表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

不老の姉妹たちの旅物語

転生者よ、契約せよ。2 『現代日本の高校で』

作者: Soryi

あらすじにも書きましたが、こちらの作品は作者の別作品「転生者よ、契約せよ。」の続編にあたる作品となります。

19/2/2 1:43 少し修正しました。詳しい修正箇所はあとがきで。

7/27 まとめ版の方を改稿。こちらは旧バージョンのまま残してありますので、まとめの方をお読みください。

日本に転移して来たクーとリアは、しばらく遊んだ後、クーの提案で高校に通ってみる事にしました。

そこで出会ったのは――

*********

担任が教室に入ってくる。もう読書タイムは終了か。この男にしては来るのが早かったな。

「えー、突然だが、今日からこのクラスに転校生が来る事になった」

と担任が言うが、真新しい机と椅子が2つ置いてある時点で、突然とは言えないというか、皆察せていると思うのだが…。


担任のそのセリフを合図としてか、ドアが開き、2人の女の子が入って来た。

先に入って来たのは、オーロラのような、不思議な色合いをした髪の、整い過ぎて人形めいた印象を受けるほどの美貌の少女。

彼女に守られるようにして後から入って来たのは、炎のような鮮やかな赤色の髪の、こちらも中々に整った顔立ちの少女。


「アンリーア・ローヴァーです。クーが通いたがってたから高校に入学する事にしただけで、別によろしくしなくとも結構です」

「リア姉さんったら、そんな事言わなくも良いのに……。あ、私はクーアティア・ローヴァー、リア姉さんとは義理の姉妹の関係にあります。どうぞアティアと呼んで下さいね」

そっけなく話した美貌の少女がアンリーアさんで、ニコニコとしている可愛らしい少女がアティアさん。


「あー、2人はあっちの席に座ってくれるか?」

担任が示したのは、窓際の最後列という良いポジションにある私の席の後ろに最近設置された新しい机と椅子。

ああうん、やっぱりそうなるよな…。クラスメートの羨望の視線がチクチクと刺さる。


***


アティアさんとアンリーアさんが転入してきてから数日。


「アティアさん!お、お友達に…」

「お前は不合格。クーの友達になりたいなら私を認めさせてからにしなさい」

「私もリア姉さんが認めた人以外は関わる気は無いから、ちょっと申し訳ないけど、お断りします」

「ぐっ…」

またか…。アティアさんの「お友達」の座を目指す男共がアンリーアさんに一刀両断させられている光景は最早日常に近い。

どうやらアンリーアさんと仲良くなりたいがために、彼女にそれはそれは大事にされているアティアさんの友達になり、好感度を稼ぎたいと考えて近づく男子が多いようだ。

近くで騒がれても読書の邪魔だしな…。うん。

「まずはアンリーアさん目当てでアティアさんに近寄るのを止めたらどうだ?」

「ばっ!」

顔を真っ赤にして否定の姿勢を見せる男子。いや、判り易いし言い訳は無理だろ。

「アンリーアさんは、大事な大事な妹を、姉の美貌目当ての雑魚と関わらせるような薄い愛情の持ち主じゃあ無いと思うのでね。別の方法でアプローチするのをオススメするよ」

彼が何か喋る前にと畳み掛けるように口を出す。ちょっと毒が混ざったのは、まあ、寛大な目で見てくれるとありがたい。

「そうですね。私目当ての醜い感情丸出しのゴミを妹の友人にさせるようなヘマはしません」

アンリーアさんも怒りが溜まっていたようで、絶対零度というべき冷たい声音で男共に告げる。


男子どもがとぼとぼと去り、私は満足して読書に戻ろうと一度閉じた本を開き――

「あなた、うちの妹の友人になりませんか?」

目が文字を追い始める前にアンリーアさんが話し掛けてきた。

えーと、気のせいでなければ、私がアティアさんの友人にスカウトされてる、のか?

「…はい?」

思わず出た疑問の声に、アンリーアさんは何故か満足げに頷く。嫌な予感がする。

「直ぐで了承してくれるなんて、嬉しいじゃないですか」

「今のは困惑の声なのですが」

「あら、そうでした?まあ、それはどうでもいいです。友人、なってくれますよね?」

なんか寒気が。ニッコリ笑ってる顔なのに、目が笑ってなくて怖いんだが。

「リア姉さん、無理矢理は止めて、ね?」

アティアさんがアンリーアさんを宥めに走ってくれた。うーむ…。

よし。

「あの、アティアさんは私の読書の邪魔を頻繁にするような方では無いと思いますし、見た所趣味が合いそうですからね。お姉さんのお墨付きがあるなら、友人になってみたいと思ってたんです」

「本当ですか!?やったー!」

両手を上げて歓喜の声を上げるアティアさん。

「改めて。私は斉藤さいとう説子せつこ。クーアティアさん、私と友人になってくれませんか?」

「はい! 説子さんですね。私の事はアティアと呼び捨てにしていただいて結構ですよ。それと、敬語は止めてくれませんか?」

上目遣いで伺うように言うのは卑怯だろう…。まあでも、確かに友人同士なのに敬語は少し不自然か。

「…了解した、アティア。私はこんな女らしくない喋り方だが、良いのか?」

「カッコイイです、説子さん!」

「そうか?」

「はい!」

うん、そのキラキラした眼は少し眩しい。


そうして友人同士になった私たちは、高校卒業までずっと、クラスも同じ、席順も位置が変わる事はあっても順序――私がアティアの前で、アティアの隣にはリアさんの席があるのは変わらず、斜め後ろという良い位置をキープし続ける私にリアさんに思いを寄せる者たちは恨めしげな視線を送っていたが、何故か私の隣にそのような者の席が回ってくる事は無かったのであった。

アンリーアさんを愛称で呼ぶようになってからはますます嫉妬の感情を向けられるようになったのだけれど、ある時からぱったりとそういう事が無くなった。結局原因が解らず、現在になっても時折思い出しては首を捻っている。


**

(愛称呼びの切っ掛け)

その日は確か、2人お気に入りのシリーズの最新刊について熱く語り合った後だったと思う。

「あなたに私を愛称で呼ぶ事を許しましょう」

自分の席で私たちの雑談を聞いていたアンリーアさんが、突然言った。

「珍しい。リア姉さんが愛称呼びを認める人なんて、何百年振りかな?」

「えーと、アティア。アンリーアさんは私にリアさんと呼んで欲しいと言う事で良いのか?」

「うん。説子以外に名前で呼ばれるとびっみょーに不機嫌になってるぐらいだしね」

「ああ、そういえばなんか雰囲気が違うな。最近アンリーアさんアンリーアさんって連呼されてたせいだったのか。リアさん、気付けなくて申し訳ないです」

「いいわ。私だってアティア以外の事で表情筋が動いてる気、しないもの。それより、私にだけ敬語になるのは止めてくれない?」

「わかった。これで良いだろうか」

「ええ」

なんというか、リアさんがやけに満足げな雰囲気だったのが印象に残っている。


**


高校を卒業した直後ぐらいに、アティアとリアさんの秘密を打ち明けられ、2人の妹として不老になった。

それからは、アティアをクーねぇ、リアさんをリアねぇ、と呼び始め、あっという間に数百年が経っていたのだが――

「説子、どうしたの?」

ふと我に返ると、クーねぇが心配そうに顔を覗き込んでいた。

「いや、ちょっと昔を思い出してね」

「あら、いつの話?」

「リアねぇをリアさん、と呼ぶようになった時の事だな。そういえば、ぽろっと何百年振り、なんてクーねぇが零してたが、なんか色々不思議な子、という認識だったし、気にも留めてなかったな…」

「「そうなの?」」

「リアねぇには怪しい言動は無かったが、顔が整い過ぎだし髪色が地球じゃ無さそうな色だったし、まあ、髪色が変なのはクーねぇもだけど、追加で偶に変な事――さっき話した数百年が云々とか、3年生の時に息を吹きかけただけに見えたのにランプの火が点いた所に遭遇した事もあったな、そういえば。まあ、そういう不思議現象を目の当たりにしてたのもあったからなぁ」

あの時は結構驚いた。

「ウソっ、見られてたの!?」

驚くクーねぇの横で、リアねぇが少し怪しい動きをしている。…今の話にリアねぇが挙動不審になるような所、あっただろうか?

「まあ、魔術師だった前世でもあんのかなー的な感じでテキトーに考えていたよ」

「そっかー…」

「的外れなようなそうでないような感じだったのは驚いたけどね」



「それにしても、あの世界に行くのは何年振りかしら」

「クーねぇの故郷だったか。リアねぇ、どの時代に行くつもりなんだ?」

「クーを連れ去ってから数年後を予定してるわ」

「へえ、そうなのか。騒ぎになってりしてないと良いな…」

「久しぶりに学院に行けるかしら?」

「魔法、私にも使えるようになるのか?」

「素質はあるはずよ」


「準備完了、っと。行くわよー」

「はーい」

「いよいよか…!」


***

クーとリアが出会ったのは、新たな姉妹。

ファンタジーが大好きな彼女は、アンリーアの心の防壁をすり抜け、2人目の家族となったようです。


おしまい


書ききれなかった設定コーナー

担任の教師:実は遅刻が日常茶飯事。偉い人が放り込んだだけで、いつも「早くクビになってニート生活を満喫したい…」と零している。やるきはゼロながらも授業自体はやってくれる(時間短い割りに教え方も上手い)ので、生徒の評価は案外良い。(主人公は遅れる程読書出来るし学力に支障出るほどの教え方じゃないし良いや、ってスタンス)

クーアティア:自己紹介の時に「アティアと呼んでくださいね」と言ったのは、クラスメートがクーと呼ぶ事にアンリーアが拒否反応を示したため。2人目の妹たる説子にはクー呼びを許してます。


19/2/2の修正箇所の詳細

・説子がリアの妹になり不老となったのを高校卒業直後に変更。

・性格上の都合での設定の変更に伴う描写の追加。

 リアとクーの見た目について、「リアって大事な家族が異世界人ですってあからさまに示すような見た目してるのにそのまま放って置くような性格してないよね?」という疑問が生まれまして、地球に居る時は見た目の偽装を掛けている、という設定に変更しました。リアは金髪緑瞳に色を変えただけ(つまり人外めいた美貌はそのまま)で、クーは明るい茶色の髪に青色の瞳のそこそこの美少女(実際はリアほどでなくても凄い美少女)になっているという設定です。説子には普通に本来の姿で見えています。


**

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

できれば評価、感想を送ってくれると作者は喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ