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第17話 それって…?

ストックが…きれt(ry






少し肌寒くなってきた早朝、新聞配達の獣人の少年に朝の挨拶をし、新聞を受け取る。


見出しに載っているのは迷宮での新たな発見や昨日の出来事、今日の占い等、特筆する物は無く、そのまま店内で朝食を作り、銀子さんとルナちゃんを起こし、朝食を食べる。


朝食が終わり、銀子さんを見送り…ルナちゃんと共に開店作業に入る。


勿論、仕込みや在庫確認等は僕が担当し…ルナちゃんにはテーブルやガラスを拭いてもらう事にする。


以前、庭を掃かせていたら何故か集まったゴミが数秒後に散らかっているという謎の現象が起きていたのでそれ以来、店内の簡単な掃除を重点的にお願いしているのだ。


開店時間を迎え、何時もの常連が何時もの席に着き、何時もの飲み物や食べ物の注文を捌いていく。


偶に一見さんがやって来ては物珍しそうに店内を眺めたりしているのだが…


今日は開店してから一見さんの量が多い事に気がついた。


この迷宮都市ではあまり見掛けないパーティーで店内をざっと見てみると左肩に月と狼の紋章が入った服を着た冒険者が多数を占めていた。


彼らはチラチラとルナちゃんを見ながら…彼女の首元を見て憐れんだような視線を向けている。


そう言えば…と思い出す。


隣国の都市では奴隷は全面的に認められておらず、奴隷を解放する組織まで都市を挙げてやっている程だ。


しかしそんな国でもやっぱり奴隷は居るわけで…その扱いは相当酷いと聞き及んでいる。


そんな奴隷の証である首輪を付けている同属を憐れんでいるのだろう。


先程からルナちゃんを見る度に顔を俯かせたり、悔しそうに歯軋りしている。


仕舞いには僕を殺さんばかりに睨み付ける若い獣人まで居る始末。


どうしたものか…と店内の空気が張り詰めている事に漸く気付いた。


…ちなみに常連はそそくさと店を出て行っている。


「おい、店主。」


ガタッ、とその中でリーダー格と思しき狼顔の青年が立ち上がる。


それに続くように数名、手練だろうか…立ち上がる。


青年の目は此方を映しており…今にも食い殺してやると言わんばかりにギラギラと輝いている。


「そこの奴隷を今すぐ解放しろ。」


静かに、しかし有無を言わせぬ圧力を持って彼らは僕に向かって剣を抜いた。


「…お客様、店内での抜刀は他のお客様の…」


「今すぐ奴隷を解放しろ。」


チラリと青年が視線を向けるとルナちゃんがビクビク震えながら僕の服の裾をきゅっ、と握り締めていた。


果てしなく面倒な事になったと思いながら青年が向ける切っ先をぼんやりと眺める。


面倒だなー。と思いながら、まだ穏便に済ませられる猶予はある。


一つ、溜め息を吐いて僕は口を開く。


「…お客様、これが最後です、直ぐに納刀してください…でないと…。」


「ふん、人間風情が…貴様の言うことなど誰が…っ!?」


そして僕の最終警告を無視した青年は…突如現れた人物に殴り飛ばされるのだった。










「…で?なんでウチの店で暴れたのかな?」


スッキリした顔で地に平伏す獣人達の屍の山で唯一立っている人物…銀子さんはリーダー格の青年ににっこりと微笑む。


狼顔の青年はビクリと震えて正座になる。


赤くなった頬っぺたと巻かれた尻尾が哀愁を誘う。


…ちなみに銀子さんが彼を殴り倒し、馬乗りになって往復ビンタをする事30分。


その間、周りの冒険者は止めようと銀子さんの間合いに入って蹴り飛ばされ、殴り飛ばされ…挙句の果てにはビームを撃たれと散々な目に遭っていた。


ガクガク震えて要領を得なかったが彼が言ったことを纏めると…


彼らは奴隷解放組織の一つで最近、この迷宮都市に連れられた奴隷を解放しようとやってきたのだ。


何でも獣人が多く連れられている事もあり、獣人族で固めた彼らがやってきたのだ。


銀子さんはふむふむ。と頷き…ルナちゃんを手招き…そして…。


ルナちゃんにボソボソと耳打ち。


ルナちゃんは頷いて狼顔の青年の前に立つと…


「わ、私は…ここの従業員で…ま、ますたーの…お嫁さんになるんですっ!!」


とんでもない事を公言したのである。














彼らはそれぞれ怪我の治療を各々がして帰って行った。


去り際にお幸せに。とか彼女を幸せにしろよー!とか…その、そういう趣味はどうかと…。と言葉を残して去って行った。最後のは思わずお盆を投げてしまったが致し方ない。


彼らが帰って、荒れた店内を直す為に臨時休業の札を張り…僕は溜め息を吐いた。


ふと、くいと袖を引かれて其方を見る。


其処には顔を俯かせたルナちゃんが居て…ぽろぽろと涙を零していた。


「ま、ますたー…その…ご、ごめん…な、さい…っ。」


しゃくり上げながら泣いているルナちゃんに僕は苦笑を漏らすと彼女と視線を合わせるようにしゃがみ込む。



「…まぁ、今回のは稀なケースだから気にしていないよ…それに僕は全然怒ってないし…隣の都市の情勢を気にしてなかった僕も悪いしね。」


「でも…。」


「そ・れ・よ・り・もっ!…まずは皆で…片付けをしようか?ね?」


話を切り上げて、荒れた店内を見渡す。


既に銀子さんは掃除を始めていて…テキパキと倒れた椅子やテーブルを直していっている。


僕も手伝おうと足を進めた瞬間…袖を強く引かれ、踏鞴を踏む。


そっと僕の耳元にルナちゃんは口を寄せ…小さく呟いた。


「ちょっとは気にして欲しいです…。」


…それってどういう…?


聞こうとしてルナちゃんは銀子さんの下に駆け寄ろうとして…盛大にこけたのだった。



















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