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1.最近のミゼール伯爵家の朝
「エミリー、早くしなさい!もう行くわよ。」
「リリスお姉さま待ってー!あと5分・・・いえ、3分待ってー!!」
「待ちません。」
「1分でも良いからぁーっ!!!」
屋敷に響く2人の女性の声。
最近、毎日同じやり取りが2人の間で繰り広げられている。
玄関ホールには、既に通学の準備を終え、いつでも出発できる状態の姉リリスと彼女の2つ下の弟ジョンがいる。
「はぁ。。。エミリーは、『今日も』ですか。姉さん、出発しちゃいませんか?」
「エミリーったら。。。そうね、遅刻しては元も子もないし。行っちゃいましょうか、ジョン。」
2人は、呆れた表情で互いに顔を見合わせ、玄関の扉に向かって歩き出した。
「エミリー、ジョンと先に行ってるわね。」
「待ってってばーっ!リリスお姉さまとジョンお兄さまの薄情者ーっっ!!」
ウルフォレスト王国ミゼール領。
200年程前までは、『ミゼール公国』として存在していたが、今はウルフォレスト王国内にある一つの領である。
爵位は、伯爵。
王国内の貴族でありながら、『永世中立』で政治等には一切関与しないという立場をとるおかしな一族である。