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5 運命の選択は神のみぞ知る

レインさんに勘違いされた俺は、彼女達に事情を説明した。彼女達は俺の事を理解してくれると、熱く語らい合い、手伝ってくれるという。そして俺は、後日レインさんに呼び出された……

 俺がその場所へ到着した時、レインさんと、そしてアンリさんが、アンリさんが居るだってえええええ!


 きっと俺の為に、変わってくれたんだろう。

 きっとそうに違いない。

 見ただけでは何方がアンリさんか分からないが、声さえ聞けば何方がアンリさんなのかハッキリする。

 しかしそれを聞く前に、二人を言い間違えたら、俺の愛情が疑われてしまうだろう。

 それは避けなければならない。


 二人は同じ顔で、俺を見つめている。

 双子よりもそっくりに、ホクロの位置まで同じだった。


 どっちだ? どっちがアンリさんなんだ?

 何も言ってくれないのは、俺を試しているのだろうか。


「こ、こんにちはお二人共、今日はいい天気ですね。ははは……」


 へたれた俺は、無難な挨拶をしてみたが、二人は何も答えてはくれない。

 やはり当てろと言ってるのだろうか?

 どれだけ見ても判断が出来ない。

 服装や髪型まで同じとなると、最早俺は、この二人の何方か一方に賭けるしかなかった。

 俺は、左側にいる女性をアンリさんだと思い、二分の一の賭けに出た。


「えっと、アンリさんですよね?」


 やはり何も言ってはくれない。

 二人は同じ顔で、俺に微笑んでいる。

 これは合っていたのか? それとも間違って……。

 駄目だ、分からない。

 しかし、考えようによっては、両手に花……いやいや、駄目だ駄目だ。

 俺が愛しているのは、あくまでもアンリさんだけだ。

 レインさんにまで手を出すなんて、俺には出来ない。


 しかし、この間は味方になってくれると言っていたのに、全くフォローしてくれている気がしない。

 この状態で、俺にどうしろと言うんだろう?

 俺が悩んでいると、その二人が別々の方向へと別れて行った。


 これは、俺に何方かを追えと言ってるのだろう。

 俺はさっき選んだ左の女性を追う事にした。

 駆けて行くその人の手を掴み、声を掛ける。


「待ってくださいアンリさん。……アンリさん……ですよね?」


 彼女は振り向いて、俺に微笑みかけた。


「ぶ~~、ハズレですよ変態さん。私がべノムさんに見えましたか? 私達を見分ける事も出来ないのに、簡単に愛とか言わないでください! 私の体で何をする積もりだったんですか、この変態め! 絶ッッ対に、許しませんからね!」


 彼女は同じ姿をしている事を知らなかったのだろう。

 だからこそ許せなかったのだ。


「いえあの、黙っていたのは謝ります。しかし彼女はレインさんと同じ姿をしていますが、全く別の人間です。どうか俺と彼女の事を許してもらえませんか?」


「そんな事で許せる訳が無いでしょう! あれは本当に私なんですよ? べノムさんを私の姿にさせて、どんな事をする積もりなんですか?! 変態、馬鹿!! 良い人だと思ったのに、馬鹿、死ね変態!」


 随分と怒っている。

 どうも許して貰えそうにない。

 しかし、こんな時だというのに、彼女から罵倒されている俺は、アンリさんと似た愛情が、生まれて来ている気がした。

 まさか俺は、レインさんまで好きになったというんだろうか?

 俺にはもう、この想いを止める事が出来なくなっていた。


「レインさん、俺は貴方の事が好きになってしまいました。どうか俺と、幸せな家庭を築いて行きませんか?!」


「今まで何を聞いていたんですか?! もしかして気でも狂ったんですか?! 貴方がこんなに馬鹿な人とは思いませんでした。貴方の様なド変態は、二度と近づかないでください!」


 こんなに変態と言われると、本当に変態になった気がする。

 レインさんに罵倒される度に、どんどん彼女に心を惹かれてしまう。

 アンリさんの時もそうだった、何時も罵倒される度に、心が満たされて行っていた。

 もしかして俺は、本当に変態なんだろうか?

 自分では真面だと思っていたのだが、本当にそうなのかを調べる為にも、もう一度罵倒してもらう必要がある。


「レインさん、もう一度、もう一度だけ罵倒してくれませんか? 頼みます、もう一度だ毛で良いですから!」


「いやあああああああああああ! こっちへ来ないでド変態いいいいいいいいい!」


「ま、待ってくださいレインさん! 本当に一回だけで良いんですって……」


 俺の言葉を聞き、レインさんが逃げて行った。

 俺は本当に試して見たかっただけなんだが、失敗してしまったらしい。

 怖がらせるつもりはなかったんだが。


 これ以上無理に追っても、もっと逃げられるだけだ。

 今は時間を置いた方が良いだろう。

 レインさんを追うのを諦め、俺は家に帰った。


 俺はこれからの事を考えた。

 図らずも二人の女性を愛する事になった俺だが、俺は男として、何方か一方を選ばなければならない。

 アンリさんとレインさん、何方も素敵な女性だ。

 この二人から選ぶとなれば、かなりの迷いが生じるだろう。


 まずはアンリさん。

 いい所というと、一番先に思いつくのは、あの勢いの良い罵り方だろうか。

 姿はレインさんと同じだが、あのハスキーな声は中々良い。

 仕草や、怒った声も凄く良いと思う。


 誘っても付いて来ない様な、奥ゆかしい所も魅力的だ。

 しかし彼女には、少しばかりの問題がある。

 じつは性別が男だと言う事。

 もちろん、変身さえしてくれれば、俺としては何の問題もない。

 そしてもう一つ、彼女が結婚しているという事実だろう。


 彼女には美しい妻と、俺は会った事がないが、可愛らしい子供まで居る。

 当然俺は気にもしないが、彼女の妻のロッテさんに、悲しい思いをさせるのは不本意だ。

 だからこそ俺は、一週間に一回で良いと考えている。

 しかし、ロッテさんがそれに納得しないのであれば、まあ一月に一回でも我慢しよう。

 きっとそれで納得してくれるはずだ。


 そしてもう一人は、パン屋の看板娘のレインさんだ。

 彼女の罵倒はまだ未完成だが、それは時間を掛けて行けば上達して行くだろう。

 それに彼女は本物の女性だ。

 彼女を選べば、いずれ家庭を持つことも出来る。


 何方にするかと、結局三日間悩み続け、最終的に俺はダイスを使って運命を決める事にした。

 奇数ならアンリさん、そして偶数ならレインさん。

 運命のダイスを投げ、そのダイスの目をハッキリと確認した。


アーモン(勇者と呼ばれた漢) レイン (パン屋の看板娘)

べノム (アンリさん)



次回→続き予定


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