作詞・11
今日という日に花束を 全ての人に祝福を
これまで零れた涙が 熾した炎は置いていくよ
人と目を合わせたくないからさ ずっと下を見て歩いていたよ
何にも知らないふりをして 誰にも気づかれないようにして
そんな間抜けな僕の頭を 鳩が虎視眈々と睨んでいた
こんな目に遭うのは懲り懲りだ これからは上を見ることにするよ
夜のような泥の中 宇宙みたいな波の中
息吐くことも許されず 何を歌えば良かったの
嵐に悪意は無かったよ 恐れはこっちの都合だよ
それでも奪われたんだよ それは皆同じだったよ
無力にもがいたあの日の遠くに佇む君の顔
空に向かって叫んでいた 勇ましくて救われた気がしたよ
変わらない日々を誰かに 壊してほしかったんだよ
振り下ろされた槌の音は 誰も彼も見境なく
今更みたいに呆けて 勝手に死んだ愛しい人たち
反省なんかしたくないよ 残された命を謳歌するよ
飛べない鳥もいるんだよ 吠えない虎もいるんだよ
歩けない人もいるんだよ そんなの関係ないんだよ
確かに君は傷ついたよ けど隣に誰かもいただろう
それなら一人じゃないだろう 何にも嬉しくないけど
乾き始めた瞳に映る両の手にはゴミばかり
すがるものも多くないから 今だけは温くて仕方なかった
波に呑まれて泡になった あの人は何も悪くないよ
火を噴いて流れ去った あの街はどこにもいないよ
今日という日に花束を 全ての人に祝福を
報われたはずもないのに そんなことを言えるわけもないよ
それでも僕が今流したこの雫を無駄にしてやるものか
高台から街を眺めていた 見る間に崩れていく様を
終わることが美しいなら 残された僕も連れて行ってよ
それでも奪われたけれど 守ったものだってあったろう
その手に残ったのがゴミだろうと それこそが君がいる証明だ
今日という日に花束を 全ての人に祝福を
僕と出会うことのない君だ
今日という日に花束を 全ての人に祝福を
僕が知ることのない君だ
『波』