表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
295/779

6 騙す事で救われるのなら、俺はそれを躊躇わない

俺はフェリス君を説得して、新聞社に戻った。俺はフラウ先輩に事情を説明すると、先輩は王国から助っ人を呼び出した……

 新聞社に黒い男べノムがやって来て、もう一人の女とフラウ先輩が、一触即発の雰囲気を漂わせていた。


「貴女、昔の女が軽々しく私の旦那を呼び出さないで!」


「へぇ、軽々しく呼び出されちゃうんだから、もしかしたらまだ関係が続いてるのかもしれないわよ? ねぇべノム」


「俺に同意を求めんな! お前と続いてたら、ロッテを連れて来るわけないだろ。ロッテもいちいち反応すんな、今はただの友人だ、本当にそれだけだって!」


 なにか大変そうだ。

 この男の元の姿は、人とは違うというのに、何故こんなにモテているのか意味が分からない。

 ここに良い男が居るというのに、この世の中は間違ってると思う。

 しかし、何時までもこんな話に付き合ってる訳にはいかない。

 フェリス君の為にも、話を切り出さなけらば。


「皆さん落ち着いてください! 今はそんなくだらない事を言い合ってる場合じゃないでしょう! 事は帝国の運命を、いえ、それだけじゃありません、王国の未来をも左右する話なんですよ?! 男のことは他の時間に話会ってください!」


うるさい、ちょっと黙りなさいカールソン、今は女同士の決着をつける時なのよ! 多少姿が変わったからって、私が身を引くとでも思ったの?! この女を叩き伏せて、奪い返してやるわ!」


「やれるものならやってみなさい! このロッテちゃんが、返り討ちにしてあげるから!」


「フェリス君が危ないんだから、落ち着いてくださいって。彼女の命も危ういんですから!」


「「煩い!」」


「ええええええええええ……」


「ああなったら止まらないからな、まあ放っておくしかないだろうぜ。俺が話を聞いてやるから、ちっと場所を変えようぜ。この場所に居たら巻き込まれるしな」


 二人の女が取っ組み合いの喧嘩をしだす中、俺達は別の部屋へと移動して、この人に事情を話した。


「つまりあれか? フェリスって奴の親父が、王国を潰す仲間を集め出したってことか? 本当に喧嘩なんてしてる場合じゃねぇじゃねぇか。あの二人を止めときゃ良かった」


「ええ、そうなんですよ。もしそんな集団が増えて行ったら、本当に何かをし兼ねないんです。フェリス君を助けるのに、力を貸してくれませんか?」


「その娘を救うのは良いんだが、簡単に屋敷を潰すのは止めた方がいいぜ。縛られた娘が、屋敷を破壊したら、それはそれでおかしいだろうが。逃げ隠れたと思われても不思議じゃないぜ」


「で、ではどうすれば!」


「そうだなぁ……。その屋敷を破壊する理由があれば良いんじゃねぇのか? 例えば、帝国の国に魔物が侵入して、その屋敷に逃げ込んだとか」


「国の中に魔物なんて入れたら、この町は大変な事になりますよ?! それに、魔物がそんなに上手く動いてはくれないでしょう。屋敷に逃げてくれるとは限らないし」


「そりゃあ大丈夫だ、俺が姿を変えれば何とかなると思うぜ。それなら町の被害もねぇだろ?」


「なるほど、ではそうしましょう。しかし本当に平気ですか? 結構危ないと思いますよ。かなりの数の攻撃が飛んで来ると思いますし」


「平気だぜ、まあ俺にドンと任せときなよ」


 計画は綿密に組み立てられ、俺はあの屋敷から、フェリス君を避難させた。

 そして次の夜明け。

 主演べノムにより、この作戦が実行されたのだった。


 帝国の正門付近。

 俺は人気のない道を歩いている。

 朝も早い、まだ誰も起きては居ないだろう。

 門を護っている兵隊以外は。

 そんな朝っぱらに、姿を変化させたべノムさんが、私の横を通り過ぎて行く。

 俺はスーッと息を吸い込み、全力で力いっぱい叫んだ。


「魔物だあああああああああ、魔物が出たあああああああ! 魔物が出たぞおおおおおおお! 真っ直ぐ東へ進んでいるぞおおおおおおおおお!」


 静かな朝に、俺の声だけが町中に響き渡った。

 俺は正門を護っている兵隊の動きを見つめる。

 望遠鏡を覗き込み、べノムが変化した魔物を探しているらしい。

 一分後、敵の襲撃を知らせる警鐘は鳴らされなかった。

 今鳴らしたら、逆に混乱すると思ったからだろうか?

 代わりに門方向から、武装した大勢の兵士達が、べノムさんを追い掛けて行く。


 俺の仕事は、もう殆ど終わった様なものだ。

 後は彼に任せるとしよう。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 作戦により、べノムは帝国の中を疾走している。


「ぬおおおおおおおおおおおお!」


 思ったよりも帝国の警備が厳しい。

 通路上には通行人も見当たらないから、やりたい放題だ。

 大量の矢や、火や石などの、魔法の攻撃も飛んできている。

 やはり帝国にも、魔法を使える者が流れて行ったらしい。


 見つかる為に走っているから、あまり速度は出せない。

 これは結構キツイぞぜ。

 簡単に安請け合いするんじゃなかった。

 流石に地の利のある警備兵達は、俺が向かう進路に予想を立て、前方の進路をふさがれてしまった。


「絶対に通すな、上から捕獲ネットを投げろ! 急げ、急げ!」


 俺が魔物だと思っているから、目の前でも作戦を言ってやがる。

 完全に戦略が丸わかりだ。

 普通魔物が言葉を理解するとは思わないわな。


 俺は投げられたネットを切り裂くと、作られた人の壁を飛び越えて、目的だった屋敷へと向かって行った。


 屋敷に到着した俺は、入り口の扉をぶちやぶると、警備兵が到着するのを待つ。

 兵隊の姿が見えると、目的の二階への扉に飛び込んだ。

 今この屋敷にはフェリスは居ない。

 警備兵が来る前に、俺は魔物の姿に変わり、裸で縛られたフェリスの体までを変化対象にした。

 これで魔物の口に咥えられている様に見えるはずだ。

 俺はそのまま警備兵を振り払い、帝国の国から脱出を果たす。


 あれだけの人数に見られれば、その内噂は広まるだろう。

 ボロボロの屋敷で、女が魔物に攫われたってな。

 一階にあるというフェリスの母親も、あの兵達にきっと調べられる。

 後は、フェリスの居場所をどうするかってことだけだな。


カールソン (新聞記者)  フェリス   (記者の後輩)

フラウ   (新聞社の先輩)べノムザッパー(王国から呼び出された男)

アスタロッテ(べノムの妻)





次回→ 続き予定。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ