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女子高校生の恋愛事情  作者: 斯波@人質聖女コミック②発売中
赤いパーカーから始まる恋
1/24

1.

「ねぇみっちゃん。うちの学校で赤いパーカー着てる男子、誰か知ってる?」

「知らないけど、なんで? あ、もしかして一目惚れしたけど名前が分かんない的な?」


 リスのようにタマゴサンドを口いっぱいに頬張りながら、恋バナ好きなみっちゃんは目をキラキラと輝かせる。話題をふったのはわたしだけど、食事中にお話をするなんて行儀の悪いことは見逃せない。


 お話はちゃんと飲み込んでからと伝えるようにみっちゃんの水筒を差し出せば、コクコクとうなずいたみっちゃんはモゴモゴと口を動かしてから受け取った水筒を傾かせた。

真上近くまで持ち上げた水筒からお茶を飲み干す勢いだ。そんなに急がなくてもいいのに。ぷはぁとひと息ついたみっちゃんは、サンドイッチの代わりにわたしの話に食いついた。


「アコの初恋なら協力するよ!」

 パンのカスをちゃちゃちゃっと落とすとわたしの手をぎゅっと握りしめる。

両手から伝わってくるみっちゃんの意気込みはなんともありがたいもので、同時に頼もしいものでもある。お行儀は悪くともみっちゃんはわたしの自慢の友だちなのだ。だから本当に初恋を迎えた時にはぜひともお手伝いをしてほしいところだ。


 もちろんわたしだって、今まで通り、みっちゃんが新たな恋を見つけた時は全力でお手伝いをするつもりだ。とはいえ、行動派なみっちゃんはわたしが手伝うよりも先にアタックを開始するからあんまり手伝えてる気はしないけど……。


って、今はそういう話じゃないのだ。


「ちがうよ。ほら、わたし昨日学校休んじゃったじゃん?」

「うん」

「実は一昨日の帰りにね、駅で具合悪くなってホームのベンチで座って休んでたの。そしたら通りがかりの人がパーカー貸してくれて……。一応お礼は言えたけど、名前を聞くところまでは頭回んなくて」

「だから名前の分からないパーカーの持ちぬしを探している、と。でもさ、探すにしても駅を使う人ってうちの学校だけでも結構な人数いるよ。そんな簡単に見つかるかな? 顔わかる?」

「わかんない……。けど、うちの制服着てたからうちの生徒なのは間違いないよ!」


 悪く言えば、同じ駅の利用者で、その上同じ学校に通っている男子生徒が赤いパーカーを貸してくれたってことしか分からないけれど。


それでもみっちゃんは「それだけ分かれば十分でしょ!」と手をたたく。


「ごはん食べたらほかの子にも聞いてみようよ。赤いパーカーって結構目立つし。アコ、そのパーカー今日持ってきてる?」

「いつ会えるか分かんないからちゃんと持ってきてる!」

「じゃあ早く食べて聞きこみ開始しよ~」


 わたしよりもずっと頼もしいみっちゃんは再びリス化してサンドイッチを平らげていく。みっちゃんがこんなにやる気になってくれているんだもん。わたしも頑張らなくっちゃ。みっちゃんほど早くはないけれど、わたしもいつもよりも早くおはしを動かしてお弁当を空にしていく。




 そしてさっそく聞き込み調査を開始したんだけど――




「みっちゃん、今日はもう撤退しよう? 今度一人でちゃんと返却しにくるから」

「え、でもこういうのって早く返した方がよくない?」

「そうだけど!」


『赤いパーカーの男子生徒を知らない?』

 そう尋ね歩いていると返ってくる答えはいつだってたった一人の人物を指していた。


 三年生の円城えんじょう先輩。


 聞き間違いであってほしいと思いながらほかの子にも聞いたけど、答えは変わらなかった。間違えたら失礼だと、遠くから耳をそばだててはみたものの、聞こえた声はあの日聞いた声によく似ていた。十中八九、彼で間違いないだろう。


だからさっさと返せればいいのだが、わたしには男女問わず色んな人たちに囲まれているあの先輩に突撃する自信はない。


 いや、みっちゃんの付き添いなしで後日あらためて返しに行くのにも精神メンタルをゴリッゴリにすりへらさないと無理だけど!


 でもあの空間に、コミュ力のかたまりであるみっちゃんは相応しくても、窓際読書系女子のわたしには場違いもいいところだ。



 あの中に行くくらいだったら『柏木かしわぎ、あの円城えんじょう先輩に告白こくはくしたんだって。鏡見てから出直して来いよって感じだよね』と言われた方がマシである。



 もちろんキラキラしている先輩に告白なんてそんな恐れ多いことはしないけど。

というかそもそも相手が円城えんじょう先輩だって分かってたら借りたりしなかった。風邪の寒気なんて気合でどうにかできなかったのか、って一昨日の自分を殴りたいくらい!


 百面相ひゃくめんそうをくり返すわたしをみっちゃんは不思議ふしぎそうに眺めていた。けれど「もう少しで昼休み終わっちゃうね」と呟くと半分だけ開いたドアをガラっと開いて顔を出した。


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