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白蝶国  作者: 桜騎
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国王候補~始まりは運命に~

 ここ、白蝶国とは、不思議な力を操る者が集まる三国の内の一国。どの国も最強の能力者が王位につき、その最強の力によって国は統一されてきた。白蝶国は今、新王になる者の候補が浮かび上がっていた。


 不快だ。

 暗い。冷たい、寒い。今日の用意された一食もお腹を満たす前に尽きて、空腹が体を動かす気力をなくす。私は、日に日に少なくなっていく食料の入ったお椀を睨んだ。

 私は、もうすぐ死ぬ。ここは白蝶国だが、無能のせいで親にも見捨てられた。「私が死ぬのを、国は望んでいる」と言われた。私はそう言われても何も感じなかった。べつに死んでもいい。私は産まれてから何も慾がないことに、両親はひどく驚いたらしい。小さいころから慾がないと言われてきたが、本当は違う。慾がないんじゃなくて、私の興味をひくものがないのだ。

 私の興味をひくものがないのなら、私は死んでもいい。そう思った。だって、一生つまらないのなら死んだ方がましだ。私がそんな態度のため、親は私を殺せと専門に頼んだらしい。私は抵抗はしなかった。そんなことは知っていたから。そして、何日間も暗い場所に閉じ込められた。日に日に出される食料も減っていき、今では1日1食になっていて、量まで減ってきている。先ほど私は不快だと思った。日に日に食料を減らすのではなく、能力やら刃物やらを使ってさっさと殺せばいいのに…と思った。死ぬのにこんなに苦しむ必要がないと思ったからだ。

 …とそんなことを思っているとき、外から物音が聞こえた。さらにその後から足音まで。どうやら2人らしい。

「なあ、ここにいる111番、いつまでたっても死なないらしいぜ。ものすごく食料を減らしているのに動きが鈍くなるだけで、動こうと思えば動けるらしい」

「うわ、怖!化け物かよ…」

「まあ、ここは白蝶国。何が起きても不思議じゃねえ。…が、今回のは例外だ。もうそろそろ刃物で刺す決断されるんじゃねえの?」

「うわあ、かわいそ。せっかくここまで生き延びたのにな」

「ま、仕方ないよ。俺たちは金をもらってるんだ。…それに、いつまでたってもわが子の死亡が報告されないと、親がうるさい。さっさと殺る(やる)しかないんだよ」

…確か、私が111番だった気がする。…そうか、私、やっとこの怠さから抜け出せるんだ!そう思うと私は体を動かしたくなった。そして、舞った。疲れるまで。自分でもバカなことをしていると思った。が、私だって子供だ。見逃してほしい。そして、舞った疲れからそのまま倒れた。私はそのまま刃物の登場を待った。

  ~そして数日後~

 「よう、111番」

「やっと来たの…?」

「あ?」

「言いたいことはわかる。さ、早く刺して」

私は腕を広げて目を閉じた。そして、しばらく待った。

「…殺さないの?」

私は目を開けて、その男を見た。だが、その手には刃物は握られていなかった。

「ナイフは…?どうなってるの?」

「お…俺が訊きてえよ。刺したのに何でそんなに元気なんだよ!?食料減らしても死なねえし、何なんだよ、おまえ」

「え…?」

私は体を見下ろした。確かに胸にナイフは刺さっていた。しかも見事にビンゴ、心臓的中。なのに、全く体に変化はない。

「…どうなっているの…?」

「…おまえってまさか三国に一人しかいないとされる不老不死の能力者か?…いや、訊いても意味はない。刺されたり、事故に遭ったりしなくては自分の能力の事を全く知らなかったって事がある。…そうか、おまえは不老不死の能力か…」

男はしばらく考え、私に言った。

「ちょっと待ってろ」

男が部屋を出ていくと私は心臓からナイフを引き抜き、起き上がった。もちろん、血は出た。けど、傷口はすぐにふさがった。

「わぁ、すごい…」

この時、私は初めて死にたくないと思った。初めて、興味をひかれた。私の…この、自分の能力に。

 しばらくして、さっきの男の声が聞こえてきた。

「この部屋の、111番です」

どうやら、この会社の社長を連れてきたらしい。…私を、どうするつもりか。

「111番、来なさい」

「…?私をどうするつもり?」

男は私の手を引いた。

「む…そうだな、子供の能力は基本的親が管理することになっているから、まずは両親にこの事を伝える。それからは、親の判断だ」

「ほとんど、親じゃない。まずも何も、いらないわ。親に伝える、それだけ言えばいいことじゃない」

「おい!111番、口を閉ざせ。社長に向かって失礼なことは言うな!」

「…わかったわ」

私は男と社長にしたがって、親を待つことにした。

 「~~~」

この能力の事を私の親に話すと、親は今までの私に対する態度が変わった。

「まあ、そんな特別な能力がうちの子に!?」

「それは…とても誇らしい事だね!!」

…親なんて、自分勝手だ。自分が良ければそれでいい。私の一番嫌いなタイプだ。そんなことを私が考えていることも知らず、2人はニコニコと微笑んでいる。

「…でもねえ、どうしましょう?」

「ああ。まあ、そんな大きな能力を私達が管理できるかどうか。それが問題だな」

「では、しばらく私共にお子様をお預けになられて、お2人でゆっくり考えるのはどうでしょう?」

「…そうね、そうするわ。有り難う」

このとき私は、嫌な予感というものを感じた。

 「それでは、私どもはお先に失礼いたします」

社長はうなずいて2人を見送った。

「…では、111番はこいつと一緒に戻っていろ」

私は黙ってうなずく。

「おい、111番は前と同じ部屋でいい。ただし、食料は満足のいくまで与えろ。俺はこいつの記録がある場所まで行って来る」

「はいっ!」

3人は2対1に別れ、正反対の方向に進んでいった。

 しばらくして、私はさっきから気になっていたことについて男に訊ねた。

「あのさ、社長はあっちに何しに行ったの?」

「んあ?…ああ、社長はおまえの生まれた時の記録を書き換えに行ったのさ」

「記録…?」

「おまえの記録だ。別の国では、記録を取らない所もあるらしいが、この国では取っているんだ。おまえの生まれた日、名前…能力。それで、能力がない奴は記録はされるが、親はその子を殺そうとするんだ」

「…何で?」

「…そりゃあ、この三国は能力者の集まる場所だ。べつに、能力があるから集まるってわけでもないんだが、能力者の子が無能だったら周りからの目が嫌だろう?」

「…べつに」

「子供はどうでもいい。遺伝子を受け継がなかっただけだからな。…だが、親はどうだ?子に引き継がせるような強い遺伝子を持っていなかったと考えられる。親が無能だと思われるんだ」

「…そんなのは、変だ」

「あ?」

私は俯きながら歩いた。…そんなのは、変だ。確かに子供が能力の遺伝子を引き継がなかったことはそうかもしれない。親のみも。だが、だからと言ってわが子を他人に殺させるやら、食料を減らすやら、自分のつらさを子に押し付けるものではない。

「…ま、気持ちはわからなくもねえ」

「…嘘だ!」

「本当の事だ。…俺だって昔は殺されかけた」

「…え?」

「俺は昔は無能だった。勿論今もだ。だが、救われた。社長の手によって」

名も知らないこの男の事を聞こうとするのはおかしいかと悩んだが、ここで聞かぬとするのは何となく嫌だった。

「俺もおまえと同じように、食料を減らされてもなかなか死ななかった。だから、俺も刺そうとされた。俺はおまえと違って死ぬのが嫌だったから、暴れたんだ。その時の俺は大人の男数人係でも抑えきれなかったから、この仕事につかないかと社長に誘われた。人を殺すのは嫌だったけど、生きるためだ。…だから入ったんだ。そして刺さなければならないものもいて、それが昔の俺と重なったから今でも俺はあの時の気持ちとつらさは忘れていない。…だから、おまえの気持ちのわかる。…ま、俺は記録では死んだことになってるんだけどな?」

…そうだったのか。私は、自分についた番号を思い出した。111番。その数を、いったい何人の人が覚えて、付けられて、その下で苦しんだのだろう。そう思って、私は幸運だと知った。

「ま、俺はこんな仕事なんてなくなってほしいけどな」

「…でも、そうなったらあんたは…」

こいつは、代償として死ななくてはいけなくなる。記録では、こいつは死んでいるのだ。名前も記録もないこいつが、いったいどこで働けるというのか。

「ま、いいよ。どうせいつか死ぬし、運が悪かったらあの時死んでたんだ。今更どうとも思わねえ。…でも、もしおまえが俺を生かしてくれるようにまでなれたら、その時俺が生きてたら、この仕事をつぶして、俺も生かしてくれねえか?」

「…うんっ!」

今日初めて会ったのだけれども、私はいつの間にかそんなことは気にしなくなっていた。

 「お、おまえらやっと来たか。待ちくたびれたぜ?」

「しゃ、社長!?何故私達よりも速く…?ここはあっちとは倍近くあるのに…」

「111番の記録を塗り替えようとしたらよ、たまたま国王陛下がいて、不老不死の能力の持ち主が欲しいとか…」

「おい!これから国王候補になる私の娘に何て呼び名を!?」

「も、申し訳ありません!!」

…意外。社長もこんなにぺこぺこすることなんてあるんだ?私は新鮮に思った。そんなことを思っていると、国王陛下と呼ばれた人と、目が合ってしまった。

「~~~~」

私はどうすることもできずに固まってしまった。国王はつかつかと私に歩み寄ってくる。

「君が、不老不死の能力者かね?」

「…う、あ、う…あ、はい…」

私は今までに見たことのない豪華な服に目がくらんだ。

「そう緊張するな。私は歴代の中でも、一番話しかけやすいと評判なんだよ?」

…そんな国王陛下がいるのか、と私は思った。まあ、他の国では平民は全く国王陛下に会えない国もあるらしい。この国の国王に人気があるのは否定しない。

「それで、不老不死の君に城に来てほしい」

「…え?」

私はついつい国王陛下の前で変な声を出してしまった。慌てて口を押える私を国王は笑って手を振った。

「べつにそんな1回のミスなど気にしなくて良い。もし、君が城に来てくれるのならば、私は君のお義父さんになるのだからな?」

…いくら父親でも、国王なのだから敬わなくては駄目だろう。

「…そっか。この三国は強い能力者が国王を務めるのだから、血がつながってないで外から来てもおかしくないんだ」

「…ん?まあ、そういう事だな」

 「あ、あの、国王様」

「ん?なんだ?」

「この国は先先先代の国王様が、不老不死の能力者は候補にダメと決められましたが…」

「よいよい、そんなもの。先先先代とは関わりが全くないのだから、そんな他人の決めたルールなど、破ってよし!」

…いや、よくないだろう。まず、不老不死の能力者が王位ならず、候補にさえ入ってはいけないのは理由があるだろう。まず、国王は王位争いで決まる。そんな争いを、不死の能力で勝っちゃいました、何てありえないだろう。そして、もし王位につけたとして、不老の能力で政治の中心人物がいつになっても変わりません、じゃあ国民も困るだろう。それに、もう候補の人たちはお城で毎日稽古をしていて、候補がどんどん絞り込まれていく中で途中から「新人でえす!今日からよろしくお願いしまあす!」とは、どういう事だ!?とにかく、私は王位にはつけない。はい、決定。ここで私の物語は幕を下ろしましたとさ、ちゃんちゃん。

 「…いや、終わらないぞ!?」

「!?」

「ふっふっふ~」

国王様は自分を親指で指をさした。

「この私を誰だと思っているのかね?私は国王だよ。今、この国の中で一番偉いのだ!!」

…つまり?

「私がそんな決まり事を変えて見せよう。さあ君!私と来るのだ。おまえはそこでは頭を使う以外何もしなくていい。王位争いは黙って寝ていればいいのだ」

「…えっ?……えぇ~~~!!?」


 これは、私のまさかの日常が始まる前のお話。

 こんにちは、桜騎です!!今回もまた、本当にごめんなさい!ついつい、始まりだからと勢いがついてしまいました。おかげで予定していなかった4000文字代。いつかの2000文字代より本当にすみません!読んでくださっていた方が飽きてしまったと思うと…。「んぎゃあ―――――――!!」(心の叫び)すいません、本当に、前回の事もあって反省はしています…。ごめんなさい。

次回ももしかしたら超えてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします!

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