表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盲目  作者: 香豊大
7/19

盲目⑦

午前6時35分、所定の体育館裏に着いた。そこには当たり前だが、草間優祐が居た。

かなり緊張している。ということは脅迫ではなさそうだ。告白なら、すっと断ろう。

そんな私の考えを壊す言葉が、彼の口から出た。

「音無さん、いじめられてるよね?」

緊張からかかなり声が震えていたが、彼はそういった。

私は自分の耳を疑った。が、私の脳はそれ以外の言葉に変換しなかった。

私はその言葉に肯定も否定も出来ず、その場で泣き崩れた。

私は泣きながらも、何故それを知っているのかを聞いた。

彼が言うには、偶然あの廃教室にたどり着き、そこで私がいじめられているのを見たという。一瞬だったが、スマホの録画も見せてもらった。そこには、ペットフードに顔をうずめる私の姿が映っていた。

やはり脅迫かと思い、走って逃げようとしたが、泣き崩れて脱力していた私の足は、それを許さなかった。

やがて近づいてきた彼は、思いもよらない言葉を口にした。

「僕は弱いけど、音無さんの力になれる。そう断言する。だから、少しずつでも良い。僕に概要を教えてほしい。勿論、信じられないなら今ここで通報してくれたって構わない。」

その彼の言葉には、先ほどのような震えは無く、ふと見上げた彼は私をまっすぐに見ていた。

彼のその姿に、私はまた泣き始めた。その姿に彼は動揺していたが、すぐに介抱してくれた。その貧弱そうな体は、不思議と頼もしく感じられた。

私は、いじめの内容、自分の境遇など全てを話した。正直、そこまで話す気は無かったのだが、いつの間にか全て話してしまっていた。

いじめの内容を一通り確認した彼は、少しの間黙っていたが、やがて口を開いた。

彼が口にした内容に、私はハッとした。

「表で何もしないなら、無視すれば良い。」

そうだ。どうして私はこんなにも簡単なことを気付かなかったのだろう。

今まで「ただの目立たないクラスメート」だった彼は、突然光を帯びたように見えた。

そう感じた矢先、彼の背から陽が差し込み始めた。彼が、眩しかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ