作詞・16
知らない人が死んだの 君はそう言って泣き出したよ
その涙を止める方法は この世界には一つもないんだ
誰かの悲しみに浸れば 自分は真面な奴と思えた
売れ残ったヒットソング 過去の栄光が恨めしいよ
気の利いた皮肉が持ち上げられていくこの世で
惨めに埋もれていく真っ直ぐな言葉を
心配なんかしていないよ 君はどこでだってやっていけるよ
出会えなかったはずの君と居られた今が手をすり抜けて過ぎ去って
不安になっていた心に 一粒の優しさが零れて溶けて
その一瞬だけでもう良いやって思わせてくれた君を忘れないように
知らない人が生きていたの 君はそう言って微笑んだよ
顔も名前も知らない人の 知らない汗水に何度も救われた
君が安心して暮らせる世界が僕にとっての幸せで
その時君の隣に居るのが 僕じゃなくても良いから
人を殺した人が連日テレビに映る世間で
真面目に生き続ける人を見つけてよ
昨日みたいな一日で 退屈に抱かれて抜け出せなくて
一言だけのありがとうで何千年だって生きられそうだ
昨日みたいな風が吹いて 明日もこんななら良いなって
他人事の悲しい話にどうしてこうも涙させられるの
誇ってたって良いだろう 欲しいものもままならない現実で
不器用に歩幅を合わせて 君と歩いた夕日を宝箱へ
救われたくなんかないよ 身勝手な優しさを振り撒かないで
報われたくて仕方ないよ 頑張ることを諦めさせないで
出会ったこともない神様が信じ崇められる世界で
確かに居るはずの僕達は決して裏切らないと誓えますか
「辛くてもあなたと居られる世界が私にとっての幸せで」
君は寂しそうに笑ってみせるから僕は思わず泣きそうになって
幸せの形は人それぞれで 手を繋げるとは限らなくて
だからせめて僕は願うよ 決して叶わない素敵な夢を
安心して暮らせる世界を 君と居続けられる世界を
知らない人と出会ったの 君はそう言って笑って泣いたよ
それが何よりも嬉しくて 出会わなかった過去に手を振った
『君』