バラバラになった歯車
後半になると指定がつくないようになる。予定
壊れてしまったものはそう簡単には直らない
ずれてしまったものはそう簡単には直せない
―――そして、どこかが欠落すると、すべてが狂い出す
「お前は、なんで、そう簡単に自分を犠牲にできるんだよっ!」
俺はアイツに向かって叫んだ
「……別に、拓也には関係ないでしょ。それにあの娘を助けられるかもなんだよ?」
「……だから、なんだよ」
「あんた……嬉しくないの? あの娘が戻ってくるかもしれないんだよ? だったら私が犠牲になるくらい――」
「だからどうしたって言うんだっ!」
俺が怒鳴ると、アイツは少し怯みながらもまだ言ってきた
「だから……だからっ、拓也は、あの娘が帰ってくるんだから嬉しいでしょっ!」
「嬉しいわけないだろっ!」
「っ!?」
俺はアイツの肩を思いっきり掴んだ。
アイツは一瞬痛みで顔を歪ませたが、すぐにいつもどうりの……すべてが狂い始めたあの日から当たり前になってしまった、いつもどうりの偽物の笑顔に戻った
「な、なに言ってるの? あの娘がいなくなって、一番悲しんでたのは拓也じゃない……。だから……だからっ、私は拓也のために、あの娘を助ける方法を……探してたのに……」
アイツの表情は偽物の笑顔。でもその頬には、一滴の涙か伝っていた
「お前……」
「私はっ、拓也さえ幸せなら、それでいい。拓也が笑顔になるなら、あの娘を絶対に助ける……たとえそれが私の命と引き換えでも。ううん、私の犠牲で拓也が笑顔になれるなら、私はそれだけでしあわ――」
アイツはその先を言わなかった。いや、言えなかった。俺がアイツの頬を叩いたからだ
「……なにするの――」
「ふざけんなよっ!」
俺はアイツの言葉を遮る
「俺が……俺がいつそんなことを頼んだ? 頼んでないだろっ!」
俺はアイツの目を真っ直ぐに見つめる
見つめられたアイツは少し顔が赤くなっていた気がしたが、アイツが顔を伏せたのでよくわからなかった
しばらく沈黙が続いたが、アイツがぽつりぽつりとはなしだす
「だって……だって、拓也はあの娘ことを、その、アレだったし……あの娘も拓也に……あったし……それに」
アイツの肩が震えている
「私がいなくなっても、あの娘がいれば、拓也は寂しくないでしょ?」
「っ!」
アイツの表情は寂しそうなものになっていた。
あの日に……いや、それよりもずっと前からアイツがたまに見せていた表情……
「馬鹿野郎っ!」
「ちょ、ちょっと拓也!?」
俺はアイツを抱きしめた。
アイツはしばらくあたふたしてたが、俺がさらに強く抱きしめると、アイツはなにかを感じ取ったのかおとなしくなった
「馬鹿野郎……お前がいなくなって、俺が嬉しいわけないだろ……!」
「拓也……!」
「お前が俺のために頑張ってくれるのは嬉しい。あの娘が戻ってくるのも嬉しいよ」
俺はそこで一回句切り、
「でも、お前がいないのは嬉しくないっ!」
「っ!」
アイツの顔は驚きに満ちていた
「俺が求めてるのは、あの娘が戻ってくることじゃない。また、三人で楽しく過ごしていた、あの楽しい日々を、あの時間を取り戻したかったんだ!」
気づけば俺の頬にも涙が伝ったあとがあった
「拓也……ありがとう。それにごめんね」
「なにが?」
俺が聞くとアイツは、俺の腕から抜け出して、俺から離れていく。……まるで距離をとっているような……
「あの日から、私が色々な危ないことに挑戦してたの、しってるよね」
「う、うん」
「……だから、だからごめんね。心配かけてごめんね。今までいろいろごめん」
アイツがこんなことを言うのは初めてだ
「それにありがとう。今までたくさんありがとう。私の幼馴染みでいてくれてありがとう」
「あ、うん……どうしたんだ急に……」
これじゃあまるで……永遠の別れみたい――
「っ!」
「だから、ごめん。やっぱり私はあの娘を助けにいくよ」
アイツの足元には魔方陣みたいなものができていた。
アイツが研究の末に見つけた、世界の歯車をバラバラにする魔方陣。世界の壁をこえる力
「まてっ、それを使ったらお前が……お前が死ぬぞ!」
世界の歯車をバラバラにするにはすべての力を使いきる
「ダイジョブだから。世界の歯車をバラバラに……運がよければあの娘も、私も戻ってくるから」
アイツの体が光に包まれていく
「そんな保証どこにもないだろ!」
「拓也……私は運がいい女だよ! だから……」
アイツの体はほとんど光に包まれていた
「だから、私が帰ってくるまで、待っててね!」
アイツの体が完全に光に包まれ、そして消えた
「……李……絶対……助けるから……」
俺はそのまま気を失った
壊れてしまったものはそう簡単には直せない
ずれてしまったものはそう簡単には直せない
――そして、あの日からすべてが狂い始めた
もう、あの日には戻れない
頑張って書いた
結構本気で書いた