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第7話 価値観

おにゃのこ成分低めです


麗らかな午後のティータイム時。


カランとドアベルがなり、来客を告げる…そこから現れたのは深紅の鱗を纏った龍人:ドラゴニアスと呼ばれる種族の青年だった。


「いらっしゃいませ。」


来客を迎えて、僕は手に持ったグラスに態とベタベタと指紋を付ける作業を一時止めて彼の手元の袋に視線を奪われる。


「やぁ、店主…相変わらず客が無くて暇そうだね。」


獰猛な…ドラゴニアスの観点で見れば爽やかな…笑みを浮かべて彼、ラニアスは手に持った袋に手を突っ込んで中身をカウンターに広げ始める。


「相変わらずって…君が来る時間帯がたまたま客が来ないだけだよ。」


「ふーん、まぁ、そういうことにしておくよ。」


苦笑を浮かべる僕の言葉を軽やかにスルーして彼は鼻歌交じりに袋から次々と荷物を取り出しては並べていく。


彼が取り出しているのは数種類のハーブと薬草等の植物が多くを占めていた。


一部鉱石や装飾品もあるが殆どが植物でこの地域にはあまり生えていないものが多い。


「いつもありがとう、ラニアス。」


「なに、里帰りついでに友人に頼まれたものを採って来ただけだよ。」


獰猛な…ドラゴニアスの価値観では柔和な…笑みを浮かべて彼は席に着く。


そんな彼の目の前に全長60センチはあるパフェを置き、彼が持ってきてくれた薬草やハーブを厨房裏に持って行き、後で選別作業をする為に机に置いておく。


厨房裏から出てくると獰猛な…ドラゴニアスの観点では嬉しそうな…笑みを浮かべてパフェに食らい付く彼を見て苦笑を浮かべる。


ちなみにこの時間帯にお客が少ない、又は来ないのは彼がこの時間に顔を出すからだとは口が裂けてもいえない。







ドラゴニアスという種族は簡単に言うと二足歩行をするドラゴンである。


どちらかと言えば西洋のドラゴンに形が一番近く、彼らの特徴といえばその属性毎に鱗の色が変わるのである。


赤ならば炎、青ならば水、翠なら風、茶なら地とそれぞれに分かれていて、鱗の色が鮮やかであればあるほど彼らは力強いのである。


近接戦闘を好み、闘争本能が強い彼らが一人でもパーティーに居ればそのパーティーランクは一つは上がると言わしめる程に彼らは強い…が、その見た目からか中々パーティーメンバーに誘われることが無く、大抵のドラゴニアスは一人で行動しているのが多い。


ラニアス曰く、笑顔を浮かべるといつ食われるか判ったものじゃない。と言われて断られ続けたらしい。


今では悠人さんのパーティーに入ってるラニアスであるが入るまでは人間不信に陥る一歩手前だったとか。


上記の理由によって人間不信になる事も少なくない彼らの生息地にはこの迷宮都市付近では手に入らないハーブや薬草がたくさん生えているので月に一回ラニアスが帰省する度にこうして採ってきてもらい、その値段相応の食券を渡しているのだ。


現金を渡そうとしたらラニアスは「タダ同然で手に入れたものだしそれは悪い…現金より甘い物が食べたい。」と獰猛な…しつこいがドラゴニアスの観点で見ると朗らかな…笑みでそれを一蹴、ならばと渾身のパフェを作り上げて彼に出すと非常に喜んで頂き、それ以降彼への報酬は全長60センチのパフェとなったのだ。












再びドアベルの音が鳴った。


「あー!お父さん帰ってきてたのーっ!?」


「ラ、ララ!?」


ドアを開けて飛び出してきた幼女はラニアスの姿を見つけると電光石火の勢いで飛び掛る。


そう、この事から判るように彼、実は既婚者なのだ。


相手は人間の女性で結婚した理由が「私、爬虫類って好きなのよね~♪」とあんまりにもあんまりな理由で結婚したらしい。


なにより人間の男より爬虫類が好き!と公言している辺りどうかしている。


そんな夫婦の間に産まれたのが目の前の幼女、名をララと言う。


母親譲りの美貌に父親譲りの真っ赤な髪、耳の後ろから生えているドラゴニアスの象徴とも言える枝の様な角にお尻から生える真っ赤な鱗を纏った尻尾。


俗に言うハーフドラゴニアスの彼女はその外見からは想像も出来ないがかなりの力持ちである。


この間も僕のお手伝いするー。と言って僕が持ち上げられなかったお酒の入った樽を軽々と持ち上げた事は記憶に新しい…あれ?何故か眼から心の汗が…っ。


それは兎も角そんな彼女が電光石火の勢いで父に飛び掛ったのだ。


まるでガードレールに思い切り突っ込んだ車の様な音を立ててラニアスの胴体にしがみ付くララ。


具体的に言うとドガッ!とかいう音が聞こえた。


それでも体勢を崩さない辺り流石と言うかなんと言うか…ラニアスは獰猛な…ドラゴニアスの観点で言うとデレデレした…笑みを浮かべて娘の頭を撫でていた。


もう何と言うか人間もドラゴニアスも男親は自分の娘には甘い物だと僕は苦笑を浮かべるしかなかった。





















次の日、朝早くララちゃんは店の前に立っていて僕のお手伝いするー。と言って勝手知ったる人の家とばかりに酒蔵に入り込んで僕一人では持てない酒樽を店の厨房まで持ってくる作業を手伝って貰った。


…人には向き不向きがあるんだよ。


手伝って貰ったご褒美にお父さんと同じパフェを差し出すとそれはもうキラキラした眼でぱく付いていた。


…べ、別に泣いてなんか無いんだからねっ!


ちょっと鍛えようかなと思ったのは僕の秘密だ。






おにゃのこ成分が…っ!足りないっ!!

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