31 猫の体は人とは違う
カーリーを倒した私達は、ご飯を食べに帰った。美味しい料理を食べるのだけど、お腹はいっぱいにはならない。お昼寝をしたシャーンを部屋に残し、私は前にご飯があった部屋へ行ってみた。扉には鍵が掛けられていたけど、私はそれを壊してお腹いっぱいになるのだけど、何時の間にか私の体は元の猫の物に変わってしまった。シャーンと喋れなくて寂しくなるけど、体を戻す方法は分からない。その夜眠った私は夢を見た。夢には天使様が現れ、これは盗みを働いた罰だと言った。今回だけは許された私だけど、戻る方法は教えられず、頑張れとだけ言われたのだ。どう頑張ればいいのだろう……
朝起きても、私の体は特に何の変化も見られなかった。
今の私は元々の猫の体である。
灰色の毛を下地に、黒のトラ柄模様の、顎からお腹にかけて白い毛があるのが私の体だ。
体は猫でも一応人の思考は残っているらしい。
「お早うモモ、お姉ちゃんはまだ帰ってないみたいだね……」
「にゃーん、にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!」
(シャーン、私はここにいるぞ!)
あれ、なんか口が良く動く。
頑張れば言葉が出る気がする?
「にゃーん、にゅあーん! にゃーーーん!」
(シャーン、シャーァン! シャー――ン!)
「ん~、お腹へったのかなぁ? もうすぐご飯も来ると思うよ。もうちょっと待っててね」
私はシャーンに体を持ち上げられ抱っこされた。
引き寄せられて、撫でられる。
それは気持ちいいのだけど、私はシャーンと喋りたいのだ。
「にゃにゃにゃにゃーん、にゃにゃんにゃん、にゃにゃんにゃん?」
(違うぞシャーン、私はご飯なんか、ご飯なんか?)
ん、ご飯?
今も凄くお腹が減っている。
私のお腹は鳴っている。
「私はご飯食べたいぞ!」
「わあっ、喋った!」
「あ、喋れた。シャーン、私だぞ!」
何故だろう、シャーンとは話したかったのだけど、まさか私はご飯の方が大事だとおもっているのか?
そんな気はないはずだ。
もちろんご飯は美味いが、シャーンの方が大事なはずなのに?
「え、お姉ちゃんなの? 何で猫の姿に? う~ん、可愛いからいいかなぁ」
「私は戻りたいぞ。美味しい物もいっぱい食べれるし、何処にでも行けるからな!」
カリカリや缶詰も美味いことは美味いのだが、人が食う物に比べると少し物足りないのだ。
味わい深いというか、なんだか良くわからないけど美味いのだ。
そして人の体で人の町に住んでいれば、相当に危険度は少ない。
ここにはあの臭いにおいを出す車という物もないし、ひかれる心配もしなくていいのだ。
「こっちもいいのになぁ」
「まてシャーン、ご飯が来たぞ!」
私達が話し合っていると、遠くから気配がして足音が聞こえる。
この足音と気配は、ダスクの物に間違いはない。
トレイに置かれた美味そうな匂いや、その鼓動までハッキリ感じる。
私の感覚も猫のものに戻っているらしい。
コツコツと足音が近づく度に美味しそうな匂いも近づいて来る。
「おい、飯を持って来てやったぞ。ちゃんと食え? ん? シャーン王子、もう一人はどうしたんです? いや、その猫は何処から持って来て……?」
この男、気配と姿が微妙に違う気がする。
何かがズレている感じが妙に気になる。
でもご飯を持って来てくれる男を敵にはしたくない。
このまま大人しくしているとしよう。
「私は私だぞ! 早くご飯を寄越すんだ!」
「おっわ、マジビックリした! 何で猫になってるんだよお前」
ビックリしたダスクは、トレイに乗ってる皿の中身をぶちまけてしまった。
パンはまだしも、スープやゼリー状のデザートなどがゴチャゴチャになりそうだ。
卵焼きもどこかに飛び散ってしまうだろう。
「ぎゃああああああああああああああ! ご飯がああああああああああ!」
私なら食べられる。
食べられるのだけど、落ちて混じったら味がどうなってしまうのか。
それが一番心配である。
そんな心配していると、この男が何かしらの動きを見せた。
ハッキリとは分からないが、何かしらの動きが有ったのは確かだ。
「おっと悪い、ビックリして落としちまったぜ」
落ちたはずのスープやパンが、落としたはずのトレイの皿の上に戻っていた。
やっぱり何かがおかしい。
この男、まさか青い奴等の仲間なんじゃないか?
シャーンに危ないことが起きないように、近づかないように見張るべきだろう。
このご飯を食べてから。
「何でそうなったんだよお前? 理由があるのか?」
「まずはご飯だ。ご飯を寄越せ!」
「ああ、はいはい。じゃあ食ったら話せよ」
ダスクにより下に置かれたトレイを、私は爪を出して引っ張るが、相当重くてガタガタと揺れてしまう。
この小さな体では運ぶのも無理がある。
食べる前に零れてしまいそうだ。
「僕がやるよ、お姉ちゃん」
見かねたシャーンが、私に手を貸してくれた。
トレイはテーブルの上にまで運ばれ、私はテーブルに飛び乗った。
『いただきま~す!』
小さくなっているから、お腹いっぱい食べられるのだが、道具が使えないからすごく食べづらい。
スープに顔を突っ込むと、体の重さで零れそうになってしまう。
ようやく舌を伸ばして掬い飲むも、味の感覚が変わっているのか、相当に塩ッ辛い。
まあ美味い事は美味いんだけど、あんまり飲むのはやめた方がいいだろう。
パンに齧りつくも、大きすぎて口には入らない。
シャーンに千切ってもらい、ようやく口に入る大変さである。
当たり前に出来ていた持つという行為が、とても重大なものなのだと私は気付いた。
動物の中にはものを持つ奴も、物を作る奴も居るけど、指一つを単独で動かせるものは少ない。
人がものを作り出し道具を扱えるのは、この機用な指先がなければできないのだ。
いくら頭がよくても、器用な指先がなくては何も作り出せなかっただろう。
自由に持って動かせる、指というものが素敵なものだ。
私はそんな事を思いながらご飯を食べ進め、最後はお腹いっぱいで満足できたのだが、私達の様子をずっと見つめていたのが部屋の外にいる奴だ。
凄く怪しいダスクという男だけど、鍵を持っているから普通に入って来れるはずである。
今部屋に入れば、シャーンに近づくのも用意だというのにそれをしない。
やっぱり敵ではないのだろうか?
「じゃあそろそろ教えてもらおうか? その姿はなんだ? 自分で変身できるのか?」
「違うぞ、これは天使様が罰をあたえたんだ。頑張れば戻れるらしいけど、やり方はわかんない」
「天使……様……ねぇ。わかった、俺はもう関わらないから、今後は別の奴が来る事になるだろう。じゃあな、元気でやれよ」
軽くそう言いダスクは去って行くのだが、昼になったらまたご飯を持って来るというおかしな男だ。
怪し過ぎて青い奴だと決めつけた私は、次部屋を出る機会で叩きのめしてやろうと考えるのだった。
モモ (天使に選ばれた猫)
シャーイーン (王国の王子)
ダスク (魔道研究所の職員)
次回→続き予定。
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