第13話 ニートと無邪気な恋心
仕事が忙しくて書く暇がありませんでした。
申し訳ないorz
夏も過ぎてようやっと涼しくなり始めた季節の変わり目にそいつはやって来た。
「やぁ、店主、久しぶりだね。」
にこやかに挨拶をしながら入店するそいつに僕は苦笑を浮かべて言い返してやった。
「やぁ、ニート…久しぶりと言っても昨日あったばかりなんだけどね?」
おや、そうかい?なんて言いながらそいつはにこにこと笑いながらカウンターに腰掛ける。
背中に生えた翼に物凄く鋭い鷹の目の様な眼差し、金糸の様に輝く金髪を腰まで伸ばしたその美貌に均整の取れたボディラインに数多の男が彼女に言い寄ったらしい。
しかしそんな彼女には思わぬ欠点があった。
「ところで店主、働かなくてもいい職場ってないかな?」
「黙れ、ニート。」
そう、彼女ははたらきたくないでござる!と公言するお馬鹿なのであった。
世の中には働きたくても働けない人が居るというのにっ!と内心憤慨しながら彼女に注文された品を作り、出す。
「うん、相変わらずユウの作る料理は絶品だ…どうだい?私を養うという永久就職は?」
「断る。」
それは残念。とにこにこと笑いながらパスタをつつく彼女に僕は溜め息を吐いてフライパンを洗う事に専念する。
こう見えて目の前の彼女、名前はニートと言い、冒険者である。
翼人で、空中からの弓での狙撃を得意としており、こんな性格だが結構上のランクの冒険者なのだ。
しかし生来の性格からか本人の本質かわからないが彼女がその役割を果たす事はあまりない。
一人で迷宮に行く時は仕方なしにと単身潜り込んで当面の生活費を稼いで戻って来る事が多く、パーティを組んで行くと、その殆どを仲間に任せるという迷惑極まりない人なのである。
それでも腕は確かだからかそれともその美貌からか彼女を仲間にしたいという冒険者は結構多い。
そんな彼女は目の前で「あぁ、働きたくないなぁ。」と呟きながらパスタを突いている。
暫く放って置くと彼女はブチブチと愚痴を呟くと何か思いついたのかポン、と手を叩くと此方に視線を向けて良い事思い付いたとばかりに僕の手をとる。
「どうだろうか?私を養うというとても楽しそうな職が…」
「黙れ、ニート。」
握られた手を振り払う僕に変わらず「おやおや。」と笑顔を浮かべると何事も無かったかのように再びパスタを突きだすのだった。
あの後何度も同じ様な遣り取りをして漸く彼女が帰った頃に新しい客がやって来た。
「やぁ、店主、相変わらず客が無くて暇そうだね。」
何時ものように獰猛な―ドラゴニアスの観点で見れば朗らかな―笑みでやって来た彼の手にある物を見て僕は思わず其方に視線が行った。
それに気付いたのかラニアスは僕にそれを手渡すと面倒臭そうに中身を語りだすのだった。
「ははは…知り合いの商人から押し付けられてね…仕方なく受け取ったんだが…」
彼にしては珍しく困った表情で頭を掻く姿に僕は自ずとその包みが気になってその包みを剥がそうと手を伸ばす。
「あぁ、あまり迂闊に触れないほうがいいかもね…何しろ呪いの品らしいから。」
その言葉を聴いた瞬間、僕は慌てて手を引っ込めるとラニアスに視線を向ける。
その表情はどこか疲れていて…新婚ほやほやだった頃のラニアスを思い出させる。
あの時はラニアスが窶れていて奥さんが矢鱈と艶々していたのが印象的だった。
まぁ、過去のことは良い…取り敢えず目の前にあるコレをどうするのかを考える事にする。
「残念ながら銀子さんは今は…」
「あぁ、別に焦るものでもないからゆっくりで良いよ。」
呪いの品はこの間の件で十分だ。
こういう呪いの品の『処理』は基本的に銀子さん任せである。
よくこうやって呪いの品を力づくで解呪しているのを知っているのだろう。ラニアスは苦笑を浮かべつつカウンターに腰掛ける。
「あぁ、それと娘が君に会いたがっていたよ。」
それは楽しそうに、しかしどこか寂しそうに話すラニアスに僕は苦笑で応える。
「…子供の成長は早いものでね…もう心は立派な淑女なんだろうね…どんどん男親から離れていくのさ。」
哀愁漂う彼の姿にただただ苦笑を浮かべるしかなかった。
「まぁ、店主みたいな人なら僕も喜んで娘を嫁に行かせられるんだけどね。」
最後の言葉に僕は思わず手に持った布巾を投げ付けてしまった。
数日後、ララちゃんが遊びに来た。
なんでもお母さんから『今日はお母さん達は一番好きな人と過ごすから貴女も一番好きな人と過ごしなさい。』と言われて来たらしい。
カレンダーを見ると今日はラニアス夫妻の結婚記念日であった。
ニコニコと無邪気な笑顔を浮かべて僕を見上げるララちゃんと何時着たのかニヤニヤと笑みを浮かべるアーべに僕は溜め息を吐くしかなかった。
あぁ、働きたくないでござる!
でも働かないと生活が出来ないでござる!orz