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拳士と無頼と一般人

「どうやら最後の一人が来たらしいな」


 モヒカン男が俺をジロリと見つめ、酒臭い口を開いた。


「まったくご苦労なこったぜ、わざわざ殺されに来るとはよ……」


 如何にも悪党らしい、下卑たうすら笑い浮かべている。


「……ま、もっとも、そりゃお前に限った話じゃねえ。ここにいる俺様以外の全員に言える事だがな」


 モヒカン男はそう言うと、6本目の火酒のボトルである、アルコール度数96%のスピリタスを一気に飲み干した。

 普通の人間だったら、それだけで即死ものの急性アルコール中毒を引き起こすだろう。


「ヒャッヒャッヒャッヒャ……」


 モヒカン男はボトルをボトルを両手で包み込むと、まるでおにぎりでも作るかの様にそのまま握り込んだ。

 ゴリゴリという音を立ててボトルが粉砕されるが、何故か破片が殆ど出てこない。


「おめえら全員……こうなる運命だからよぉ!!」


 モヒカン男が手を開くと、クリケットボールぐらいの大きさになったガラス玉がボトリと床に落ちた。

 凄まじい力で超圧縮されてしまった為、ガラス片が水晶玉の様に融合してしまったらしい。


(なるほど……確かに人間離れした馬鹿力だ)


 俺は正直、感嘆した。

 なにしろ、その芸当は()()()()()()1()2()()()()()()()()()()()()()()()()()


「へぇ……大した力だね、キミ」


 シャドーボクシングの様な動きをしながら、女拳士が口を開いた。


「でも、ボクには通用しないよ。どんなに凄いパワーでも、当たらなきゃ意味がないんだから」


 そう言うと、女拳士はシャドーのスピードを加速させた。

 成程、確かに言うだけあって、凄まじい速さだ。

 ステッピングやウェービングといった、基本的な動作をしているだけなのに、その桁違いのスピード故に、身体が3つ以上。上半身だけなら10以上の残像が分裂して見える。

 (もっと)も、それは並の人間の動体視力で捉えた場合だろうが。


(やはり見た目通りのスピードファイターか……しかし、こうも自分の手の内を晒して大丈夫か、コイツ?)


 敵に対して老婆心ながらの心配をしていると、女拳士は更に調子に乗った。


「ボクのMAXスピードは音速以上!!知ってるかい?音よりも速い攻撃を仕掛けると、こんな事も出来るんだよ!!」


 言うが早いか、女拳士は目にも止まらぬ強烈な左ストレートを放った。


 バリッーーーーーン!!


 瞬間、空気が震えて、モヒカン男の傍らにあったボトルの一つが粉々に弾け飛んだ。

 女拳士とモヒカン男の間には、4,5メートルぐらいの距離がある。


衝撃波(ソニック・ブーム)か!!?)


 拳が所謂「音速の壁」を破った事によって生じる衝撃を飛ばしたのだ。

 理論はシンプルだが、実践するには人間の限界を超えた瞬発力を必要とする。それを体現できた格闘家は文献などに登場する、伝説と化した拳聖士ぐらいだ。

 まさかこんな子娘がいとも簡単にやってのけるとは……


(その技を出せる奴は正直初めて見たぜ、いや、まさか出来る奴がいたとはな……()()()()


 ……いや、しかし確かにやってる事は凄いけど、それを今出すか?

 その技は、相手によっては初見殺しとしてこの上なく有効な技なんだぞ。


「ヒャッヒャッヒャッ……やるな、嬢ちゃん」


 女拳士の離れ業を見せられても、モヒカン男はニヤニヤ笑っているだけだった。


「だが、俺様がただの力自慢だと思ったら大間違いだぜ……」


 それに女拳士が軽く応える。


「へえ……、じゃ、キミ他には何が出来るの?一気飲み以外に」


 ともすれば、挑発ともとれるような女拳士の問いかけにも、モヒカン男は動じたそぶりは見せない。


「ヒャッヒャッヒャッ……それはまた追々な」


 軽く受け流したか。

 これ以上、この場で自分の手の内を見せるのは愚かしいというわけか。

 コイツ……すぐキレやすそうな見かけに反し、なかなか用心深いらしい。


「……ん?」


 異様な集団の中で、俺は更に異様な2人組を目にした。

 正確に言うと、この異様な者たちの集団の中、()()()()()()()()()()()()()


 年齢は若く、まだ10代半ばぐらいの男女の二人組。

 男子の方は士官の制服に似た、上下真っ黒な服。中央に金色のボタンが並んでいた。

 女子の方は、海兵隊の着る所謂水兵服(セーラー)にスカートを合せた様な服装だったが、こちらも上下真っ黒だ。

 両者とも黒髪に黒目。顔立ちもなかなか整っていて、美男子と美少女と言っていい。

 そしてよく見ると、二人とも顔がそっくりだ。

 男子の方など、その中性的な顔立ちと幼げな雰囲気が相まって、少女と間違えられてもおかしくない。


(双子か……)


 兄妹(けいまい)姉弟(してい)かは判らないが、2人は明らかに二卵性双生児だろう。

 怯える少女を男子が庇う様に、2人は広間の隅で寄り添っていた。


 だが、そんな事より、俺が最も気を引いたのは、この2人の内面だった。


(こいつら……ド素人だ)


 ある程度の修練を積んだ者になら、歩き方や剣の握り方を見ただけで、相手の大体の実力が分かる。

 だが、俺レベルになると、呼吸を見ただけで分かる。


(おそらくこいつら……今まで戦い、いや、命のやり取りそのものをした事が無い。何故こんなやつらがここに……?)


 俺はこの空間の中で、最も普通ではない()()の2人に、奇妙な違和感を覚えていた。


読んで頂けるだけでも幸せですが、もし少しでも

「面白そう」

「続きが気になる」

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