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20 死海

戦いは王国の勝利で終わった…………

 ブリガンテ武国。

 マリーヌ王が眠る寝室に偵察隊が飛び込み、その報告をしようとしている。


「大変で御座いますマリーヌ様! マリア―ドが敗北致しました!」


 マリーヌは一体何を言われているのか分からなかった。

 自分が寝て起きたらマリア―ドが負けていたと言ってるのだ

 一瞬その意味が理解できず、しかし直ぐその重大さを理解し、その兵に状況を聴き返した。


「詳しく説明なさい! 一体どういう事なのですか?!」


「はい、昨日の夜中やちゅうに、マリア―ドが魔王に夜襲を掛けました。かなりの善戦を果たすも、立て直した魔王軍により、ハルトン王は討ち討ち取られました」


 変な偽情報に踊らされるのは怖く、見間違えたとも思えたのだ。

 真実を確かめる為、もう一度聴き返す。


「その情報は確かなの? 間違いはなくて?」


「間違い御座いません、私の部下二人が確認致しました!」


 一人の見間違いではなく、二人で確認したのなら、その情報はたぶん間違いではないのだろう。

 このままマリア―ドに王軍が進行すれば、この大陸に多大な影響を与えてしまう。

 王国が進行すればだが。


「あの国も王位継承で、揉めるのでしょうね」


「その事でラグナードが接触したと噂があります」


「内容は?」


「どうやら継承権を持つ者に、自分の娘や甥を、嫁や婿に与えたとか」


 とても悪い流れだった。

 王国が攻めなければ、いや攻めたとしても、ラグナードの一人勝ちになってしまうだろう。

 マリア―ドの王の妃がラグナードの姫だとしたら、二国が同盟を組んだようなものである。

 前王のハルトンとは同盟を結べておらず、ブリガンテだけが取り残されていた。

 多少不利でも、どの国かと接触しなければならない。


「魔王が復讐戦をするにしろ、それをしないにしろ、何方も想定しなくてはなりません。多少高くなってもかまいませんから、マリア―ドとラグナードに金品を送り、至急同盟を確約しなさい」


「はい」


 兵はその指令を受け、即座に行動を起こした。

 魔王には一国では勝てないだろう。

 何方にしろ彼女には、他国と同盟を結ぶしか手を思いつかなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 戦いによる後始末も大体終わり、民も落ち着きを取り戻した頃。

 王城の玉座間で、メギドは多くの兵士に跪かれていた。

 その先頭に居るのはタイタンである。

 待ちきれぬといった表情で、タイタンが王であるメギドに進言しようとしていた。


「メギド様、町の混乱もここ数日で収まり、兵達にも十分に休養を与える事が出来ました。準備は出来ております、さあ、ご決断を!」


 タイタンの声は普通だったが、背中に怒りのオーラが出ているのを感じた。

 言おうとしている事はメギドにも分かっている。

 その言葉は、マリア―ドに攻め込むか如何かという話なのだ。

 無残に殺された者も大勢いるし、こちらの力はあちらを凌ぐ。

 反撃をしないのならば民も納得しないだろう。


「……分かった、出発の準備をしろ」


「すでに準備は整っております。兵の皆はこの時を心待ちにしておりました!」


 メギドとしては戦争はしたくはなかったのだが、この男を見るだけでも、やはり止まりそうもなかった。

 兵の士気も勝手に上がり続け、例え王の命であっても止められる雰囲気ではなくなっていたのだ。

 国の王としては、もうやるしかないだろう。


「民間人は殺すなよ」


「分かっております」


 怒りで無差別に殺す事だけは止めた。

 メギドは自分の発した言葉で覚悟を決め、肺の中に空気を入れる。

 そして……。


「王命である! マリア―ドの王城を蹂躙せよ!」


「御意に!」


 タイタンが動ける兵五千を引き連れ、戦地となるマリア―ドに向かって行く。

 進軍を続ける兵達にも怒りの色が見えた。

 五千と聞くと少なく感じるかもしれないが、王国としては、この人数が出発できる最大のものなのだ。

 数多くの戦いを経て、王軍の絶対数も減ってしまっている。

 町の復興、防衛、キメラ討伐、やる事が多くある中で、それが最大値だった。

 王軍の進軍には、当然マリア―ド側も準備を備えている違いない。

 しかしそれは、王都の人や建物を心配する必要もない彼等達には、ただの紙の壁にしかすぎず、進軍を止める事など不可能であった。


「さあ、王城は目の前だ!、ただ進み、蹂躙せよ!」


「「「「「うおおおおおおおおおおお!」」」」」


 タイタンの号令が発せられ、兵が雄叫びを上げる。

 マリア―ドは他国と同盟を結んだが、その距離は遠く、救援の兵を到着を待たずにマリア―ドは陥落してしまう。

 その事により国の中枢を失ってしまったマリア―ドだが、ブリガンテの支援により復興を開始し、彼の地との同盟を確約したのだ。

 そしてこの世界に王国の力を改めて示し、悪名を轟かせるのであった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ラグナード神国では玉座に座り、ラグナード王が笑っていた。

 王国がマリア―ドを滅ぼさなかった、そして占領もしなかったのは彼にとっては都合が良かった。


「はっはっはッ、まさか此処まで上手く行くとは思わなかったぞ!」


 彼のした事はこうだ。

 まずマリア―ドの王位継承権の高い者に、自分の娘を嫁にやった。

 そして魔王軍が進軍して、ラグナードに救援の要請が出されると、その要請に答え、大軍を送る。

 だが軍にはワザとゆっくりと進ませ、全てが終わった後にマリア―ドへと到着させたのだ。

 手筈通りに娘と夫だけを逃がし、夫の方を始末した。

 継承権を持つ者が誰も居なくなり、後は娘の子供をでっち上げると、マリア―ドはまんまとラグナードの手に落ちてしまった。


「魔王様には感謝してもし足りませんなぁ。はっはっは……」


 ラグナード王の笑い声が、この夜に止む事は無かった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 王国にあるの民家。

 黒色の兵士べノムの家。

 マリア―ドに反撃にも行かなかったべノムとその部下達が、何故か女子会を開らこうとしていた。


「おめぇら、なんで俺の家に集まってるんだよ?」


 集まったのはアスタロッテ、ベリー・エル、フルール・フレーレ、あと何故か王女のラヴィ―ナまで集合していた。

 王女様の手前、あまり酷い事は言えないべノムだが、一応少しだけ抵抗をしてみせた。


「せめて家主の俺に一言欲しかったんだが」


「べノムも入りたかったの? じゃ早くこっち来てよ」


 べノムはロッテに手を引かれている。


「いや、入りたかったんじゃあなくてだな。……まぁいいか」


 命の恩人であるロッテには、べノムはそこそこ感謝していた。

 少しなら我がままを聞いても良いかなと思っている。


「それじゃあ女子会を開始しますねー、実は先日の戦いで素敵な人を見つけたんですよー……」


 べノムが席に着き、フレーレが始まりを告げて、女子会が始まった。

 フレーレが喋る内容は酷いものだった。

 先日の戦いで顔面を潰したとか、攻撃を避けた相手をデートに誘ったとか、べノムには全く何を言っているのか理解できなかった。

 他の女達は、凄いだのと頷きあっていた。

 ……女子会ってこんなのなのだろうかと疑問を抱いている。

 フレーレの話が終わり、次はロッテが話すらしい。

 流石に大丈夫だろうと思ったべノムだが、何だかあまり同情出来ない話が続いている。


「私、両親が殺されてしまってですね、王国を逃げた時に……」


 敵の兵士に捕まり、隙を見て金玉を潰して女装させた等と言っている……。

 何処まで本当の事なんだろうか……。

 続いてベリー・エルが話しているが、これは更に訳が分からなかった。


「私……でね……これを……ぎゅって……それが……ムニュっと……」


(省略していません)


 べノムには全く分からないのだが、他の皆には伝わっているらしい。

 その言葉に、へ~等と相槌を打っている。

 この次はラヴィ―ナが話すらしい。


「私前奴隷だったのねッ、お母さんに売られて……」


 これはメギド様に知られてはいけない類の話かもしれない。

 これを知られたら、その国が無くなってしまうかもしれない。


「それで夜、人買いのおじさんに呼ばれてベッドの……」


「ラヴィ―ナ様駄目ッ。それ以上は駄目です!」


 べノムが慌てて止めたが、ラヴィ―ナは不思議そうな顔をしている。


「駄目だよ~べノム、まだお話の途中じゃない」


 フレーレが期待していて、ロッテも怒っていた。

 エルは良く分からない。

 この話は不味いと、べノムが止めていた。

 夜中にベットに呼ばれたとか、もうアウトだと思っている


「それでねっ、ベットでおじさんの白い……」


「待ってください! 待ってッ!」


 この話を聞かされた自分まで、危害が及ぶ危険性があると判断し、べノムは全力で止めている。


「もしかしてエッチな事考えてたの? べノムって案外いやらしいのね。ちゃんと聞きなさいよ、私何度も聞いているんだから」


 どうも思っていた話と違うらしい。

 べノムは少し落ち着き、話を聞いてみる事にした。


「わかった、ラヴィ―ナ様、続きをお願いします」


「んとっ、おじさんの白い牛乳をふかされたの」


 なんだ牛乳かと、べノムはほっとした。

 だがまだラヴィ―ナ様の話は終わらないようだが。


「それでねっ、拭くのが遅いって言ってまだ残っていた牛乳を私にかけて地面に押し倒されたの、そしてお尻に……」


 落ちがあるはずだった。


「おじさんの下半身の大きな……」


 大丈夫なはずだった……。


「硬くて太い……」


 ……もしかしたら駄目かもしれない。


「黒い棒を……」


 これは止めるべきじゃ……。


「何度も何度も……」


 ……アスタロッテを見るが期待しているようだ。


「叩きつけて……」


「それ以上は良いですッ!」


 べノムは我慢できなくて止めた。


「ほら~、話し方がダメなのよ~、男の人だと誤解しちゃうじゃない」


 フレーレはラヴィ―ナの話を簡潔に話した。


「だからね~、黒い棒でお尻を叩かれたって話よ~」


「なんじゃそりああああ!」


 べノムが絶叫してこの女死海(女子会)は終わった。

 実はまだラヴィ―ナの話には続きがあって、男を呼びに偶々来たシャーイーンが、ドアの枠に躓き、男の股間を頭で直撃したそうだ。

 それからシャーイーンの待遇が悪くなったらしい。


ラグナード(ラグナード神国、王)      マリーヌ(ブリガンテ武国、国王)

メギド(王国、国王)            タイタン(王国、将軍)

ベノムザッパー(王国、探索班)       ラヴィ―ナ(王国、王女)

アスタロッテ(べノムの居候)        ベリー・エル(王国、兵士)

フルール・フレーレ(王国、兵士)



次回→王道を行く者達6予定

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