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計画旅行

 期末テストが終わり、そんな緩んだ空気の中での授業。そんな中でする授業がろくなことにならないことを教師陣も理解している。担任の先生が教壇に立ち、大きく手を叩いて教室を静かにさせる。


「はいはい、みんな席についてー。話したい気持ちはわかるけど、大事な話があるからな」


 先生の言葉に、クラスのざわめきが少しずつ収まっていく。奏汰は窓際の席に座りながら、だるそうに頬杖をついた。千尋も教科書を机の端に寄せながら、先生の方へ顔を向ける。


「さて、今日から修学旅行の班決めを始める。もう知ってるとは思うが、行き先は北海道! 3泊4日、スキーをしたり、観光を楽しんだりするスケジュールになってる」


 先生の言葉に、クラス中から「おおー!」と歓声が上がる。


「いいな、北海道!」「スキーとか楽しみすぎる!」「メシも美味そうだよな!」


 そんな会話が飛び交う中、奏汰は「寒いのダルいな……」とぼそっと呟く。隣の千尋はくすっと笑いながら、「でも楽しそうじゃない?」と明るい声で返した。


「まあ、どうせ行くならそれなりに楽しめりゃいいけど」


 奏汰は肩をすくめながら、なんとなく周りを見渡す。悠人は腕を組んだまま、窓の外をぼんやりと眺めていた。


「班決めは5人1組で。友達同士で相談して決めていいぞ。ただし、決まらない場合は先生が適当に組むからな」


 先生がそう言うと、すぐにクラスのあちこちで「一緒の班になろう!」という声が上がる。


 千尋は少し考えた後、後ろの席の咲良を振り返る。


「ねえ、咲良。一緒に班にならない?」

「もちろん! 千尋と同じ班がいいなって思ってた!」


 咲良が満面の笑みを浮かべて頷くと、すぐに隣の奏汰にも声をかけた。


「奏汰も一緒の班でいい?」

「んー……まぁ、別にいいけど」


 奏汰は特に興味もなさそうに答えたが、千尋と咲良はそれを承諾の意として受け取った。


「あと二人……悠人は?」


 千尋が声をかけると、悠人は少し遅れて「……俺?」と反応した。


「うん。一緒の班、どう?」

「……いいけど」


 悠人の返事はどこか淡々としていて、千尋は少しだけ気になった。でも、特に深く考えずに「よかった!」と笑顔を見せる。


「あと一人か……村瀬!」


 咲良がクラスの後ろの席に座る村瀬を指名すると、村瀬は「ん? 俺?」とキョトンとしながら、すぐに笑顔で答えた。


「おー、いいじゃん! 奏汰と悠人と同じ班なら、何かと面白そうだしな」


 こうして、奏汰、悠人、千尋、咲良、村瀬の5人が同じ班になった。


「このメンバーなら楽しそうだな」


 村瀬がにこやかに言うと、千尋も「うん!」と嬉しそうに頷いた。だが、その横で悠人は何かを考え込んでいるようだった。


 千尋は「悠人?」と小さく声をかけたが、悠人は「いや、なんでもない」と短く返すだけだった——。


(何か気になることでもあるのかな……?)


 そんな疑問を抱きつつも、班決めは無事に終わり、いよいよ修学旅行に向けた準備が本格的に始まっていく——。



 昼休み、教室の後ろの方ではあちこちの班が集まって修学旅行の自由行動について話し合っていた。


「よーし、俺たちも計画立てるか!」


 村瀬が意気込んで手を叩くと、咲良も「楽しみだね!」と笑顔でノートを広げる。班ごとに自由行動のプランを考えることになっていたため、五人は奏汰の近くの席に集まった。


「自由行動、どこ行きたい?」


 千尋が周囲を見渡しながら問いかけると、村瀬が即答する。


「食べ歩き!」

「え、即決?」


 千尋が驚くと、村瀬は「だってさぁ、せっかく北海道行くんだぞ? 海鮮もジンギスカンもスイーツもあるのに、それ食わずに観光するのはもったいなくね?」と熱弁を振るった。


「うーん、それもいいけど、せっかくなら観光地巡りもしたくない?」


 千尋は修学旅行のパンフレットを開きながら言う。そこには有名な観光スポットが写真付きで紹介されていた。歴史的な建物や、冬ならではのイルミネーション、ガラス細工の体験ができる場所など、興味を引かれるものがたくさんあった。


「観光地巡りねぇ……」


 村瀬は少し考え込むが、やはり食への興味が勝るのか、「でも、北海道って飯が美味いのが一番の魅力じゃね?」と主張する。


「そう言われると、私も美味しいものは食べたい!」


 咲良も同調し、「スープカレーも食べたいし、チーズケーキも!」と食べる気満々の様子だった。


 千尋は「観光もしたいし、美味しいものも食べたいし……どうしよう」と悩む。


 そんな中、奏汰はというと、机に肘をついたまま「寒いのはダルい」と興味なさそうに呟いた。


「えぇ……奏汰、そればっかじゃん」


 咲良が呆れたように言うと、奏汰は「事実じゃね?」と軽く肩をすくめる。


「でも、北海道って屋内で楽しめるところも多いよね? たとえばガラス細工の体験とか、スープカレーのお店巡りとか」


 千尋が提案すると、奏汰は少し考えた後、「まぁ、それなら別に……」と渋々頷く。


「お、奏汰が乗り気になった?」


 村瀬が冗談めかして言うと、奏汰は「別に乗り気ってわけじゃねーけど」とそっけなく返した。


「悠人はどう?」


 千尋が悠人の方を向くと、悠人は視線を上げ、「……別にどこでも」と気のない返事をする。


「えぇ……もうちょっと興味持とうよ!」


 咲良が不満そうに言うが、悠人は特に反応せず、どこか考え込むように視線を落としたままだった。


 千尋は少し気になったが、ひとまず自由行動の計画を進めることにする。


「じゃあ、観光地巡りと食べ歩きを組み合わせる感じで計画しよう!」


「お、いいね! それなら全員楽しめそう!」


 村瀬が満足そうに頷き、咲良も「スープカレーとチーズケーキ、絶対食べる!」と意気込んだ。


 放課後の教室。ざわめく生徒たちの間を縫うように、担任の先生が前に立った。


「宿泊先の部屋割りを発表する。とりあえず黒板に貼っておくから各自見てから帰るように」


 先生がそう言うと、教室が一気に賑やかになる。誰と同じ部屋になるのか、気になるのは当然だった。


「男子部屋は、呉挿、葦根、村瀬、そして——」


 千尋は思わず奏汰の方を見る。奏汰は肘をついたまま聞いていたが、悠人の名前が呼ばれると、ほんのわずかに表情を動かした。


「……悠人と同室か」


 ぽつりと呟いた奏汰の顔は、どこか微妙そうだった。


「お前ら、仲いいだろ?」


 村瀬がニヤリとしながら言うと、奏汰は「まぁ、別に」とそっけなく返す。


 一方、女子の部屋割りも発表され、千尋と咲良は同じ部屋になった。


「やった! 千尋と一緒!」


 咲良は手を叩いて喜び、千尋も「うん! 夜は女子会しようね!」と微笑んだ。


「もちろん! スイーツとか持ち込んで、夜更かししちゃお!」


 そんなやりとりをしていると、先生が注意を促す。


「修学旅行中、夜更かしは厳禁だからな。次の日に響くようなことはするなよ」


「はーい!」


 咲良が元気よく返事をするが、その表情からはまったく守る気のなさが滲み出ていた。


 ——宿泊先の部屋が決まり、いよいよ修学旅行が近づいていることを実感する千尋だった。



 次の日の昼休み、教室では修学旅行に向けた話題で持ちきりだった。


「スキーウェアって、どこで買えばいいんだ?」


 奏汰が何気なく呟く。


「えっ、持ってないの?」


 咲良が驚くと、奏汰は「持ってるわけねーだろ。スキーなんてやったことねーし」と面倒くさそうに言った。


「そっか、確かに普段やらない人は持ってないよね……」


 千尋は少し考えてから、「レンタルもあるよ」と教えた。


 すると奏汰は、「じゃあ、それでいいか」とあっさり決める。


「えぇ、もっとこだわりとかないの?」


 咲良が呆れたように言うが、奏汰は「別に滑れりゃ何でもよくね?」と肩をすくめた。


「まぁ、奏汰らしいか……」


 千尋は苦笑する。


 一方で、咲良は違った。


「せっかくだから可愛い冬服買って行こうかな!」


 目を輝かせる咲良に、千尋も「いいね!」と賛同する。


「うんうん、旅行の写真にも残るし、おしゃれして行くのも楽しいよね!」


「だよねー! やっぱり北海道だし、可愛いニットとかコートとか着たいなぁ」


 二人がそんな話で盛り上がるのを横目に奏汰は軽くため息を吐いたのだった。

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