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小さく大きな物語20

リーファの案内で精霊の森から脱出した俺達は、リーファと別れてバールを捨てに別の町へと向かって行く。その道中にバールの話を暇つぶしがてら聞いてみるが、突拍子もない話ばかりで俺達は興味を失った。その誰も聞いていない長い話が続き、終わった頃には町が見えて来ていた。ホーリーゲートの町と呼ばれたその町は、今は希望の泥の町と呼ばれ、豊な作物が育つ町だった。中心にある大きな遺跡の中心にバールを置き去りにして宿を探したのだった……

 朝。

 俺達は町から出ようと準備をして馬車の中に荷物を積みこもうとしたのだが、何故か馬車の中には、自由になったあのバールがくつろいでいた。

 縛っていたロープは解かれ、服装もちゃんとしている。

 こんな男を助けるとは、顔が良かったからか?


 これだからイケメンは嫌なのだ。

 顔だけでピンチを乗り越えるから。

 しかしわざわざここに戻って来るとは、俺達に復讐でもしようというのだろうか?

 俺がそんな事を考えてるとは知らず、バールがその軽い口を開く。


「お、やっと来たのか。待ちくたびれていたぞ。俺が此処に居る事を驚いていると思うが、まあその事は気にしないでくれ。実は皆にとても良い知らせがある。喜んでくれ。このバールさんが君達の旅のお供をしてあげよう!」


 旅のお供だって?

 確かにこの男はちゃんと戦えば強いだろう。

 防御力も強く、仲間になれば頼もしいのかもしれない。

 だから俺達はこう言ってやった。


「いりません」


「うん、いらない」


「いらんな」


 俺、リッド、ストリアと続き。


「子供を預かってる身として、エロ男を仲間にすることはしないわ」


 リーゼさんも否定した。


「もうあの事は忘れてください。俺もちょっとやり過ぎだったかな~とかちょっと思っていたので。今の俺はもう清らかな乙女が如く、澄み切った心と体で超健康体なんだ。それにもう痛いのは嫌なのでもうしないです!」


 どう考えても嘘くさい。

 何か面倒になる前に、追い払ってしまおう。

 この間俺の剣が利くことは証明済みだ。

 やはり試しておいてよかったと、俺は自分の剣を抜き放った。


「俺達にはお前は必要ないんで、帰らないのならまた戦うしかないな!」


「いやいや俺は戦わないよ。じゃあだったら、シャインちゃんの住んでる場所を教えてくれないか? 久しぶりに皆に愛にイキたいんだ! 俺にだってイク権利ぐらいはあるだろう!」


「会いに?」


「そう愛に!」


 何だろう、なんか微妙にイントネーションが違っている気がする。

 皆が住んでいる場所を教えてやってもいいけど、今からあの場所に行ったら危険な目に遭う可能性が高いのだ。

 こいつがどれ程のエロ魔人だとしても、俺達の事情に巻き込みたくはない。

 適当に別の場所を教えて追い払うとしよう。


「え~っと村の場所は……」


 俺がちょっと考えてる間に、リッドが答えよとしていた。


「まあ待てリッド、村の場所は俺が教えてやるからさ。バール、村はこの国の南方面だから、是非行ってみるといい。俺達はマリア―ドに向かうから此処でお別れだ。さあ、はよ行け!」


「……で、村の名前は?」


「ゴードンの村だ」


 ゴードンとは、俺の家の三軒隣にある家の、今年八十六になるお爺ちゃんの名前だ。

 特に思いつかなかったので、それを言ってしまった。


「俺は結構この国に居るが、そんな村があるとは聞いた事がないんだが?」


「それは仕方のないことだ。皆が居る場所は隠れ里みたいなものだからな。この地図を見ろ。この辺りの岩にスイッチがあって、村の扉が開かれる仕組みになっているんだ。だがこの事は誰にも言うんじゃないぞ? 村が他の誰かに見つかったら困るからな」


「隠れ里か……なる程、確かにそれなら目立たずに暮らせるかも……教えてくれてありがとうレティ、じゃあ早速向かうぞ! さあ連れて行ってくれ!」


「一人で行け!」


 俺はバールを引きずり下ろし、蹴り飛ばした。


「ふう、全く暴力的に育ったものだ。前は……前は……? いや、特に笑わないし泣かない不愛想な子だったな。……じゃあ俺はその村に行ってみるとしよう。皆、ここでお別れだ。生きてたらまた会おう。ストリアちゃんとリーゼちゃんも、今度会ったら俺の相手をしてくれ! きっと後悔しないから! じゃあな~!」


「私はレティ一筋なんだ! お前の様な奴は相手にしてやらん! さっさと消えろ!」


「夫とラブラブな私に言うものじゃないわ。もう来ないでくれる?」


 後からそんなセリフを言われ、バールが去って行った。

 たぶんあの男が死ぬことはないだろう。


「はぁ、やっと行ったな。じゃあ荷物を積んでこっちも出発するか」


「そうだねぇ、でも変な人だったね。あんな嘘に騙されるなんて」


「しッ、まだ近くに居るかもしれない、そのことはもう少し黙っとこうぜリッド」


「そっか、そうだね」


「じゃあサッサと積みこみましょう。気が変わって戻って来るかもしれないからね」


「私はあんなエロ男と同行するのは嫌だ。直ぐにこの町を離れるとしよう!」


「だな!」


 俺達は急いで荷物を積みこみ、村から出発したのだった。

 国境近くには町があるらしいけど、何故かリーゼさんんはその町には寄りたくないらしい。

 国境を抜けようと言っているのだが、そうも言っていられなくなる。

 魔物野襲撃に遭い、馬車の車輪にダメージが入ってしまったのだ。

 魔物自体は弱く軽く退治したが、このままでは進むのは無理だと遊宴の町に寄ることになってしまう。

 その町に入った俺達だが、その町に入って何故リーゼさんが嫌がったのか理由が分かった。

 道の真ん中だというのにキスしたり、胸を揉みだす様な奴が大量に居るのだ。

 正常な男の俺とリッドにとっては、目の毒と言っていい町だろう。


「いい、絶対馬車の外に出たら駄目よ。話しかけられても無視しなさい。いいわね!」


「お、おう!」


「分かったよ母さん」


「そうだぞレティ、外なんか見なくても、劣情したいなら私を見てればいいんだ」


「相変わらず面白い冗談だなストリア。まあ三人で雑談でもして暇でも潰すとしようか」


「そうだね。そうしようか」


 三人で話し始めるも、何故か外の景色が気になってしまった。何故か見てはいけないものを見つけてしまった気分になる。


「そこの君、今日は俺と一緒に過ごさないか?」


「そうね、じゃあ幾ら払ってくれるの?」


「か、金はないよ……」


「貧乏人は帰れ」


「そんな事言わないで! 一度だけでいいから!」


「消えろ貧乏人!」


 俺が見つけてしまったものとは、女の子達を必死で口説くも誰にも相手にされないバールの姿だった。

 どうせ村に向かう前に、一度この町に寄ろうとでも考えていたのだろう。

レティシャス(シャインの息子)ストリア(村娘)

リッド   (村人)     リーゼ (リッドの母ちゃん)

リーファ  (エルフの女)  バール (なんかエロい人)

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