第一話 目覚め
瞼に、朝露のような雫が落ちた。
(どうやらベッドに寝かされている・・・?)
ぼんやりと意識を探る。
『おはよう』
女の子の声…?
ハッとして声の主を探す―
「うわあああっ!」
探すまでもなく、居た。目の前に。
顔が近い、白銀の長い髪の毛が頬を掠めた。
年は、15、6歳くらいだろうか、自分と同じくらいの年頃だな、と
認識したのも束の間、彼女が人ならざる者という事が直ぐに分かった。
白銀の片翼の翼…
思わず息をのんだが不思議とすぐに言葉が出た。
「美しい・・・」
ステンドグラスの背景にキラキラと反射する光の中いっそう輝いて見えた
目の前の美しい少女。
『そんな事、久しぶりに言われた・・・ありがと。』
彼女は儚そうに微笑んで彼の手を取るとこう言った。
『我の名前は、ヒノ。』
「お、俺の名前は…七瀬」
若干キョドりながらも思わず自己紹介してしまった。
『七瀬様、先程は大変ご無礼を致しました。何分、時間がなかったもので・・・』
静かに目を伏せて本当に申し訳なさそうに言うものだから何も言えなくなってしまった。
あの無理やり感はいずこへと思いながらも、自らの記憶を辿る。
「俺はなんでこんな所に?」
(というか俺、死んだよな?死ぬ間際に声が聞こえて…それで…頭の中がぐちゃぐちゃだ。
一体何が起きた??)
七瀬の葛藤を察したのかヒノが口を開いた。
『ここは魂の集う場所、業の法則に伴なって魂を秤り、審判と転生を行う場所。』
「・・・え?良く分からないけど俺は閻魔様の目の前に居るってこと?」
『七瀬様の世界で言えばそれが一番近いのかもしれませんね。』
「あ、そうなんだ・・・(冗談だったのに・・・俺は裁かれるのか?)」
『大丈夫です。裁きはしませんよ。』
「・・・今俺の心読んだりした?」
『いえ、七瀬様が今、呟かれてましたので。』
どうやら声に出していたらしい。恥ずかしい。
しかもよく見てみたら俺、全裸。
(勝手に連れてきたならアフターケアちゃんとしてよ!
やだもう、やだー!!)
「・・・すみません、話なら何でも聞くので、服ください。」
羞恥心に涙目になりながら俺は言った。
彼女もハッとして思わず顔を背けたのは気のせいだと思いたい今日この頃であった。