第1話 喫茶―蒼翠―(sousui)開店します。
初めての投稿です。
勉強不足な所も多々ありますが指摘等ございましたらお手柔らかにお願いいたします。
ほぼ思いつきなのでプロットは全く組まずに思いつくままに書いてます。
その為に途中で更新も滞ると思われますので申し訳ありませんが過度な期待はしないでください。
異世界喫茶物語
迷宮都市。
ここは神代の時代に建てられたという謎の多い迷宮を探索するために作られた都市である。
その迷宮の中には神代の武具、文献、宝物等、歴史的に大変貴重なものが埋まっており、それを守るかの様に迷宮内ではモンスターが蔓延っている。
それらを退治しながら迷宮に潜り、探索をする者たちがいた。
人は彼らを冒険者と呼び、彼らの活躍に憧れ、それと同時に圧倒的な力を持つ彼らを恐れた。
ここはそんな世界で、僕は今日も店の扉の札を切り替える。
―喫茶:蒼翠-sousui-―開店します。
カランとドアベルがなり、今日一番目の客に僕は磨いていたグラスを脇に置く。
やって来たのはここの常連で少し頭の弱い冒険者である、ちなみに美人。
「いらっしゃいませ…と、キュリエルさんじゃないですか…久しぶりですね。」
「やっほー、元気にしてた~?ゆーくんは相変わらず硬いわね~。」
天真爛漫、そんな言葉が似合いそうな彼女に苦笑しつつ、目の前のカウンター席を陣取ってニコニコと笑っている彼女にアイスティーを淹れる。
ありがと。と礼を言う彼女に笑みで返し、最近起こった事や世界情勢など、世間話をしつつ彼女の頭に付いているピコピコと動く猫耳を眺めていた。
僕がこの都市に来たのはほんの5年前のことだ。
元の世界でトラックに撥ねられて気が付けばこの世界の迷宮の32階層目に寝転がっていた。
偶然通りかかった冒険者であり自分の命の恩人である銀子さんに拾ってもらわなければ今頃はモンスターの栄養となっていたことだろう。
銀子さんの話では食べられる寸前だったとか。
僕がなぜこんな場所にいるか聞かれたときは困った。
正直に話して信じてもらえる内容でもないし、迷宮から出て外の風景を見てなんとなく「あぁ…もう帰れないんだな」と不思議と納得してしまった自分にも愕然とした。
ならばと銀子さんは僕にいろいろな事を教えてくれた。
この世界で生きていく以上の最低限の常識と知識、自衛の為の護身術まで教えてくれたことには感謝はしている、厳しかったけど。
この店喫茶:蒼翠も銀子さんの所有する店である。
彼女に少しでも恩を返すために僕はこの店でマスターとして働いているのだ。
「あ、もうこんな時間だ。」
キュリエルさんは店の掛け時計をちらりと一瞥して慌てた様に立ち上がる。
時刻は昼前を指していて彼女の所属するパーティーの行動を考えるとこれから迷宮に潜るのだろう。
「ごちそうさま。それじゃあまた来るね?」
バイバイと手を振りながら駆けていったキュリエルさんを見送り、僕は彼女が飲んでいたグラスを下げる。
今日も平和に過ごせますようにと益も無い事を考えながら。
しかしそれは叶う事無く、来客を告げるドアベルが鳴ると銀髪を腰まで伸ばした紅眼の女性が現れた。
「あ~…疲れたぁ…」
ドカッ、とカウンターに大きく膨らんだ麻袋を放り投げると女性はカウンターの中にあるグラスを勝手に持ち、棚に置いてあるワインを適当に見繕うと手酌でグラスを煽ってしまう。
見てくれは世の男性の殆どが振り向くであろう美貌に出るトコは出て引っ込むトコは引っ込んでいる彼女、勝手に店の、しかも昼間から酒を飲んでいるその姿からは想像も出来ないが街のギルドの上位ランク持ちであるらしく、しかもこの店の本当の店長である。
普段はこんな事はせずに真っ先に自室に飛び込んで迷宮で狩ったモンスターの素材で何かを造る筈の彼女なのだが偶に一緒に潜った冒険者とそりが合わなかったり、何も収穫が無かった時等はこうして店のお酒で自棄酒をする。
「銀子さん、またですか?」
そんな銀子さんの行動に溜め息を吐きながら摘みを差し出す僕の目には先程から銀子さんが浴びるように飲んでいるお酒の値段を見て大体のことを理解した。
あまり高くないお酒を飲んでいるからには恐らく同行者の行動が気に食わなかったか或いはその同行者が非道い失態を犯したかだ。と睨んで見る。
前回の荒れ様を見ての経験眼から見てみたが強ち間違ってもいないらしく銀子さんはうーとか唸りながらグビグビとグラスを煽る。
幸い昼のピークも過ぎたからか客足は途絶えていたが昼は喫茶店、夜は酒場としている店の店長が昼から飲んだくれていては世間体というものがあるので勘弁してもらいたい。
若干朱の差した頬で此方を見上げる銀子さんに胸はときめいたりするのだが先程の吞んだくれている彼女を思い出すと僅かではあるがその熱も冷める。
「聞いてよゆー君ー…あいつ新参者の癖に『俺達のパーティーに女はいらない!』とか言い出すのよぉっ!!」
思わず握り締めたであろうグラスがギシリと危険な音を発する。
…テーブルに叩き付けて割る程まではいかないが相当怒っているらしくグチグチと言える限りの文句を呟きながら摘みをぽりぽり摘む彼女に適当な相槌を打って僕は小さく溜め息を吐く。
さっさと一日が終わればいいのにと祈りながら。
拙い文でございましたがどうでしたでしょうか?
楽しめていただけたら幸いです。
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