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主婦のゲームライフ~40歳の初心者~  作者: 桜音 寿
~ルナ・ウェーブ~編
8/48

主婦 新たなフィールドへ行く

 ボス戦後、新たなフィールドが解放されていた。

 ~ルナ・ウェーブ~

 星が白く輝き、淡く光る三日月が夜空に浮かぶ。

 海が広がるその先には、砂浜と高級ホテルと思われるビル群、コンクリートの道に街灯とヤシの木が均等に配置された、南国のようなリゾート地に似ている映像が流れている。

 波の音とウクレレの軽やかなBGMがヘッドホンから聞こえてきた。



 麻耶と藍里のアバターは、大きな噴水がある広場にワープした。

 広場をぐるりと囲むように武器屋、道具屋、役所、拠点となる拠点に繋がるマンションが建ち並んでいる。

 どの建物も南国リゾートを意識した商業施設の外観になっていた。

 前回のフィールドが中世ヨーロッパに似たような場所だったため、その変わりように呆然とする。


 エルフみたいに美しい剣士や、筋肉ムキムキの盾を背負った屈強な戦士、背が低いドワーフみたいな魔法使い。

 ルナ・ウエーブは前の町よりはるかに上回る数のプレイヤーが集まっており、画面のあちこちでアバターの吹き出しが表示される。


『すごいわね。レイヤーが多い』

『まるでリゾート地です。映像も綺麗ですし、ワクワクしますね』


 2人は装備を強化するため、武器屋へ向かう。

 フィールドが変わると、装備もレベルが高くなり、それに伴って金額も跳ね上がった。

 ニケは白のローブで防御力が高いものを、魔法の攻撃力を上昇させる能力がある黒のレザーアーマー。

 レザーアーマーにアクセサリーが付けられるようになっていたが、今回は購入しなかった。

 魔法杖も木の枝から、先端に透明な水晶がついたものに変更し攻撃力も上がった。


 数値的には強くなったが、資金は残りはわずかだ。


 武器屋から出ると、アテナも新しい装いになっていた。

 銀色のマキシミリアン様式の胴のアーマーに膝丈の白いフレアスカートを合わせており、すらりとした足もシンプルなニーハイブーツを履いていた。


『どうだ? かわいいでしょ』


 藍里はゲーム内でもセンスが高い。

 最初のキャラメイクでもアテナのビジュアルにはこだわっていた。

 藍里らしいと笑ってしまう。


 今回は2人だけの行動だったため、気になっていたミニゲームのあるゲームセンターへと向かう。

 〜ルナ・ウェーブ〜にはミニゲームがあり、射的にスロット、ボーリング、魚釣り、夏祭りのようなラインナップだった。

 ミニゲームでは、獲得した点数によって景品がもらえる仕組みになっており、景品に武器もある。


 ゲームセンターに入って早々に、アテナは「残った資金を増やす」と言い、スロットをやり始めた。


(まるで、ギャンブラーだ……)


 麻耶はいつかのドラマで見た登場人物を思い浮かべ、アテナがスロットに向かうのを見送る。

 そして景品のスナイパーライフルがある射的に向かう。


 ――――――

 500点:スナイパーライフル

 300点:アクセサリー

 100点:薬湯20個

 ――――――


(残りの資金は2000円、射的は1回200円か)


 200円を投入した。

 画面が変わり、劇場の様な場所に城と手前に森を模した張りぼてと、赤く丸い照準が出現した。

 制限時間は60秒。

 蝙蝠、蜘蛛、お化けなどハロウィーンの雰囲気に似ている的は1点から20点の範囲で動きながら出てくる。


 ゆっくり動いてでてきた的を、連射で順調に撃ち抜き、的を砕いていく。


(よし。250点突破!)


 しかし、250点ぐらいからは出てくる点数も30点から40点と高くなったが的が速くなり、撃ち抜けない。

 さらに左右からランダムに、しかも的は小さくなっていく。


(なんとか、450点!)


 しかし、残り50点で城の前に一番大きいヴァンパイアの的が現れる。

 あと5秒で撃ち抜かないといけない。

 1点集中で連射したが、ヴァンパイアの張りぼては真ん中だけに穴を開けただけで、砕けなかった。


 制限時間の表示は00:00となり、合計は450点。

 300点までの景品はもらえたが、どうしてもスナイパーライフルがほしい。

 珍しく意地になった。


 もう一度、200円を投入する。

 再び450点になり、ヴァンパイアの的はなかなか砕けない。

 今回も500点に届かなかった。

 3回目、4回目と挑戦するが徐々に点数が落ちてゆく。

 集中力が落ちて目も疲れてきた、だがスナイパーライフルが欲しい。

 麻耶はデスクの引き出しから目薬をだし、両目に点眼する。


(よし!! 目もスッキリした)


 これで最後にすると決意し、5回目に挑戦する。


(450点、順調にきた。ヴァンパイアの的のみ)


 ヴァンパイアの的が現れた。

 どうにでもなれと思い、連射でヴァンパイアを全体を撃つ。


 残り3秒。


『砕けて~』


 本気になりすぎて、声が出てしまった。

 すると、残り1秒でバァァンと的が砕けた。


『やった!!』 


 麻耶は嬉しすぎて、ガッツポーズした。


『ニケ、何やってるの?』


 アテナの声でハッとする。マイクを着けていたため声が丸聞こえだったのだ。


『いや……あの……、射的で最高得点に到達しました』


 恥ずかしすぎて、声が小さくなる。

 顔も真っ赤だろう。


『えっ、すごっ!! なにが貰えたの?』

『スナイパーライフルです。お金がなくて買えなかったので……どうしても欲しくて、5回も挑戦してしました』

『……この前も思ったけど銃への執念がすごいわね』


 藍里の呆れた声が聞こえた。

 ーー確かに、仕事ならまだしも、物に対して執着した事は少ない。

 そうかなと思いながら、藍里の結果が気になった。


『スロットはどうでしたか?』

『……聞かないで。お願い』

『……まさか全額……?』

『溶かしました……』

『…………』


 ギャンブラー藍里、ここに降臨。


 リアルでなくて良かったと思いながら、ワンワンと嘆く藍里をなだめる。 

 新たなるフィールドの〜ルナ・ウェーブ〜は人に解放感を与え、歓喜を呼ぶが絶望を呼ぶ場所だった。

 そして麻耶は、藍里の八つ当たりと言う名のモンスター討伐に、連れて行かれたのだった。


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