璐は首を振る。
「お前達のためだ。俺が諦めても、新たな追っ手がお前達を追う。でもお前達が城へ向かえば、3人とも生きていつか会える」
「……、…………っ」
「帰ろう、凰麟」
「青璐さま……」
青璐と凰麟はしばらく見つめ合う。凰麟は青璐に手を伸ばしかけたが、それを振り払い、頭を下げた。
「ごめんなさい!! わたしは、牙獲さまと逃げます!!」
「そうか」
青璐の指示で、青獅子が道を開こうとした時だった。
「瑩凰様、關牙獲なら、死亡しましたよ」
百鵺と百峰が現れ、そう冷たく言い放つ。
「どう言うことだ百鵺!?」
青ざめ、反応しなくなった凰麟を見て、青璐が百鵺に詰め寄る。
「崖から落ちて、死にました」
愉快そうに笑う百鵺を見て、青璐は青筋を浮かべる。百鵺の頬を殴りつけてから、馬を降り、凰麟のそばに寄った。
凰麟の手を引き、馬から下ろす。凰麟はされるがままに従った。もぬけの殻のようになった凰麟を、青璐は慰めるように胸に抱きしめる。
「青璐……さま」
小さな呟きに、答えるように腕の力を強めると、凰麟の手が青璐の胸にしがみつく。
「牙獲さまぁぁぁぁ……」
泣き出す凰麟の背を撫でて、青璐は涙を浮かべる。
凰麟が泣き止むことはなく、青璐は自分の馬に凰麟を乗せ、抱きしめながら、閻魔帝の待つ宮殿へと向かった。
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麟国――王都ムヌド。ランレイ宮殿。
凰麟は青璐に支えられながら、凰麟に用意された部屋へやってきた。
閻魔帝に会う前に湯浴みや着替えを行うつもりらしかったが、青璐は用意された召使い達を外に追い出して、凰麟をベッドに座らせた。
凰麟の前に座り込んで、俯けている凰麟の顔を覗き込む。
「凰麟、牙獲のことは必ず俺が見つけてやる。だからもう泣くな」
「でも……でも牙獲さまが」
「……大丈夫。牙獲を見つけるまでの間、俺がお前を支えてやる」
潤んだ凰麟の目を見つめながら、青璐は凰麟の涙を拭う。
「青璐さま……」
「凰麟、愛してる」
「…………え?」
「お前を愛してるんだ」
「きゅ、急に何を言い出すんですか……!」
顔を真っ赤にして慌てる凰麟を押さえ込むようにして抱き締める。離れようともがくそれを無理やり腕の中に閉じ込めた。
「凰麟、お前の気持ちは知ってる。それでもお前が好きだ」
「青璐さま……」
「俺を牙獲の代わりにしてくれてもいい、今は傷を癒せ」
「さっき青璐さまにすがったばかりです」
「いい。俺はお前の笑顔が好きだ」
頬に接吻され、凰麟の顔は赤く染まる。青璐はそれを見て、柔らかく微笑んだ。
「何年掛かってもいい、待っている。命を賭けて、俺がお前を守ってやる。お前達は、俺の戦う理由だからな」
呆けている凰麟の頬に手を当てて、そっと顔を近づける。
唇に触れる熱っぽい感触を受け、凰麟は目を大きく見開く。牙獲の顔が脳裏に浮かび、青璐の胸を押した。
「……せ、青璐さまごめんなさい。わたしは、牙獲さまのことを……愛しています」
「忘れろとは言わない。いつか、俺のことも愛していると言わせて見せる」
「青璐さま……」
手を取られ、誓うようにその甲に口付けられる。
「王様に会えるか?」
「……はい、会いたいです」
召使いを招き入れ、汚れを落とされ、服装を整えられる。
凰麟は青璐と共に王がいると言う部屋の前にやって来ていた。
中には王の信頼する者達もいると言う。凰麟は緊張しており、それに気づいた青璐は凰麟の手を優しく握った。凰麟は青璐の顔を見上げ、笑いかけられて緊張を解く。
扉を開き、中へ入ると、豪華絢爛な王の間が広がっており、その中心を自分たちは歩いていく。
奥の階段の上には王座に着く王の姿が見えた。
「染凰麟――いや、第一皇子、鸞瑩凰よ」
王が威厳のある声で告げる。
筋肉隆々の偉丈夫を想像していたが、思ったより普通の人だった。見るからに強そうではあるが。
「よく帰ってきた」
その言葉と声を聞き、遠い記憶が蘇る。
子供の頃によく頭を撫でてくれた手、よく褒めてくれた声、その持ち主が、目の前にいる人物であると直感的に気付けた。
凰麟の目に涙が浮かぶ。
「……はい」
涙は溢さぬよう我慢しながら、跪き、頭を下げる。
「王様」
隣で青璐の声が上がる。
「もうお聞きになったとは思いますが、關牙獲が崖から落ち死亡しました。幼い頃からの友人です、捜索させて下さい」
その言葉に、その場にいた業百鵺の眉が釣り上がる。
「瑩凰よ。そなたはどう思う」
「牙獲さまはわたしの命も同然の人です。わたしにも捜索させて下さい」
閻魔帝は静かに頷いた。
「命も同然か……。ずいぶん軽い命だが……」
「軽くありません!! 牙獲さまも、ここにいる青璐さまも命の恩人です!」
「……いいだろう。隆青璐、瑩凰と共に關牙獲を捜索せよ」
「「ありがとうございます!!」」
「だが、一月だけだ。一月の間に關牙獲を見つけられなかった場合は、死を認めて諦めろ」
死体の捜索を願いでたが、死を認めていないからこその捜索であることに気付かれていたらしい。
「……はい」
「はい」
凰麟と青璐は王の間を後にし、次の日から牙獲の捜索を始めた。
一月後、牙獲も、牙獲の死体も見つかることはなく、凰麟と青璐は胸がすっきりとしないまま、捜索を中止することとなった。
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3年後。
「瑩凰様、入っても?」
凰麟の部屋の前でそんな声が聞こえてくる。声で青璐だと分かり、凰麟は着替え中だったが通した。
青璐は中に入って来て凰麟の姿を見てから、ため息をこぼした。
「また召使いを追い出したんですか」
「敬語はやめて下さい。それから昔のように呼んでください」
「2人きりの時だけだぞ」
青璐は凰麟の前に立つと、腰に手を回し、距離を縮めてくる。
「せ、青璐さま……!」
「しっ……静かに」
凰麟の顔に顔を寄せて、唇に優しく接吻を落とす。凰麟は顔を真っ赤にして体を逸らした。
「ま、まだわたしは牙獲さまを愛しています!」
青璐はそれを追いかけるように腰を曲げて、顔を寄せた。
「せ、青璐さま……」
「凰麟……」
熱っぽい瞳で見つめられ、凰麟は思わず目を逸らす。青璐の瞼が降りていく様が視界の端に映った。
心臓の鼓動が高鳴り、擦り寄るように迫る青璐の唇に、凰麟は目を瞑り、自らも顔を寄せて、その口付けを受け入れた。
沈み込むような弾力に触れ、長い間唇が重なったままになる。
音を立てて青璐が離れれば、凰麟は顔を真っ赤にして顔を俯けた。
「俺を愛してくれたか?」
「ま、まだです……」
青璐はあからさまに残念そうに肩を落とす。
「牙獲は手強いなぁ……」
「牙獲さまは永遠の人ですから」
「俺だって傷付くんだぞ」
「自分から話しておいて……」
相変わらず衣や菓子を贈り付けて来ては、前よりエスカレートしたセクハラをしてくる。凰麟もそれを受け入れつつあり、2人は秘密の関係と言えた。
「その牙獲のことなんだが……」
青璐がそう切り出し、凰麟と目を合わせぬまま思い出すように話した。
「虎国の将軍の一人が、灰色の髪と青い瞳の、仮面を付けた姿をしているって言う噂があって……。登用されたのも3年前らしいし……気になってるんだ」
「…………」
「凰麟?」
「崖の下には川がありました、川に落ちて生き延びていたなら、虎国へ繋がる川なら……!」
「凰麟落ち着け。俺もそれは調べて来た。確かに虎国と繋がっている」
「それじゃあ牙獲さまは……!」
「生きているかもしれないが、敵側にいる……」
「……っ、……」
凰麟が黙り込み、唇を噛み俯くのを見て、青璐ぽんぽんとその頭を撫でてから、歯を見せて笑った。
「安心しろ、俺が倒して王様に登用してもらう!」
「はい……! その時はわたしも父上に頼みます!」
それから数ヶ月後、虎国が攻めてきたと言う一報が入り、青璐と凰麟は、他の将軍とともに戦場へ向かうこととなった。