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9 デートを支配する者

ルルムムとのデートが開始される……

 俺は改めてルルムムを見ると、意外と可愛らしい恰好をしている。

 白いワンピースと上着には赤いジャケット、緑色の帽子、胸には青色のペンダントをつけていた。

 そしてほっそりとした足と……あれ?


「ふふ~ん、驚いたか。私の変身は後二つ残っているのよ」


 ルルムムは、何処かで聞いた事のあるセリフを言い足を見せてくる。


「その姿なら怪物女だとは思われないだろう。じゃあ早く行くぞ!」


 俺はそう声を掛け、町へ出ようとするが。


「誰が怪物女だって? 私が怪物かどうか、アツシの体をサンドバックにして試してあげようか?」


 ルルムムは言葉に反応して、拳を打ち出す仕草をしている。

 此奴と戦っても勝ち目なんてない。

 そんな事をされるより、デートに行った方が良いだろう。


「断る! これからお前とデートだからな! さあ俺に付いて来るがいい!」


「何でそんなに偉そうなのよ。もう良いから早く終わらせましょう」


 俺とルルムムは、まだまだ険悪なまま、町へと向かった。

 始めて来る町だし、行く当てはない。

 適当に町の商店街を歩き、プラプラとウィンドショッピングをしていた。

 食料や料理も売り出され、辺りには肉の焼ける良い臭いが漂っている。

 屋台で肉を焼いて売っているようだ。

 あれは日本の焼き鳥の様な物だろうか?

 何かの肉を串に刺し焼いている。


「ルルムム、少し待っていてくれ。お前に肉を御馳走してやろう」


 俺はその店に向かおうとした。


「何を企んでいるの? 普通に肉を買って来るだけじゃないわよね?」


 ルルムムは俺の行動を凄く怪しんでいる。


「良いからそこで待っていろ。毒なんて入れないから心配するな」


 俺はルルムムの返事を聞かず、一人で肉の屋台へと向かった。


「おじさんその肉二つくれ」


 俺は店主へと話しかける。


「ありがとよ、兄ちゃんは彼女とデートかい? この肉は精力も付くからデートにもピッタリだよ」


「ハッハッハ、そんなんじゃあないですよ」


 肉屋のおじさんが揶揄ってくるが、本当にそんなんじゃない。

 俺は買った肉の片方に、懐に用意していたスパイシーな粉末をふんだんに掛けていた。


「うぐッ!」


 かけただけでも目が痛い。

 このぐらいの事では許してはやらないが、軽いジャブって所だ。

 俺は自分の分をその場で食い、もう片方をルルムムの元へと持って行った。


「さあ味わえ。これはとても美味かったぞ」


 そのあとに俺だけはと続く。


「自分一人で食べて来たの? それになんか赤いわね」


 ルルムムは、肉の赤さを気にしているらしい。


「気にするな、ただの香辛料だろう。まあ早く食え」


「あっそ。変なことしていたら許さないからね」


 ルルムムは買って来た肉をゆっくりと口に運び、咀嚼してを味わっている。


「あ、これすっごく美味しい。私これ気に入ったわ、もう一本買って来て」


 あれだけ唐辛子をふんだんに掛けたというのに、ルルムムは平気のようだ。

 どんだけ辛党なんだこいつ。

 俺はもう一度肉屋に走った。


「チィッ、待ってろ、次はもっと辛くしてやる! おじさんもう一本だ!」


 俺は後ろに居るルルムムをちらりと見て、もう一度肉を買っている。


「毎度、だがあんまり食い過ぎると大変な事になっちまうぞ」


 俺はおじさんの忠告も聞くことなく、隠す気も無いぐらいに、赤い香辛料を串に山盛りに乗せた。

 零れそうになるのをバランスをとりながら、ルルムムの下へそれを持って行く。


「これ完全に乗せてるよね? 店前で思いっきり乗せてるの見えてたし」


 ルルムムは、俺の計画に気付いたらしい。

 あまりにあからさまだったようだ。


「ち、違うぞ。良いから早く食べろよ、食材が勿体ないだろう!」


 俺はあがくように肉の串を差し出すのだが。


「そうね、勿体ないわね。じゃああんたが食べなさい!」


 無理やりルルムムに口を開けさせられ、真っ赤になった肉を口に放りこまれてしまった。


「ぐぼはああああああああ! うごへぇ、辛い辛い辛い辛い! ぐほ、げほ、み、水を、水をおおおお!」


 俺が辛さを味わっていると、ルルムムは口をハフハフとさせ水を飲んでいる。

 さっきのは我慢してやがったのか!


「お前! 騙していたのか!」


「はぁあ? 復讐しようって奴に正直になれるわけないじゃないの!」


 俺はルルムムに顔を近づけ睨む。

 だが何故か、何故なんだろう?

 ルルムムって可愛くないか?


 あれ、なんだこれ、さっきまで怒っていたはずなのに。

 何故か見つめ合い、そのまま口を近づけて……。


「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」」


 俺とルルムムは、その行動を必死で耐えた。


「何をしようとしているの!」


「お、お前こそ何を!」


 俺達は、口づけのギリギリ手前で留まった。

 さっきの肉、精力が付くと言っていたけど、これってスッポンとかそういう感じの、いやもっと強力な媚薬とかなんじゃ……。


 あの肉屋の、のぼり旗を見るが、美味いとかしか書いて無い。

 ? あれは、一本旗が倒れて店の後ろで見えなくなっている。


 心のざわめきを抑えつつゆっくりと近づいて行くと、そこには『超強力精力剤、一瞬にして再び恋に落ちる媚薬』っと書いてある。

 おい、こんな物を後ろに倒してたら駄目だろう!


「ア、アツシィ、わ、私もう、はぁはぁ……」


 ルルムムは座り込み、自分の胸を揉みだしている。

 い、いかんこんな所で。


 まだ理性の残っている俺は、ルルムムを抱きかかえて宮殿まで急いだ。

 なんとかルルムムの自室に閉じ込めると、俺は思いっきりガーブルを呼んだ。


「ガーブル、緊急事態だ! は、早く来てくれガーブル!」


 俺の声は宮殿野中で響き、それを聴きつけたガーブルと、女王の護衛達が俺の元へと走ってやって来た。


「どうしたアツシ! 敵か!」


 ガーブルは剣を抜いて、辺りを警戒している。


「ガーブル以外の他の奴等は戻ってくれ。別に敵が来たわけじゃないんだ」


 俺はなるべく穏便に済ましてやろうと、ガーブルだけを残すように提案した。


「分かった、お前達戻って良いぞ」


 ガーブルの指令で、他の者達は自分の持ち場に戻って行く。


「アツシ、それで如何したんだ?」


「じ、実は……」


 意外と心配してくれるガーブルに、俺はありのままに起きた事を説明した。


「お前、ストリーと付き合ってるんじゃないのか? 何故ルルムムとデートなんてしておるんだ」


 ガーブルは当然の疑問を言って来るが。


「いや、色々あってそうなんったんだ。特に好きだとかそういう事じゃない」


 俺は適当に誤魔化した。


「なるほど、つまり体にしか興味が無かったと。まあ俺も若い頃は浮気もしたからな。この事はストリーには内緒にしておいてやる」


 ガーブルが話の分かる奴で良かった。

 他の奴等に見つかったらどうなっていた事か。


「仕方ないのう、じゃあ俺がルルムムを沈めてくるからちょっと待っておれ」


 ガーブルはガチャガチャと鎧を外そうとして、更にその下の……。


「おい待て、何を、ナニをする気なんだ!」


 俺はその行動をとめた。


「当然、沈めると言ったらあれしかないだろう? まあ俺に任せておけ、もしかしたらストリーの妹が出来るかもしれんがな。ハハハ!」


 ガーブルはルルムムを襲う気らしい。


「ヤメロ、いくら復讐したくても流石にそこまでさせる気はない」


 俺はガーブルを必死に引き止めた。

 こいつに相談したのは間違いだったようだ。

 まさか自分の部下にまで手を出す奴だとは思わなかったぞ!


 俺はガーブルが動かないように、後から体を引っ掴む。

 だが俺の方もヤヴァイ。

 もしガーブルのバックでそうなってしまったなら、俺の今後が心配だ。


「ア、アツシ、何か妙な物が俺のケツに当たっておるのだが……」


 俺の下半身の兄弟も、相当元気に活動している。

 だから。


「き、気にするな。ただの生理現象だ」


 そう言い訳するしかなかった


「……お、お前、もしや俺の体に欲情して……待て! お前にはストリーが居るだろう! は、離せ! 俺にはそんな趣味は無い!」


 ガーブルが凄い勘違いをしている。

 これは肉の効果であって、決して、したくてしている訳ではない!

 しかもそんな暴れられると。


「ガーブル待て、そんなに暴れたら俺の股間が! う、動くんじゃない!」


 俺の兄弟は、行き場を求めている。


「や、止めろ、離せ、離せぇ!」


 ガーブルは更に抵抗して暴れると。


「「あっ!」」


 俺の兄弟の頭が、何か大変な事になってしまった。

 ガーブルのケツにもその痕跡が……。


「アツシ、この事は誰にも言うんじゃないぞ」


 ガーブルは俺をギンと睨みつけている。


「お前も言うなよ」


 俺もそれに睨み返す。


「「もし言ったら……お前を殺す!」」


 その言葉を同時に言い放つと、ガーブルはケツを抑えながら自分の部屋へ帰って行く。

 ズボン越しだとはいえ、気持ち悪い事をしてしまった。

 そのおかげ……おかげって言うのも何か嫌だが、俺の疼きは収まった。


 だがもし誰かこの部屋に来たら、ルルムムの貞操が危ない。

 仕方なく俺は前を隠しながら、ルルムムの部屋の前で一夜を明かした。

 夜が明けると俺の体には毛布が掛けられていた。


 ルルムムじゃないよな?

 まさかストリーが?

 ……それともまさかガーブルが……いやいや無いわ。


 もう流石に大丈夫だよな?

 俺は自分の部屋に戻り、顔を洗おうと鏡を見ると、頬にキスマークが一つ残っている。


 キスマークがあるという事はやはりストリーか、一瞬ガーブルの顔が浮かび、俺は頭をブンブンと振り回した。


タナカアツシ(異界から来た男)     ルルムム  (王国、探索班)

ガーブル   (王国、親衛隊)


次回→続き予定

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