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21 のんびりとした昼

宴が終わり、女王同士の握手が交わされる。そしてイモータルは王国へと帰り、何人かがブリガンテに残された……

 女王イモータルを見送り、七人はブリガンテに残った。

 今までとは別の、こぢんまりとした宿へ移り、その宿で三部屋を借りた。

 一つ目の部屋はアツシとストリー、二つ目はイバスとクロッケル、三つ目は残った女性三人が泊っている。

 今まではブリガンテに支援して貰っていたが、これからはそうもいかない。

 支給金があるとはいえ、国の金をそう無暗に使う事も出来ない。


「んじゃ俺達は買い出しに行って来るから、べノムは留守番頼む」


「ああ行って来い、俺はちょっと寝てるぜ。流石に二往復はキツイ……」


 べノムはエリメスとアスメライを王国から一人ずつ運び、今はぐったりと宿の長椅子で横になっている。

 これからも連絡を取る為に、この国へ定期的に来るらしい。


「寝過ごして向うの仕事が出来なくなっても知らないからな。また怒られたら今度こそ俺の部下にしてやるよ!」


「うるせぇ、早く行って来いよ。眠れねぇじゃねぇか。外に皆を待たせてるんだろ? もたもたしてると置いてかれるぞ」


「使えない部下は置いといて、行くぞストリー。ついでにブリガンテの町を周ってこようぜ!」


「ああ、まずは食材と、この国の地理を把握しなければしなければな」


「おいコラ、ちょっと待て! まだお前の部下になったわけじゃねぇからな!」


 アツシとストリー、他全員が外で待っている。


「べノムはやっぱり留守番するってさ。イバス、それじゃあこれからどうする? まず食材でも買って来るか?」


「ん~、そうだな、手分けしてって言いたい所だけど、全員で行こうか。僕達が居るのはマリーヌ様にも知られてるし、一応万が一って事もあるからね。べノムさんの方は……流石に拠点の宿にまでは来ないとは思う。何かあったとしても、あの人なら大丈夫でしょう」


「それでは行きましょうイバス様、ちょっと邪魔者が多いですが、デートには良い天気ですよ」


「待ちなさいレーレちゃん、なんでイバスさんと腕を組んでいるのかしら? そこは私の席でしょう?」


「イバス、まさか潜入捜査だとか言って、レーレに手を出したんじゃないでしょうね? もしそうなら……」


 エリメスとアスメライが怖い顔をしてレーレに襲い掛かろうとしている。


「さ、三人共仲良くしてください。レーレさんも手を放してください。こんな所で争ってたらちっとも進めないじゃないですか!」


「あ、やべぇ、俺だけ一人だわ。なんか寂しいぞおい。おいレーレ、どうせなら俺と付き合ってもいいんだぞ?」


「クロッケル様。今何か、何かお言いになられましたか? 少し静かにしていらっしゃらないと、その喉笛切り裂きますわよ?」


「ああ、いえ、何でもないです……」


「アツシ、少し待っていろ。ちょっと後を黙らせてくる」


「おい待てストリー、剣を抜いて何する気だよ! お、おい!」


 ストリーは騒ぐイバス達の一人に剣を振り下ろす。

 クロッケルの兜がザシュっと割れ落ちる。


「うおおおおおおおおおおおお危ねぇ! 何で俺なんだ、あんまり騒いでねぇだろうが!」


「それはお前に剣を振り易かったからだ。お前達もあまり騒ぐなら……」


 三人がイバスから距離を取り、サッと口を閉じた。

 彼女達もストリーの恐ろしさは知ってるのだろう。

 それを見ていたイバスが俺の元へとやって来る。


「アツシ、ストリーさんを僕にください、彼女がいれば僕が安心出来そうなんです。もちろん性的な意味じゃないですよ?」


「はぁ、嫌だよ! 何言ってんのお前、あんなハーレム持っててまだ足りないって言うのかよ!」


「チガウヨ、あれはそんなものじゃない。何か胃が痛くなるような何かだよ!」


「今度はお前達か、お前達も騒ぐのなら……」


「「直ぐに黙ります!」」


 俺達は町中を見て回る。

 重要施設や、変わった建物の位置を確認する。

 そして食材を買い、宿へと戻った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 べノムは受付前の長椅子で休んでいる。

 宿にしたら迷惑な話だが、通常よりも高い金額を払い、部屋を取っていた。

 多少の事は目を瞑るだろう。

 その宿の中へ、一人の男が足を踏み入れた。


「おい起きろ! 貴様に聞きたい事がある、アツシという男は何処だ!」


「何だようるせぇなぁ、もう少しぐらい休ませてくれよ。俺ぁ疲れてるんだよ。話なら起きてからにしてくれ」


「そこまで時間はとらせない。兎に角アツシという男の居場所を教えてくれ!」


「ああん、アツシィ?」


 振り向くと見た事がある男が立って居た。

 こいつはジュリアン、先日俺が姿を借りた男だ。

 アツシに何の用があるんだ?


「アツシに何の用だよ? いやそもそもお前なんで此処を知っているんだ?」


「ああ、いや……少しばかりコネがあってな。お前達は知らないかもしれないが、俺は大臣の子息でジュリアンと言う。言いずらいのだが、アツシという男に興味があってな。少しばかりその強さを教えて貰いたいのだ」


「へ~……」


 アツシの強さ?

 ああなる程、確かに俺は、あの大会でアツシと名乗っていたな。

 此奴が言ってるのは俺の事だろう。

 としても俺は眠いし、此奴に関わってる暇は無い。

 此奴の事はアツシに丸投げしてしまおう。


「アツシは今出掛けているぜ。二、三時間もすれば帰ってくるんじゃねぇか? 待ちたいならその辺で待ってろよ。俺ぁ眠いんだ、邪魔しないでくれ」


「ならば待たせてもらおう」


 俺とは離れた位置でジッと待っている。

 少し気になるが、疲れた体を休める為に目を瞑った。

 少しだけ仮眠を取り、目を覚ましたにもジュリアンは待ち続けている。


「あ~、まだ戻って来てないみたいだな。悪ぃが俺はもう行くぜ、まだ仕事が残ってるからな」


 ジュリアンは俺の言葉に答えない。


「気が向いたらアツシに帰ったって言っといてくれ。じゃあな」


 俺は宿から出ると、そのまま王国へと飛び立った。


べノム   (王国、兵士)      ストリー  (王国兵士)

イバス   (王国、新人兵士)    タナカアツシ(異界から来た男)

エリメス  (王国、兵士)      アスメライ (エリメスの妹)

クロッケル (王国、兵士)



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