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6  そして訪れた刺客

天使の襲撃を防ぐ為にべノムとロッテはマルファーの家にお邪魔していた。

しかしそこに居たのは強烈な魔物だった…………

 天使の襲撃があると言われ、メギド様からの命を受けて新婚家庭に邪魔する事になったべノムとロッテ。

 そもそも兵士でもないグレモリアは、家で留守番をしていた。

 奴を一人にしてしまうのは心配しかないが、任務なので仕方がない。

 このマルファーの新築の家はかなりの大きさで造られ、探索班の拠点としても使うそうだ。

 それも我慢は出来るのだが……。


「マルファー子供は何人欲しいかしら? 私は何人でもいいのよ」


「まずは三人程作ってみましょうか。それで落ち着いたらまた何人か作りましょう。さあ寝室に行きましょうか」


「でもべノムさん達が見えているわよ?」


「気にする事はありません、今はこの愛を楽しみましょう」


「ええ、マルファー行きましょう、愛の巣へ」


 噂で聞いた事がある、これがバカップルって奴だろう。

 目の前でやられるとイラっと来るな、オイ。


「畜生あいつ等、目の前でイチャイチャと、ぶん殴ってやりたくなるぜ」


「べノム羨ましいの? なら私がしてあげよっか?」


「いらんわッ、そんな事よりちゃんと警戒しておけよ。どんな力があるか分からないんだからな」


「おっけー」


 この天使が来てしまったから、別の天使の襲撃が考えられるという。

 二人だけでは少し頼りないので、俺達が護衛として付く事になったのだが、新婚の家は魔物が住んでいる。

 普通の人では太刀打ち出来ないバカップルという魔物だ。


 ロッテと二人だけなのも心配ではある。

 キメラ退治をサボる訳にもいかず、精鋭として俺達が来たという訳だ。

 最悪四人で応援が来るまで戦わなければ駄目なのだが、あのバカップルを戦力に数えて良いのかと、それもまた心配だ。

 なんか心配なことしかないが、もうやるしかないだろう。


「さあ来てマルファー」


「ええ、行きますよシェルハユ」


 駄目だ、ここから丸聞こえじゃねーか。

 別の場所に行かねぇと、流石にロッテとこんな所に居て妙な気分になっても困る。


「おいロッテ、此処でマルファーの喘ぎ声なんて聞きたくはねぇだろ。別の場所に行くぞ」


「あ~そうよね、聞きたく無いわ。玄関の方に行ってみましょうよ」


 玄関は寝室から結構離れていて、流石にここまでは聞こえて来ない。

 もしここまで聞こえて来たら、家から脱出して外で寝なけりゃならなくなったが、何とかなったらしい。


 コンコンコンっとこの家の扉が叩かれた。

 別の部隊が戻って来たのか?

 ドアを叩く様な奴は居ないと思ったが。


「すみません、何方かいらっしゃいませんか? ちょっと聞きたい事があるんですけどねぇ」


 どうも聞いたことが無い声だ。

 俺の部下ではないとは思うが、王国から誰か来たのか?

 奥の二人は戦闘中で動けないだろうから、俺が対応するしかない。

 まあ、開けてみるしかないだろう。


「こんにちは、私はべーゼユールと申します。あ、これ名刺です。貴方は何だか悪魔っぽい恰好をしていますが、そんな気配がしませんね。たぶん人間さんですよね? もし悪魔だったら八つ裂きにしていましたよ。はっはっはっ」


 その男はビシっとした服を着ていている。

 シェルハユに後で聞いた話では、スーツと呼ばれる物らしい。

 髪もなんだかカチカチに固められていて、メガネという物を描けていた。

 べーゼユールからその名刺という紙を受け取るが、サッパリ何が書いてあるのか分からない。


「ああすみません。こちらがここの言葉に対応してある名刺ですはい」


 俺が眉間にシワをよせていると、別の紙を手渡された。

 その紙を受け取ると、確かに読める文字になっている。

 書かれていた文字は。


 天界雑務庁雑務課、べーゼユール。


 他にも何だか住所がどうとか書いてあるが、俺にはサッパリ分からない。

 しかし天界という所だけは理解出来た。

 こいつが天使なのだろう。


「天界と書いてあるがあんた天使なのか? 羽根も無いみたいだが、本当に天使なのか?」


「そんな事はどうでも良いではないですか。それよりも……」


 男の瞳が鋭く変わる。

 シェルハユを狙っているんだろう。


「この辺りで何か変わった物を見ませんでしたか? 大昔に封印されていた何かを探しているのですが、手がかりが無くてですねぇ。ちょっと困ってしまっているんですよ」


 こいつ自分が何を探しているのかも分かっていないのか?

 まあ大昔だというから、忘れていても不思議はないのか?


「探している物? 手がかりは無いのかよ、その、何か武器だとか壺だとか」


「いやあ実は、五百年も昔の事らしいので、何があったのかも分からないらしくてですねぇ。そんな物を私に探せと言われても困ってしまいますよねぇ。ははは」


 このまま引いてくれると嬉しい。

 戦うと面倒臭そうだ。


「じゃあ何処かで剣でも拾って そいつを持って行ったらどうだい?」


「そうしたいのは山々なんですがねぇ、魔力も無い剣なんて物を封印までする訳は無いでしょう。直ぐにバレてしまいますよ」


「そうかい、じゃああんたが俺に対価を払ってくれるのなら、王様に頼んでそれなりの武器を貰って来てやってもいいぜ」


「残念ながら今手持ちが無くてですねぇ……所でこの無駄な会話は何時まで続けるのでしょうか? 私が天使だと知って、そのまま会話を続けている所を見ると、貴方、何かを知っていますよね?」


 バレていやがる。

 このままシェルハユと接触させても良いのか?

 いや、シェルハユは、ハッキリと撃退すると意思を示していた。

 帰る気も無ければ封印される気も無いのだろう。


「出来れば無かった事にして帰ってくれねぇかな。怪我とかしたくないんだけどな」


「それは残念です。殺人等は禁じられていますので、内緒でぶっ殺さなきゃいけないじゃないですか。服とか汚れたら買い替えないとならないし、経費で落ちそうにもありませんから、自費で出さなければならないではないですが。それはまあいいです。では貴方には天使の裁きを申し付けます。嘘つき野郎は地獄で死ね!」


 べーゼユールの背中から天使の羽根が出現し、右手には白銀の剣を携えていた。

 空中に飛び上がり、固められていた髪がバキバキと逆立ち天を突く。


「食らえよ悪魔もどき。天使に嘘を付く奴は……永久に地獄で燃えてろッ!」


「ロッテこっちだ急げ!」


「わかった!」


 それを聞くと、ロッテが入り口に走り寄って来るのだが、待っている猶予はない。

 こちらに向かって来るロッテを全速で抱き寄せ、扉とは別の方角の窓から脱出した。

 べーゼユールの斬撃が飛び、家の入り口がで爆発する。

 家の形が大幅に変わってしまう。

 一応マルファーの無事も確認したほうがいいだろう。


「マルファーッ、生きてるか! 死んでないなら返事しろ!」


 返事は聞こえて来ないが、奴もそんなに簡単に死なない筈だ。

 こちらにも天使が付いているからな。


 そしてこっちの天使の力は、ただの人とは違うようだ。

 だが俺は、こんな能力の奴とも戦った事がある。

 毎日のように訓練をしているから、対処するのも苦ではない。

 俺はロッテ地上に下ろし、空中に飛び上がる。

 だが奴は、ロッテを狙い斬撃を繰り出した。

 女であれ誰も逃がす気は無い様だ。

 急いで戻り、ロッテを片手で抱き寄せると、このままの状態で戦う事になった。


「あいつが天使? おかしな恰好よね」


「そんな事はいいから、お前は魔法担当だ。このまま戦うから余計な事はするなよ!」


 奴の斬撃が飛び交う、それを交わして俺のマントが奴の剣とぶつかった。

 剣ごと斬り伏せるつもりだったが硬く、どうにも切断できそうもない。

 ただの鉄ではないようだ。

 俺は移動しながら奴の隙を窺うが……。


「エクスブレイズ!」


 ロッテの魔法が天使の背後から炸裂し、奴の羽根が燃えて地上に落下して行く。


「ぐおッ、貴様ぁ!」


「おっ、やったか?」


 しかし奴は膝を折り曲げ回転して勢いを殺したらしい。

 空を飛ぶ種族なのだ、万が一落ちた時の為に訓練をしているのだろう。

 俺はロッテを地上に下ろし、一気に詰め寄り奴へと斬りかかった。

 ガキィンと斬と斬が重なるも、そこから膠着状態が続いている。


 力が拮抗して動かねぇ。

 力も互角のようで、バンと弾いてもう一度斬り込んだ。

 俺と奴の剣が煌く。

 上、下、右、もう一度右、その全てを外套をもって弾き飛ばす。

 それでも奴は休まない。

 更に左、左、左、そして突きと休みなく動き続けている。


 俺は一旦距離を取り、後方に下がって様子を見る。

 だがそれも一瞬で終わらせ、前に跳び出しこちらの反撃が始まった。

 下から斬り上げ、そのまま飛びながら後に回り込み、そのまま斬りかかった。

 それだけで終わらず、逆の腕で脚を狙う。


 奴は前に走りそれを回避すると、反転して剣を薙ぎ払った。

 俺は後に倒れこみながら飛んで躱したが、奴の斬撃が飛んで来る。

 横に方向転換して躱したが、その斬撃はそのままマルファーの家に当たると また大きな音を立てて爆発していた。


 こんな奴を相手に、ロッテに期待するのは無謀だろう。

 激烈な近接戦に、隙のある魔法は使えはしない。

 剣で来られてもむしろ邪魔だ。

 分かっているからこそロッテはこちらには来ない。

 流れて来る斬撃を躱す事に集中している。


 もう一度斬撃が飛んで来ると、俺は空に飛び上がり躱すと、奴の間合いに飛び込んだ。

 流れ弾でまた家の一部が吹き飛ぶが、気にしている暇はない。

 斬と斬がぶつかり火花が散っている。


「そろそろ諦めたらどうだよ!」


「残念ながらそれは無いんですよ!」


「何度も何度も五月蠅いわね、今良い所だったのよ! マルファーが気絶しちゃったじゃないの!」


 今までマルファーと戦っていたのだろう、シェルハユが家から飛び出して来た。

 シェルハユも同じ天使だ、戦力的にもこちらが上になったはず。

 奴が止まっている今がチャンスだ。

 俺は奴の元に走り、腕を振りかぶり斬撃を繰り出すのだが……。


「あれ、もしかしてベール君?」


「シェル先輩?」


 まさかの知り合いらしく、俺は腕を引き斬撃を止めた。


 会わせた方が正解だったのか?

 まあ今更だ。

 死者も居ないなら上出来だろう。


べノム(王国、探索班)     アスタロッテ(べノムの部下)

マルファー(王国、近衛兵長)  シェルハユ(石になっていた天使)


次回→王道を行く者達予定


19日  夜か明日

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