白蝶国
あれから、私がいるこの城には、無能者がたくさん来た。たまにその子は黒児からの手紙を持っていて、今の黒児の状況がよくわかった。私は、その子たちに部屋と仕事を与えた。勉強も、習わせた。私はそうして、黒児の帰りを待った。…だけど、最初から帰ってくるなんてありえないのだ。この国には何人もの国民がいる。その中から無能者を見つけ出して一人ひとり送るのだ。そして、この国だけで一日に何人もの子供が生まれるという。…黒児が帰ってくるのは、無理だった。だけど、私は待った。私たちの夢が叶う日を夢見て。
無能の子たちはすごく頑張って働いてくれた。しかも、見かけるたびに挨拶をくれる。私は、その夢の存在が早く叶ってほしいと思った。
「あの…白蝶さま…」
「ん…はい、なあに?」
「これを…」
私は無能者の内の一人から手紙を受け取った。
「ああ、黒児ね。ありがとう」
「っ…!はい!!」
その子は柔らかい笑みを私に見せてくれた。そして、その子が去ったあと、私は黒児からの手紙を読んだ。読み終わった時の私に、その手紙は読んでよかったかと訊かれたら、きっとNOと答えていただろう。それくらい、最悪な事だった。
「う…そ…でしょ?」
私はあまりの事の大きさに吐き気がした。
まず、少し考えればわかることだった。人生、とんとん拍子で全てうまくいくなんてことは、ありゃしないのだ。私は仕方なく、作業を進めた。やるべきことを。
そして、私は無事、会社を三軒ともすべてつぶした。すると一気に死亡者は減り、国民には安心できる日々が戻るはずだった。…はずだったんだ。だが、多くの国民はその会社がなくなったことに不満を覚えた。中には、城にごみを投げつけて怒鳴る者もいる。例えば「わが子が無能力者だと思うとつらい!会社を建て直せ」とか、「歴史のある会社をどうしてつぶしてしまうの!?」とか。そして次第に人数は増えていき、ある噂が出回った。
今日も城下では人々の間で噂が躍る。
「ねえ、あの噂知ってる?もう一つの国、優華国が不満がっている私達国民に味方して、あの女王を説得していただけるそうよ!」
そんな声が地を這いまわる。歴史は繰り返す。歴史は繰り返される。どんなに残酷なことでも、人々はその頃の苦しみを忘れて踊らされる。あるいは、その苦しみを知らない者たちが…。
この噂は嘘ではない。国境近くを旅していた黒児が手紙で送ってきたのはその内容だ。私は、永遠に踊らされるのだ。地獄で、毎日…。
瞬間、城外でざわめきが起こった。私が慌てて外を見れば、予想道理に優華国の服を着たものが入口に向かって歩いて来る。そして次に、私のもとへ一人の者が駆け寄ってきた。
「大変で御座います!断りもなく、優華の者が勝手に城内に…」
「いいわ、通して」
「は…は!」
私は服装を整え、髪を軽く縛ったら客室に向かった。
扉を開けると、フードを深くかぶった者が客室にいた。
「ようこそお越しいただきました、優華国さま。このような場所に足をお運び頂き、ありがとうございます…」
私は音を立てずにそろそろと椅子に向かう。その者は小さくうなずいただけだった。お茶とお茶請けを出した後、私はその者と向かい合った。
「今日は、どのようなご用件で…」
まるでお店の店員のように相手を敬った。
「あなたは、国民が不満を抱いているのに気付いていらっしゃいますか?」
いきなりの質問に、私は少し顔をゆがめた。
「ええ、そうですね。私の歳、能力、政治の進め方、どれも国民には気に入らないことでしょう」
「…そうですか。…では」
いきなり、そのフードが目の前に迫ってきた。ナイフを持って。…避けようとすれば、避けられた。こういう時のための王位争いなのだから。…だけど、避けなかった。それが、私の覚悟だった。
「!?」
今一瞬、フードの隙間から見えたその眼は。
「黒児…?」
私は気が付けばナイフを捨てられ、手首を後ろで拘束されていた。
「…」
私が何の抵抗もしなかったため、フードの者はそのまま私を担ぎ、窓から飛び降りた。
私は目をつぶった。
「大丈夫。こういう時のために代理の国王は指名してあるんだから…」
私は目をつぶったまま運ばれた。
私が気が付けば辺りは真っ暗で、虫の声も聞こえてきた。きっと、今は夜なのだろう。…それよりも、ここはどこなのだろうか?そしてなぜ、私は眠っていたのか。そこが、気になるところだった。
「~~~」
「!!」
今、何かが聞こえた。とても小さいが、耳を澄まば何とか聞こえるくらい。
「…そうか、ご苦労だったな、~~じ。後は俺がやる。後はあいつが寝ているときだけ番をやってくれ」
「~~」
きい、ドアが開く音に驚いて、私は目をつぶってしまった。…もちろん、目をつぶったのはそれだけではないのだが。
「あ、おいこら、おまえ!そんなにライトを強くしたら起きちゃうだろ!?」
すぐに強い明りが消えた。そして、ドアが閉じて一人が出て行ったと思われる音が聞こえてから目を開けた。
「あ、起きた。おはよう、白蝶」
「…黒児は?」
その男の顔は「は?」という顔を作る。
「黒児?それ誰?ここは城ではないよ。寝ぼけているのかな?」
その様子では、きっと私に黒児は会わせてくれないだろう。だけど、私は見たのだ。絶対に。その眼を…。
「ここは、どこ?」
「んあ、ここ?ここは優華との国境の近く。大丈夫。近くと言ってもその真上だから」
「…そう…」
私は静かに目をつぶった。
「あれれ、抵抗なし?つまんない!…でも、反応は可愛いから遊んであげてもいいよ?わかってるんだから。さっき、起きてたでしょ?苦手な演技を頑張っちゃって。可愛いったらありゃしないよ?」
私は静かに目をつぶって動かない。そして、涙が流れないように上を向いていた。
「なにそれ、泣いてんの?あ、わかった。それ、キスのおねだりでしょ?可愛いなあ、もう!」
…いや、違うし。明らかに目から涙見えるし。頭おかしいのか、こいつ…。
そして、私はしばらく動かなかった。というのもあるけど、動けなかった。この男が私の顔を挟んで離さなかったから。そして、唇から温もりが去った後、最悪な気持ちが凄くたまって、涙が溢れるのにも構わず目を見開いた。
「わかっているわ。黒児は元々は優華国の者なんでしょ?記録されて死んだことになるのなら、私が調べた時に死亡リストから名前が出てくるはずだもの。最初から、私をだましていたのよ。あの会社をつぶされて困るのはあなたたちもそう。だって、向こうには殺害などの会社なんて無いものね。こっちに頼るしかないのよね。白蝶国が邪魔なのならば、会社をつぶせばいいんだわ。自分たちも困るけど、不老不死という能力者が王位に就いたら、自然と不満は生じてくるわ。そしてそれを利用して、さらにその上に歳と会社の問題を重ねれば自然と統率感がなくなる。後は王をさらえば逃げたと勘違いされ、国の信頼関係は崩れていくわ」
男は固まっていた。顔をゆがめて。…どうやら、泣いている私で遊ぶつもりだったらしい。そうはいくか!!私は笑った。いつものように。
「少し考えればわかることよ…」
その後、男は「クソッ!!」と言いながら私を放置。どこかに行ってしまった。
私は、そのまま動かなかった。逃げようと思えば逃げられてけど、これも、私の運命。普通に考えて、一生同じ王に政治を行われて嬉しいわけがない。支持されていれば別だが。
「っ…」
私は音もなく、ただただ涙を流した。初めて、自分のこの能力「不老不死」が嫌になった。一生死ねない。一生老いない。私の一生はないのだから。それは、パッと聞けば嬉しく思う能力だろうけど、なった本人はつらいだけだ。嫌な事…トラウマも、嬉しかったことも、楽しかったことも、永遠に覚えていて永遠に背負わされるのだ。そんなことになるのなら、私は死にたい…。
そう、涙して私は一夜が明けるのを待った。
朝と思われる時間、バンッとドアが開くのを感じた。いきなりの明かりに、目がついていけず、私はあのフードと勘違いした。
「ああ、安心して。私は逃げないから見張らなくて大丈夫よ…」
私は眠い目を擦りながら起き上った。
「白蝶さま!!」
「へ!?」
その声は、私が国王代理に指名した無能力者の子だった。
「白蝶さま、逃げましょう!!」
彼女は私の手首を不自由にしていたものを切断し、私の手を引いた。
「…ダメよ」
「!?何でですか」
「ダメなの…」
私はもう一度床に座り込んだ。
「私は、ここから出られないの。出てはいけないのよ…」
「…?どういう事ですか?見張りはいないので、今なら出られますよ」
私は力なく首を振った。
「ダメなのよ。私は不老不死。城に戻ったら私は再び王位に就かなくてはいけない。国民は、それを望んでいない。行ってはダメなのよ…」
彼女はその手を放した。
「…それなら、大丈夫ですよ…?」
彼女は、腕を大きく広げて言った。
「国民の皆さんが、こんなにもあなたのために集まってくれたのに、何が望まれていないんですか!?」
「…え?」
その時、次第に光に目が慣れてきて、後ろの光景まで見えるようになった。
彼女の後ろには、国民の一部が笑顔で立っていた。
「…だれも、あなたの帰りを嫌がる者は、いませんよ…?」
彼女は、静かに言い放った。その言葉が、どれほど私の目を熱くしたか。私は、昨日とは違う、幸せな意味で、涙を流した。
「…ありがとう…」
私は、そのまま車に乗せられ、がたがた揺られながら城に戻った。
その後の補佐はどうしたかというと、彼女が補佐をしてくれるようになって、黒児は補佐を辞した。彼女は私がいない間にあの会社を復活させたそうだ。ただ、その会社は別の事をするようになった。無能者を嫌がる人は多いから、無能者を預かり、そのまま育てることにしたのだ。そして成人したらその会社で働くか外にでて、お金の三分の一はその会社に流れて行った。勿論、この城にも働きに来てくれた。そうして、国は以前よりよくなった環境で再び統一された。その大きな仕事をした彼女の名は、楓花。一生私の補佐についてくれた優秀な子だ。そして黒児は補佐を辞した後は無能者を会社に向かわせるようにした。そして、私はというと…永遠に、ただただ仕事をした。補佐を入れ替えて永遠に仕事をこなした。そのうち、国民は私の事を認めてくれるようになって、三国位置の統一された国になった。統一されたため、軍も強く、平和になった。私の永遠は、最高の思い出で埋まった。
こんにちは、桜騎です!白蝶国は、今回この話で終了しました!次は、私の名前、桜騎の理由も書かれたお話になります。別の話もよろしくお願いします!




