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60 マリア―ド城での戦い

俺はグリア―デの息を吹き返らせるのだが、何を勘違いしたか、俺を殴りつけた。嫁にいけないだのなんだのと、戯言を喋りはじめていた。短剣を抜き俺を襲おうとするグリア―デの手を掴み止めるのだが、俺の急所を蹴り上げバランスを崩して倒れてしまう。倒れたグリア―デの上に乗っかる形になってしまうが、俺は痛みで動けなくなっている。騒ぐグリア―デ、叫ぶ俺、そんな状況の中で仲間が続々と渡って来ている。俺の痛みも治まり、すくっと立ち上がるもグリア―デは勘違いしたままだ。プロポーズだのなんだのと戯言をしゃべり、俺はもうそれを認めてこの地下通路を脱出したのだった……

 草むらに隠され、ギリギリで通れる小さな穴を通ると、地下から抜けた先は、マリア―ドの町の北西付近にあった武器屋の裏手だった。


「ほっと」


 人が居ないその裏手で、俺達は一人ずつその穴を抜けて地上に出ると、それじゃあ俺は戻るからと、アリーがまた中へと帰って行った。

 しかしこんな場所に隠し通路を作るとは、アリーはなかなかいい奴だ。

 武器屋の裏手を選ぶ様な奴には、悪い奴は居ない。

 今直ぐ大臣に復讐に行きたい所だが、武器は残り二本、火炎ひえんを使えないから一本だけである。


「これでは戦うのに心許ないな、一度宿に戻って剣を取って来ようか」


「う~ん、確かにそうだね、マルクスって武器がないと無力だし、戦うにしろ、やっぱり宿に戻った方が良いよね」


「うむ、そうだな、ラクシャーサとセリィの矢ももうあるまいに、補充も必要だからなぁ。どうせあの大臣の事だ、部下で回りを固めているであろうよ」


「矢だって結構高いし、帰りの分を買うとなると、また出費がかさむなぁ」


「セリィももうな~い!」


 俺達が宿に向かおうとするも、ディレイドはもっといい場所があると、俺達を誘った。


「ならば家によると良い。丁度この近くに、我が家があるからな。その宿に戻るよりも早いはずだ。なに、此方も手を貸して貰うのだ、金は要らん、武器が足りないというのなら、家の物を幾らでも持って行くがいい」


「ほう、俺をうならせる剣があるんだろうな? 俺はちょっとやそっとの剣じゃ満足出来ない体だぞ!」


「いや、マルクス、あくまで戦える武器をくれるだけだから、そんな高い武器はくれないと思うよ?」


「はっはっは、いやいや、家にある武器なら何だって持って行くがいい。その代わり、最後まで付き合って貰うからな!」


「ほう、太っ腹だなディレイド、なら望み通り、一番良い剣を持って行ってやろう!」


「では案内しよう、ついて参れ」


 そして俺達は、ディレイドの屋敷に寄り武器を補充した。

 その屋敷で選んだ物は、フリッサ、ドゥサックはまあ偶に見かけるものだが、エマヌエルの剣という珍しい物を手に入れた俺は、ニコヤカにその屋敷を後にしたのだ。

 このエマヌエルの剣というものは、大剣でありながらその刃に鋭い刺を持った剣で、斬るのに刺すというおかしな特徴を持っている。

 この刺の強度はよく分からないが、思いっ切り打ち込めば薄い鉄鎧ぐらいなら貫通出来るんではないだろうか?

 まあやらないけど、もし折れたら嫌だし。

 一度宿に置きに行きたいところだが、宿に寄ったらこの家に寄らせて貰った意味がなくなる。

 とりあえずはエマヌエルの剣は背中に括り付け、フリッサ、ドゥサックという剣は腰に差した。

 そして俺はブロードソードも三本腰に差し、計七本の剣を持ち歩く。

 これで俺は三回もの魔法を使う事が出来る。

 計算が違うとか言ってはいけない、これが正しい回数なのだ!

 ちなみに、グリア―デは屋敷に残るらしい。

 グリア―デ以外は六人で城へと向かっている。

 今度こそ大臣と決着をつける為に。


 城の門、この間のように二人が門を護っている。

 ディレイドの顔により城へと入城するが、エントランスの奥に、二十、いや三十以上の部下を引き連れ、あの大臣が待ち受けていた。

 アリーにでも聞いたのか?

 そのアリーはというと、この場には現れていない。

 あくまでも王国の為に働くと言っていたし、ごたごたしたお家騒動には付き合う気がないのだろう。


「ふあっはっはっはっは! あの地下からどうやって脱出出来たか知らんが、この城の中は今、私の部下しかいはしない! 幸いあの馬鹿王も所要で出掛けておる、この場で決着をつけてやるわ!」


「ふん、有象無象を集めて、この私に勝てるとでも思っているのか! 良いだろう、全員纏めて掛かって来るがいいわ!」


 ディレイドはそう言ってるが、俺達としては宝石のありかやら何か聞きたいが、答えてくれる雰囲気ではなさそうだ。

 そんな敵の数を見て、ガルスが少し恐怖しているらしい。


「ねぇちょっと、敵の数多くない? 多くない?」


「ハッハッハ、まさに死地と言った所か、中々壮観な景色だわい」


「今更言っても遅いぞガルス、もう覚悟を決めるんだな」


「此処まで来たんだ、もうやるしかないだろ! 気合入れろよガルス、セリィも頑張ってるんだから!」


「セリィ、頑張る~!」


「うひいいいいいいいいい」


 此方の準備を待たず、前方から大勢の敵が向かって来ようとしている。


「相手は少数だ、全力で叩き潰してやれええええ! 掛かれええええええええええええええ!」


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」


 幾らディレイドが強いとはいえ、こんな人数差があっては勝てそうもない。


「さあ皆の者、戦いの時間ぞ! 行くぞおおおおおおおおおおお!」


 俺は跳び出そうとするディレイドを押さえ、その進行を止めるのだった。


「おい待て!」


「ぐおッ、何をするか! 折角興が乗って来た所だというのに!」


「いいから少し待っていてくれ。此方にも作戦があるんだ!」


「ぐぬッ、だったら早くやらんんか!」


「今やる!」


 ラクシャーサに魔法の指示を出す。

 敵の真ん中に落とせば相当数は減らせたが、それをすると間違いなく大惨事になる。

 多少の数は減らせても、敵の戦力は圧倒的に多い。

 だったら!


「ラクシャーサ、敵兵の前に水の魔法をくらわせてやれ! セリィは弓だ、大臣だけには当てるなよ?!」


「わかったー!」


「了解だ! 炎熱の力よ、我が属性に力を与えよ! さあ顕現せよ、燃え盛る、神の水!」


 ラクシャーサが発動した燃え盛る水の魔法は、飛び出してくる兵隊の正面に落とされた。

 バシャンと大きな熱湯の玉が落ち、大きく白い湯気が立ち昇る。

 それに合わせ、セリィが矢を撃ち込んでいる。


「ぐあああああああっ」


「ぎゃああああああああ」


 足を止める事が出来ず、湯気の熱にやられたり、セリィの矢にやられた兵士が傷を負ったりしている。

 それを見て他の兵士達が足を止めている。

 矢にやられる味方の兵を見て、大臣は弓の準備をさせている。


「此方も矢を放てえええええええ!」


 敵方が弓を取り出し、此方に放とうとしているが、その隙を逃さないように、ラクシャーサがゴーレムを作り出す。


「泥の渦よ、我が力を伝える形となせ! 現れよ、土塊つちくれ人人形ひとにんぎょう!」


 作られた三体ものゴーレムは、まだ立ち昇る湯気の中に、こともなく入り、人数が居て簡単には動けない兵士達を、巨大な腕で弾き飛ばす。


「ぐおああああああああああッ」


「ぐっはッ」


 敵方の矢も、巨大なゴーレムに阻まれ、此方にはほとんど飛んできていない。


 ついでに盾にもなる便利なゴーレムだ。

 この魔法を覚えておいてよかった。

 だがそれだけではまだ全然足りない、敵の兵隊は大勢いるのだ。

 出来る限り減らしておいて損はない。


「今度は弓だ、ありったけ射ち込んでやれ!」


「了解!」


「やってる~!」


 二人により放たれる弓の矢は、ワラワラと居る敵兵の体に刺さっていた。

 一発たりとも鎧に弾かれないとは、やはり相当な技量があるな。

 相手側の矢もそろそろ収まり、ディレイドの屋敷から持って来たこちら側の矢も尽きつつある。

 相当数の数が減り、動ける者は残りは半数ぐらいだろうか?

 もう奇襲を続ける力は此方にはない、残りは全力で叩き伏せるしかないだろう。 


「二人共待て、此処からは白兵戦の時間だ。さあ行くぞガルス、ビビるんじゃないぞ」


「わわわわわわわ分かってるよ! いいいいいい行けばいいんだろ行けば!」


「ふう、やっとか、では行くとしようかディレイド殿! 我等の力を見せてやりましょうぞ!」


「ああ、任せるがいい、この程度、一捻りよ! さあ、行くぞおおおおおおおおおおおおおおお!」


 大臣を入れて十八人、かなり多いが、もうやるしかない。

 ブロードソードに力を籠め、俺は風の魔法を纏わせた。


マルクス・ライディーン    (ラグナード神英部隊、隊長)

ラクシャーサ・グリーズ    (ラグナード神英部隊、後方支援)

ガルス・フリュード      (ラグナード神英部隊、前方防御)

ドボルホーテ・アルティマイオス(ラグナード神英部隊、遊撃兵)

セリィ・ブルーマリン     (魔物と人の娘。エルフ種)

ディレイド・マグロイド    (マリア―ドの偉い人?)

グリアーデ・サンセット    (領主の座を狙う女)

アリー・ゲーティス      (王国の兵士)


次回→小大予定

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