第12話 僕の休日って…
仕事忙しいですorz
今回は主人公がいまさら気付いた事。
何時ものようにゆったりとした午後。
周りには何時もの常連が思い思いに過ごしており、コーヒーの芳醇な香りが室内を包み込む。
「あぁ…平穏って素晴らしい…。」
思わず呟いた僕はグラスを拭きながら店内を見渡す。
ラニアスは今日は娘と嫁と家族で海に行くとか言ってたし…アーべは今日は迷宮に探索に行くとか言ってたなぁ…。
銀子さんは悠人さんのパーティと一緒に迷宮に潜ったし…ロリは知らん。
最近ちょくちょくと顔を出す半常連と化してきている人達も居るには居るが…なんというか騒げないとかそういう理由であまり来る事は無い。
あぁ、今日は全く持って平穏な日常ではないかっ!
そう考えてふと思いつく。
あれ?僕って休日いつもなにしてるんだっけか?
そもそも僕に休日ってあったっけ?
此方に来てから大分経つけど…休日って貰った事無いよなぁ~。
……そこまで考えて僕は気付いた。
僕に休日と言うものは…無い…だとっ!?
あまりに暇すぎて変な所まで行ってしまったがその間にお客様から来た注文はキチンと聞いている。
少し離れた場所にあるボックス席を陣取る同じ様な服を来た…まぁ、俗に言う学生みたいな感じの人達の注文の品を作っているわけで…。
ちなみに学生みたいなと評したが、事実彼らは学生であり、この迷宮都市を研究する研究所の学生である。
その分野は多岐に渡るが最も多いのがモンスターを解剖したり、巣に潜り込んだりして生態を調べる事なのである。
中には冒険者科と言って冒険者になる為のイロハを学ぶ者も居るのだ。
まぁ、そんな彼らは割合この喫茶店を利用してくれる。
学生故に酒場等、冒険者が屯する所を利用すると周りの冒険者達から洗礼を受けることもあるのだ。悪い意味で。
その点喫茶店だと周りがお節介を焼きすぎることも無く、程好い距離で助言をしてくれたり、我関せずを通す人が殆どだからだ。
まぁ、この喫茶店で騒げば怖い銀色の悪魔が出て来ることは有名なので騒ぐ馬鹿が居ないともいうが…。
そんな理由でよくここを利用する学生も多いと言う訳だ。
今日来ているグループは冒険者科の生徒が3人と研究科の生徒が2人。
男2、女3の割合でそれぞれ仲が良い。
よく僕にも話しかけてくれるし、僕からもドリンクをサービスした事もある。
しかし今日は何かそわそわしているように見える。
「あ、マスター。」
「はい?」
そんな5人の中でマスコット的なキャラだろう白銀の髪を二つに結い上げた見た目少女な子、名前は確か…そう、セレス・ラグドリアス。
彼女の身長は僕の胸ほどで、必然的に僕が見下ろす形になる。
琥珀色の目をしており、何より目を惹くのがその胸部装甲である。
同じような身長のロリとはまた違ってたわわに実ったその果実は幾人もの男の視線を独占したのだろう。
時折彼女の友人の一人が恨みがましい視線をその胸に送っているのを見たことがある。
「あ、あのね…マスターって…。」
そんなセレス嬢がもじもじと上目遣いに頬を染めて此方を見上げてくる。
そんな表情にグッとくる物があったがそれを追い払って彼女と視線を合わせる。
そうしないと自分を保てなくなりそうで怖かったからだ。
「なんだい?」
「えっとね…好きな人とか…いる?」
思わぬ言葉に僕は固まってしまう。
思い出すのは元の世界。
恋人は居なかったよ…幼馴染みないな子はいたけどね。…ただし女顔の男。
あいつが女だったらと何度神を罵倒したことか。
それぐらい可愛かった。
まぁ、それは置いておいて…目の前のセレス嬢はじっと此方を見つめている。
その琥珀色の眼差しに僕は少し苦笑を浮かべて言った。
「残念ながら今のところは居ないね…。」
ちょっと…いやかなりの自嘲を含んだ笑みでセレス嬢から視線を逸らす。
ふん、どうせ僕は彼女居ない暦=年齢ですよーだ。
「そ、そっか…それだったら…」
セレス嬢は何かを決意したように呟くと僕に向かって指を突き付けた。
「わ、私が…マスターをメロメロにしてみせますっ!!」
こう、ビシィッ!と擬音が付きそうな勢いで突き付けられた指に僕は唖然とするしかなかった。
ちなみに離れたボックス席でこっちを見ていた4人は大爆笑。
あぁ、そうか…これはきっと罰ゲームなんだろうなぁ…。
なんかさっきからコソコソなにかしてたし、セレス嬢も恥ずかしいのか顔は真っ赤だし。
まぁ、空気を読める男として僕はウザやかな笑みを浮かべて応える。
「あぁ、楽しみにしているよ。」
言った途端背後の樽から物凄い黒いオーラが放たれた。
ちらりと視線を向けると先日出てきたあの剣である。
やはり呪いの剣だったか。
セレス嬢に視線を戻すと顔を真っ赤にさせたセレス嬢が「えっ?嘘っ!?ゆ、夢じゃないよね!?」と何故かテンパって居る。
取り敢えずこのカオスな空間をどうにかしたい僕なのだった。
ちなみにこのカオス空間は学生たちが帰るまで続いた。
その後店仕舞いしていると目の前に先日見かけた黒髪の美女が現れて僕に掴み掛かり…
「この浮気者!!」
と涙目で僕を前後にがっくんがっくん揺らすのであった。
…あ、何かお腹から込み上げて…。
「ちょっ、それ以上揺すると…吐…うおぇぇぇぇっ!!」
「ぎにゃぁぁぁっ!!」
主人公はもげてしまえばいいとおもうよ。