11 ドラキアの実力
ドラキアの依頼を受けた三人、魔物のいる洞窟に向かった……
ドラキアさんと依頼の場所を目指し、到着しそうな頃。
「あっ、目的地が見えてきましたよ皆さん!」
広い平原には、突如として大きな洞窟が出現している。
ただ魔物の為にだけ造られたような、洞窟ですね。
その魔物とやらが作ったのかもしれません。
「あの洞窟ね。思ったより分かりやすいわねー」
「ああ、まさか入り口に寝ているとは思わなかったな」
洞窟の入り口には、巨大な亀が目を閉じて寝ている。
亀と言われているが亀と言えるサイズではない。
体はゴツゴツして堅そうで、ひと踏みで人間も潰せるサイズだ。
例え鋼鉄の鎧を着ていても、意味がないぐらいには巨大ですね。
「今の内にやってやるぜ!」
ドラキアさんが剣を抜き走り、亀の体を斬り付ける。
だがその剣は簡単に弾かれてしまう。
それもそのはず、分厚く硬そうな甲羅を斬りつけたから。
なんで甲羅が有る所を斬ったのか、もしかして硬さを確かめたかったのかな?
「何してるんだ、敵が居るんだぞ、早く手伝ってくれッ!」
そんなに大きな声を出したら……やっぱり亀が起きた。
ドラキアさん、見られてますよ。
あ、逃げて来る。
亀が起き上がってドラキアさんを追って来る。
聞いたほど鈍いとは言えません。
歩みはゆっくりでも、一歩の大きさが相当大きい。
このままでは追いつかれそうです。
仕方ありません助けに入りますか。
私は持っている剣を抜き、亀の足に斬り付けた。
ガンと直撃はしているのだけど、皮膚までも硬化しているらしい。
駄目だ、二度やっても傷も付かない。
しかしドラキアさんの前では能力を使いたくない。
その時に敵になってしまうかもしれないから。
一度退き、この亀の弱点を探してみますか。
私は亀の弱点を探る為に、体全体を見回していく。
脚は硬質化して剣が効かない。
体はもちろん硬い甲羅に覆われていて、生半可な攻撃等意味をなさない。
頭を狙おうにも高くて手が出せないし、尻尾も同じで硬そうだ。
……ただ一つ、あそこを狙えば、しかし私は絶対やりたくない。
まずフレーレさんに相談してみましょう。
「……あそこ」
私がその弱点を指さし、フレーレさんと相談した。
弱点なのは認めたが、やはりフレーレさんも自分ではやりたくないようです。
それはそうでしょう、お尻の穴に突っ込むなんて誰がやりたいと思うのでしょうか。
ここはカールソンさんに人肌脱いでもらうしかないでしょう。
うまく倒せればカールソンさんもお金が貰えますよ。
私がカールソンさんの方を見ると、フレーレさんも同意してくれた。
「カールソンさん、お金欲しいでしょ? ちょっとやって欲しい事があるんだけど」
「確かにお金は欲しいですけど、私は死にたくはないですよ」
「大丈夫よー、本当に簡単な事なのよ。ただこの剣を真っ直ぐ持っていれば良いわ。それだけで貴方は英雄になれるのよー!」
「……分かりました、私に出来る事なら手伝いましょう!」
「じゃあこっちに来て目を瞑ってねー。出来れば良いって言うまで目を開けちゃ駄目よ。それから十数えたら剣を何でも良いから振り回しなさい。分かったわねー? じゃあカールソンさん始めるわよー、そこに寝てね」
「はいフレーレ様!」
カールソンさんは言われた通りに地面に寝転がる。
その足をフレーレさんが掴み、二回三回と回転して遠心力を付けている。
そのまま投げ飛ばし、亀のお尻の穴に上半身がすっぽりと収まってしまう。
カールソンさんは言った通りにバタバタと暴れて、剣を振り回しているみたいです。
亀が苦しんでいるのが見て取れますよ。
破竹の勢いで攻撃を続けるカールソンさんですけど、亀の排泄物と一緒にカールソンさんを吹き出し、地面に落ちて来た。
流石に放って置いたら激突して死んでしまうので、フレーレさんが空中で、汚れていない部分の脚を掴んだみたいです。
「カールソンさん、もう一度よー!」
「待って、臭い、なんか臭いんですけれど!」
カールソンさんはまだ目を瞑ってますよ。
凄いですね。
「大丈夫よ、凄く効いているわー! これはチャンスよカールソンさん、一千万は目の前よ!」
「一千万! 分かりました、任せてください!」
またフレーレさんが回転をして、カールソンさんを投げ飛ばした。
暫くするとまた排出されたが、そこからは大量の血液が流れ落ちています。
体の中で暴れたから、内臓がズタズタになっているんだろう。
亀は脚を震わせ、その直後巨大な体が地面に落下した。
亀は痛みに耐えかねて気絶した様だ。
このまま放って置いても死ぬかもしれないですけど、それを待つ必要はないですね。
もうフレーレさんが跳び出している。
ヒュンとジャンプして亀の額を越えると、横たわった亀の額に凶悪な一撃を見舞った。
その一撃は亀の頭に傷を付ける事はなかったが、拳の破壊力はすぐに確認できた。
亀の顔面からは目や鼻、口からも血液が流れ出て、確認するまでもなく絶命している。
?
亀が倒れたはいいのだけど、ドラキアさんは何処へ行ったのでしょう?
……あ、居た。
岩陰に張り付いて隠れてる。
「どうやら俺の出番はなかったようだな。無事依頼は達成したし、もう戻ろうぜ」
「何匹かって言っていなかったっけ? 他にも居るんじゃないの?」
「見た所居ないじゃないか。他は居ないのさ」
洞窟の中をまだ見てないですよ。
「……あそこ」
私が洞窟の中を指さし、中を調べる事を進言した。
「そ、そうだな、まだ中を見ていなかった。じゃあ行こうぜ」
行こうぜ、と言っておきながら、彼は一向に進んでいかない。
どうにも進んで行かないので、私が歩き出すと、ドラキアさんは後ろから付いて来た。
この人は子犬ですか?
洞窟の内部は固い岩盤になっていて、私達が暴れてもそう簡単には崩れないでしょう。
天井の岩の隙間から漏れる光で、中は松明も不要です。
内部はそれほど入り組んでない。
というか真っ直ぐですね。
広さも十分あり、敵が来ても全員で戦えます。
でも亀で大活躍したカールソンさんは、洞窟の前で待たせてある。
臭いが臭く戦闘に支障が出るから。
……でも本当は臭くて一緒に居たくなかっただけです。
「さあ出て来いよ、俺が相手してやるぜ!」
ドラキアさん、そんなセリフは前に出てから言って欲しいです。
しかしそのセリフを理解したのか、しないのか、タイミング良く巨大な蝙蝠が襲い掛かる。
蝙蝠の体は人間程の大きさで、その翼を広げると洞窟の半分程にはなった。
あんなのに血を吸われたら軽く死ねますね。
「それじゃあ任せたわね~」
「……ねっ」
丁度いいから、ドラキアさんに任せてみましょうか。
「手伝ってくれよ!」
「えー、自分でやるって言ってたじゃないの」
「あれはただの冗談だったんだ!」
こうしている間にもドラキアさんを狙って、蝙蝠が迫って来ている。
ドラキアさんが応戦して蝙蝠を剣で斬り付けるのだけど、体に傷が付くぐらいで、一撃で倒せるほどではないです。
ドラキアさんの扱っている剣は、中々良い物だ。
黒く透き通った刀身は、蝙蝠の攻撃にもビクともしない。
それでも使い手が未熟な為なのか、切れ味はそれ程ではない様に感じます。
「飛び道具とか持ってないんですかー?」
「無いんだよ。もう良いだろ、早く手伝ってくれよ!」
う~ん、仕方がないですね。
私は地面に落ちている石を拾い、フレーレさんに投げ渡した。
フレーレさんはそれを握り、振りかぶって蝙蝠に投げつける。
石が蝙蝠の体に命中し、空中から地面に落ちて来ます。
落ちた蝙蝠に、私は剣を振り上げ翼を切断した。
「止めは任せろ!」
落ちて動けなくなったような蝙蝠に、ドラキアさんが止めを刺した。
一応止め要員としては役に立ちますね。
蝙蝠を倒して奥を見ると、蝙蝠の鳴き声が聞こえる。
もう少し進んでみようか。
今度は三匹、続々と蝙蝠が出て来ている。
でも大きな蝙蝠が三匹もいたら、簡単に石を当てられそうだ。
私が石を渡すまでもなく、フレーレさんはもう石を投げつけている。
三匹が撃ち落とされ、落ちて来たものにドラキアさんが止めを刺した。
これは楽だと、奥に進み、行き止まりへと到着した。
洞窟の奥は広い部屋になっている。
天井までの高さも随分ある。
ここまで来るのに地下に下りていたのだろう。
天井には無数の蝙蝠がぶら下がっていて、数を数えるのも面倒なほどですね。
騒がれると面倒です。
この部屋から出ましょうと私は手で合図を送り、部屋の入り口に二人を呼んだ。
あの広い場所で戦うのは不利ですね。
まずは石を集めましょう。
落ちている石を百個は拾い集めると、迎撃の準備は完了した。
「それじゃあドラキアさん、騒いで蝙蝠を誘き出してね」
「お、俺が行くのかよ」
「当たり前でしょ、女の子に行かせるんじゃないわよー」
比較的に狭い通路に誘き出し、石で叩き落す作戦です。
石を使えば、フレーレさんなら、全部叩き落とすことが出来るでしょう。
「よし、やってみるから、援護を頼むぜ。マジで」
「ええ、じゃあお願いねー」
「うおらあああああああ!」
ドラキアさんが部屋の中の蝙蝠に石をぶつけ、追い駆けられて此方に戻って来ましたよ。
後ろから大量の蝙蝠が追って来ています。
「じゃあやるわよエルちゃん。足りなくなったらお願いね」
「……うん」
「とりゃああああああああ!」
フレーレさんが自分の持っている石をぶつけ、迫り来る蝙蝠を叩き落して行く。
石が無くなるタイミングを見定め、私はフレーレさんに幾つもの石を投げ渡す。
その石を空中で蹴り付け、飛び交う蝙蝠を全て落として行く。
「死ねこの野郎!」
ドラキアさんが必死に止めを刺して行くと、敵は全て片付いたようです。
「助かったぜあんた達。どうだ、正式に俺の仲間にならないか? きっと楽しい旅が出来るぜ」
お断りします。
そもそも私達は勇者の敵側ですからね、
「……ごめん」
「そうか、残念だなぁ。いい仲間になれると思ったのに」
私が首を振り断ると、ドラキアさんは残念そうな顔をしていた。
洞窟を出てカールソンさん合流するが、私達はカールソンさんとは別にラグナードに戻った。
あの臭いが嫌で我慢できなかったのです。
ラグナードで報酬を受け取り、ドラキアさんと別れて王都に旅立った。
帰りの道中も色々あったが、王都まで無事にたどり着き、この旅は終わりを迎えます。
あの実力を見ると、たぶんドラキアさんは勇者じゃないでしょうね。
それとも成長してそこまでになるんでしょうかね?
その後、いくら待っても彼の噂を聞くことはなかった。
相当な報酬を貰い、悠々自適に暮らしているんでしょうね。
ベリー・エル(王国、兵士) フルール・フレーレ(王国、兵士)
カールソン(帝国新聞、平社員) ドラキア(赤髪の勇者?)






