作詞・2
絵描きになりたかったのだろう だけど目が見えなかった母
だから歌手を目指したのだろう だけど耳も失った母
次は何になれば良いのだろう
彼は売れない小説家 彼のファンは恋人だけ
貧しくたって彼の物語があれば彼女は幸せだった
過労で倒れた彼女の顔はとても綺麗に見えたんだ
あなたはこんな世界を嫌うだろうか
好きなあの人に「会いたい」と あの子はケータイを握った
気持ちが強くなる程に あの人の返事は途絶えていく
フライパンには卵が一つ 「お母さん 喜ぶかな」
黒い煙を上げるキッチンで 我が子を見る母は泣いていた
私はこんな世界も忘れるだろうか
あの子へ会いに走るあの人は 返事を待つあの子の痛みを知らない
母の涙が愛しさなのだと 自分を責める子どもは知らない
あなたが思っているより この世界は優しいよ
あなたが思っているより この世界は簡単だよ
この世はそんなに甘くないけど 逃げ出せない程 辛くもないよ
踏み止まろうが立ち去ろうが あなたが伸ばした手はきっと
男が盗んだ果物は飢えに苦しむ子どもの小さなお腹を満たした
そうして育った優しさを肯定するのはきっと容易いこと
盲目のおばあさんに少年は昨日見た花火を語る
大人たちが彼をたしなめた時 おばあさんはとても寂しかった
誰でもこんな世界は変えたがるだろうか
優しさでさえ人を傷つけるくらいには この世は優しくできている
あなたが悲しむその理由も 案外憎めないかもしれない
あなたが思っているように この世界は汚れているよ
あなたが思っているように その汚れはとても美しいよ
この世はそんなに変わらないけど 飽き飽きする程 真っ白じゃないよ
他意だろうが悪意だろうが あなたが隠した手はいずれ
救われない 報われない 認められない でも終わらない
失って 奪われて 無駄になってでも続けたんだよ
散々もう嫌だって泣いたのに諦めきれないあなたは
きっと誰よりも分かっているよ
好きな子が自分以外に恋をした どんな手を使ってでも振り向いてほしかった
醜いのは分かっている それでも幸せになりたいだけだって信じてもらえるかな
あなたはこんな世界を嫌うだろうか
私が思っているのは あなたは綺麗だってこと
私が思っているのは あなたに会いたいってこと
今が幸せなんて言いたくないけど じゃあどうすれば良かったのかな
あなたがくれた時間は あんなにも綺麗だったんだ
あなたは何を思っているの 知らないままの子どもたち
あなたは何を思っているの 叶わず終わった大人たち
全部全部美しい 全部全部泥だらけ
息をしようが止めようが あなたが流した涙も
いつか作った傷痕も ほら 今も消えずにいてくれているよ
『綺麗』




