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女子高校生の恋愛事情  作者: 斯波@人質聖女コミック②発売中
いちごみるくみたいな恋がしたい
7/24

1.

「みっちゃん。わたし、円城えんじょう先輩と付き合うことになったの」

 小学校からの一番の友人であるアコは体調を悪くして保健室に運ばれた翌日、ほっぺをサクラ色に染め上げながら報告してくれた。


 こうなる予感はしていた。

具体的には昨日から。

でもうっすらとした予感がしだしたのは、アコがパーカーの持ち主を探すと言い出した時から。


だから心構えだけはしていた。

けれどやっぱり寂しいって気持ちがなくなるわけではない。だってずっといっしょだったのだ。


小学校一年生で『かしわぎ』と『かんざき』で前後の席になってからずっと、中学も高校もクラスは同じだった。


わたしに好きな人ができたって言えば手伝ってくれて、行きたい場所が出来たらいつだって二人で足を運んだ。ご飯だっていつもいっしょ。


そのせいでせっかく出来た彼氏に振られちゃうこともあった。


「アコちゃんとおれ、どっちが大事なんだよ!」

 何度か聞かれた言葉。

 もちろんどっちも大切で。


だから「どっちも」って答えればいつだって彼らはわたしの元を去っていった。でも後悔をしたことは一度だってない。


だってアコは大事なお友だちだもん。

 アコといっしょにいるわたしは本当のわたしで。


 だからそんなわたしを好きになってくれる、運命の相手ってどこかにいないのかな?

 そんなことを思いながら高校入学から数ヶ月でアコに彼氏が出来たというわけだ。


 アコのお相手は円城えんじょう先輩。

アコの二つ上で、学園の人気者だ。顔は今はやりのさわやかけいイケメンというやつで、ふとした瞬間に笑うその姿が犬みたいで可愛らしいのだともっぱらの噂だ。


わたしのタイプではないけど。

でもみんなから好かれているからってアコのお相手に相応しいなんてすぐに決めることは出来ない。


アコが借りたパーカーを返したいって。その相手が男子らしいって聞いた時は神経をピンっと張って、やばいやつじゃないかって心配していた。


もちろん相手が円城えんじょう先輩だって分かった後も、先輩がアコのことを気に入って声をかけ始めた時も。

先輩のお友だちからおかしもらったり、ジュースおごってもらったりしていたけれど、アコのこととなれば、わたしはそんなんで簡単にほだされることはない。


それでも大丈夫! って思えたのは、アコを保健室に運んだと連絡に来てくれた円城えんじょう先輩の目は本当にアコを心配していてから。


それに一限が終わった後の10分休みにわたしが保健室に向かったらもうそこには先輩がいたし。それだけアコのこと、本気なんだろうって伝わってきたのだ。こうして報告するアコの隣に立っている先輩の頬は緩んでいて、幸せムード全開だ。


「おめでとう。アコ」

 だから素直にそう口に出して笑えばアコはいっそう笑みを深めた。

 幸せそうな顔。昔からお人形さんみたいで可愛いアコだけど、今日の可愛さはいつもの倍。いや、それ以上かもしれない。


周りの男子はいまさらながらにアコの可愛さに気がついて、教室の端っこの方でなにやらこそこそと話してはいるけれどもう遅い。だって可愛い可愛いアコを円城先輩が手放すわけないもん。先輩もその視線に気づいているのか、大事そうにアコを抱き寄せる。


彼氏募集中なわたしに見せつけられている、というよりはアコの友だちであるわたしに安心してってサインのつもりなのかな。そんな心配はしていない。だってアコの幸せな顔みたらだいたいのことは伝わってくるから。



「それでみっちゃん。相談なんだけど」

「なんでしょう?」


 まさかわたしとアコのランチタイムをじゃまするつもりなのだろうか? と身がまえる。でも直後にふと思う。わたしはずっとアコとのランチタイムを彼氏との昼休みよりも優先させてきたけれど、アコにもそうしてくれなんて傲慢すぎるのではなかろうか。


アコとの食事は楽しいし、これからも続けたい。

けれどそれはわたしの気持ちであって、アコや先輩だって恋人といっしょに昼休みすごしたいよね……。


アコと先輩の関係を邪魔したいわけではない。むしろ応援したいのだ。だからこそ、ここはなにを言われても引き下がらないといけない。



我慢、我慢……。

そう頭でくり返して先輩の言葉を待つ。けれど言いづらそうに頬を掻いた先輩の口から出たのはわたしの想像していた言葉とはまるで違うものだった。


「水曜日のお昼休みはみんなで屋上でご飯会しない?」

「ご飯会?」

「週に一度、アコちゃんといっしょにご飯を食べたいっていうおれの提案なんだけど、みっちゃんさえよければと思って」

「週に一度でいいんですか?」

「ん? うん。あ、でも帰り道はいっしょに帰るし、後々週末デートもしたいって思ってる!」


 固めた拳からはそこだけは譲れない! という意気込みがジンジンと伝わってくる。元々帰り道は使っている駅がアコとは違うから譲るもなにもない。


アコとわたしは小学校の学区は同じだったけど、最寄駅は違うのだ。入学式前には使う駅を合わせようかなんて話したけど朝キツいのもイヤ、という結果におさまった。


だから半年分の定期券を新しくする時だってどちらかに合わせるつもりもない。

だから安心してくれていいし、デートにいたっては全面的にバックアップをしたいとさえ思っている。


過去にあれだけアコに協力してもらっていたのに、今回わたしがアコのために何か出来たのってパーカーの持ち主捜索だけだもん。



 デート服をいっしょに選んだり、オシャレな喫茶店探すの手伝ったりしたい!



「それはもちろん邪魔しません!」

 だから力強くこちらも拳を固めて答える。先輩のとなりでアコが「デート……」なんてつぶやきながら固まっている。ほんのりとピンクにそまったほほを両手でおさえて。そんなウブなところもたまらなく可愛い。


アコを見下ろす先輩の目も横にのびて、アコの可愛さに癒されているようだ。


付き合い始めてまだ一日だもんね。

まぁアコの場合、10年近く見ていてもその可愛さは加速する一方なんだけど!


……っとそれはおいといて、ひとまずはナゾの『ご飯会』だ。


どうやらわたしとアコのランチタイムは週に一度以外は今までと変わらずに過ごせるらしい。だが週に一度とはいえ、参加メンバーの中に自分も加わるかもしれないものの内容を知らずには流せないのだ。


「ご飯会ってなにするんですか?」

「ご飯会って言っても屋上でお弁当食べて話すだけ。メンバーはおれとアコちゃんとみっちゃん、後は佐伯さえき河南かなんとか。みっちゃん、ほかに誰か誘いたい人いる?」


 佐伯先輩に河南先輩といえば、円城先輩と仲のいい先輩たちだ。

アコといっしょに円城先輩たちの教室に初めて足を運んだ時にもいた二人。そしてわたしにお菓子やジュースを奢ってくれる二人でもある。つまりはわたしにとっても、アコにとってもおなじみの二人だといえる。



彼らとご飯か。

 わたしだけなら付き合いたての二人のお邪魔になりそう……なんて思っちゃうけどあの二人がいるならいいかな?


 なによりアコも納得しているみたいだし。


「特にいないです。じゃあ水曜日は購買パンの日からパン屋さんの日にしなきゃ」

「あ、そっか。ごめん、みっちゃん」


 水曜日は購買の日――高校に入ってからそう決めていたことをアコは思い出したようだ。申しわけなさそうに眉を下げて「やっぱりほかの日に……」なんておろおろし始める。でもほかの曜日は何かと都合が悪い。


 月曜日はわたしたちのクラスは5限目が体育で、昼休みのうちに着がえなきゃいけない。火曜日は先輩のクラスが3、4限で化学の授業で、実験が入れば昼休みの時間は短くなってしまう。木曜日はわたしの委員会の招集が二週間に一度あるし、金曜日は分からないけどこの感じからして、先輩たちに何か予定があると考えた方がいいのだろう。


 それならわたしのお昼事情なんてささいなことだ。


「気にしないで。そろそろ水曜日スペシャルにも飽きてきたし」

 水曜日の昼のチャイムでノートをバチンととじて、お財布片手に走るのは楽しいし、水曜日の購買特別メニュー『おばちゃん特製ミックスサンド』はお気に入りだけど、アコとのお昼には負ける。


 それにパン屋さんのサンドイッチだって好きだし!


「じゃあ毎週水曜日は屋上ご飯の日ってことで、今日からスタートですか?」

「うん。みっちゃんさえよければ」

「4限終わったらダッシュでご飯買ってくるので先に待っててください」

「りょうかい」

 こうしてわたしは水曜のお昼のラストランにそなえて、授業中は最適ルートの確認に励むのだった。


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