強すぎた男の空虚
お初にお目にかかります。
なにぶん、素人の処女作なものですから、誤字、脱字、日本語の間違い等、お見苦しい点が多々あるかと思いますが、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
生死を分ける修羅場をくぐった者にだけ纏える、オーラというものがある。
一度、身長150㎝にも満たない小柄な老人が、物凄いオーラを纏っていた事がある。後に知った事だが、その老人は誰もが知る有名な流派の開祖であり、伝説級の剣聖だったらしい。
そういう強者のオーラは、平時でも自然と滲み出るものなのだ。
尤も、それを察知する方も、それなりの技量と経験が必要だが……
俺は今、大きな両開きの扉の前に立っている。
とてつもなくでかい扉だ。10メートルはあるだろうか。扉というより、最早、門と言った方が良い。
そしてその扉の中からは、先ほど述べた強者のオーラを強く感じた。
「うはっ いるいる。とんでもねえオーラを持った奴らがうじゃうじゃと……」
俺は一縷の期待を胸に、扉に手をかけた。
この扉の向こう側で、俺は生れて初めて「敵」に出会えるかも知れないのだ。
1000年に一度、絶対者によって選ばれし戦士たちが、最後の一人となるまで戦い抜き、勝ち残ったその一人には、どんな願い事でも一つだけ叶えられるという……
俺はめでたく……というべきか、当然と言うべきか、その戦士の一人に選ばれた。
俺の今までの人生は、空虚の一言に尽きた。
何しろ、俺の前々世は魔王で、前世はその魔王を斃した勇者だ。 自分で自分を斃す羽目になるとは、少々複雑な気持ちではあったが……
俺はその魔王と勇者の記憶を受け継ぎ、持って生まれた規格外の魔力。チート能力により、幼少時よりほぼあらゆる事が可能だった。
その昔、俺の母親が乗った馬車が、ウルフハウンドの群れに襲われた事があったが、群れの中の一匹が俺の母に飛び掛かろうとしたその瞬間、野獣は炎に包まれ断末魔をあげながら黒焦げとなった。
そして次の瞬間、十数匹のウルフハウンドの群れは紅蓮の炎によって消し炭となった。 危険を察知した俺が、襲い来る捕食者を駆逐したらしい。
尤もその時、俺はまだ生れてすらいない胎児の状態だったらしいが。
その後、6歳の時受けた魔力測定で測定器を壊し「魔力値測定不能」を叩き出したのを皮切りに、12歳の時受けた世界屈指の超名門魔法学校の入学試験では、他の受験生が当てるのもやっとの中、試験官が「絶対破壊不能」とまでフラグを立ててくれた魔法射撃用的を、標的のみならず並んでいた10枚全てを破壊し、試験会場も焼け野原にして試験官と他の受験生たちの度肝を抜いた。
15歳の時には永年、魔術学会を悩ましていた未解決問題を、そうとは知らずに暇つぶしのつもりで解いていたら、あっさり解いてしまい、魔術学会を震撼させた事もあった。
ギルドの入会試験では、殿堂入りSSSランクの冒険者を爪楊枝で圧倒した事もあった。しかも目隠し、耳栓、手足を枷で拘束して、四肢にそれぞれ50kg、合計200kgの重りを付けてのハンディキャップマッチでだ。(どんなけハンデつけんねん?)
最強最悪の捕食動物として悪名高いアンブレラドラゴンをワンパンで倒してしまった事もあった。
封印してたどこかの魔神が復活して来た時も俺が討伐した。まあ、流石に魔神の討伐には些か骨が折れたが。
何しろこの俺が、討伐するのに2分もかかってしまったぐらいだから。2分も。
こうして俺が何かする度に、周囲の奴らは口をあんぐりと開けてポカーンとするのだった。その度に俺はこう言うのだ。
「え、これぐらい普通じゃないの?」
「おれまたなんかやっちまった?」
俺は成長するにつれ、俺の当たり前は、普通の人間にとっては規格外の能力だという事を次第に学んでいった。
そして俺の心の中には、何時からか、とてもつもなく空虚な風が吹くようになった……
生れて此の方、努力らしい努力もしなければ、苦労した事もない。
何をやっても、どんな不可能と思えるような事でも、簡単に出来てしまう。
そんな俺の人生には今まで困難は無かった。
だが、代わりに達成感も無ければ、充実感もない。
蠅を叩き潰すのと同じぐらいの感覚でドラゴンを倒してしまえる俺は、いつしか何も感じなくなってしまっていた。
勝利の喜び……
敗北の口惜しさ……
俺は一度でいいから、そういった普通の人間が当たり前に経験する感覚を味わってみたかった。
紹介が遅れたが、俺の名はナロウ=ケイ。
何、名前が変だと?
気にするな。
大した意味は無い。
俺は未だ見ぬ「敵」となり得るかもしれない者達に胸を高鳴らせながら、両開きの扉を押し開けた。
重厚で厳めしい見かけとは裏腹に、扉は驚く程軽く、音も立てずに開いた。
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