毒手
ここから主人公目線に戻ります。
「お前かよ、さっきから変な臭い出していたのは……」
俺はそう言って毒使いの肩にポンと手を当てた。
「ンなぁ……ッ!!」
何やら周章狼狽している。
「何故だ……!!何故この私に触れられる……!?何故この毒気の中を平気でいられる……!?」
何言ってんだコイツ?
さっきから訳の分からんご高説ほざいていたが、まさかこの程度の毒気で俺達全員を皆殺しに出来るとでも思ってたのか?
「いや……何故って……お前と同じだよ。毒物に対してある程度の耐性は持っているんだよ」
「なっ……」
毒使いが顔を引き攣らせた。
「別に毒を使えるのはお前だけじゃないんだからな」
「莫迦な……私がこの神経毒を克服するのに、どれ程血の滲む様な努力をしたと思っている……」
何やら顔をヒクヒクさせているが、俺はそんな毒使いを見て嘆息をついた。
「ふう……羨ましいな」
「何……?それはどういう意味だ!?」
「この程度の毒の克服に滲む様な努力が出来るお前が羨ましいんだよ。俺は毒が専門じゃないが、毒魔法関連については片手間に一通り習得していたら、自然と耐性は身に付いたんだよ」
それを聞いて毒使いは一瞬言葉を失った。
「だからこの程度の毒の克服で滲む様な努力が出来てしまえるお前が本当に羨ましいんだ……俺は一度でいいからやってみたいんだよ。滲む様な努力を……」
「貴様あああ!!私の毒に対する永年の研鑽を愚弄する気か!!」
毒使いは顔を強張らせ真っ赤になって激昂した。
「これならどうだああああああ!!」
毒使いは懐からガスマスクを取り出し、顔に装着した。
「【猛毒雲噴霧】」
次の瞬間、彼の周囲から深い緑色をした毒々しい煙が勢いよく噴射される。
「この猛毒は私とて一呼吸で絶命する。仮に息を止めても、鼻や口の粘膜から侵入し、即効で死に至らしめる。貴様の毒耐性がいくら強かろうが、この猛毒に耐えられる人間、いや、生物は存在しない!!」
「だーかーらーよぉーーー……」
俺は緑の煙が自身に当たる前、全身に魔力を込めた。
「くせえっつってんだろ!!」
全身から魔力を放出させた俺の周囲に、青い煙が噴射される。
青い煙と緑の煙は空気中で混ざり合い、やがて両方とも霧散していった。
「んなっ……これは……貴様一体何をした!?」
毒使いは毒煙が消滅していく様を呆然と眺めてながら呟いた。
「いや、何って……相殺したんだよ。毒を以て毒を制すって言葉がある通り、ある種の毒同士は互いに打ち消し合うんだよ。例えば植物毒のアコチニンと動物毒のテトロドトキシンは一定の割合で同時摂取するとお互いの毒を相殺し合うんだ」
「そんな事は言わなくても知っている!!問題は何故貴様が私の究極魔法と同等の毒魔法を使えるかという事だ!!」
「何故って……使えるものは使えるんだからしゃーねーだろ。さっきも言ったろ、毒を使えるのはお前だけじゃないってな……」
「莫迦な……この私と同レベルの毒をお前も使えるというのか!?」
「ああ、因みに拮抗させた毒霧は、お前の毒成分を見て、即興で作り出した」
「なにぃ……!?そんな事はありえん!!私の究極の毒魔法と拮抗する毒を一瞬にして作り出せるなど……あってたまるかああああああああああ!!!!!!」
ガッシャーーーンッ
彼はガスマスクを派手に床に叩きつけた。
眉間に血管をピクピクと浮かべながら憤怒しているが、何を怒っているのだろう?
自分の毒魔法があっさり無力化され、毒使いとしてのプライドが傷付けられたのがそんなに悔しかったのか。
「私は毒に関しては神武以来の天才と呼ばれた男だ。私以上の毒使いなど、絶対に認めん!!」
そう吐き捨てると、毒使いは左手の手袋を脱ぎ捨てた。
するとどうだろう。彼の左手は毒々しい深紫に染まっているではないか。
「見せてやろう……わが生涯をかけた、究極の毒をな……」
毒使いは禍々しい深紫の左手をかざすと不敵な笑みを浮かべるのであった。
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